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渋谷区の全小中学校が「探究学習」を倍増。企業・地域コラボのホンモノ体験が「My探究」を支える

オールアバウト / 2024年10月17日 7時50分

渋谷区の全小中学校が「探究学習」を倍増。企業・地域コラボのホンモノ体験が「My探究」を支える

今年度より渋谷区の区立小中学校で本格的に始動した探究学習「シブヤ未来科」。各校の取り組みやそれを支える外部との連携について、渋谷区教育委員会事務局教育指導課指導主事の柳田俊さんにお聞きしました。

2024年度より本格始動した渋谷区の探究「シブヤ未来科」

探究学習とは、自分が興味・関心のあるテーマについて自ら問いを立て、知識や情報を収集したりアクションを起こしたりしながら深めていく学びのこと。

高校では2022年度から「総合的な探究の時間」が必修になるなど、新しい学びのスタイルとして定着しつつあります。この探究学習に教科の枠組みを超えて取り組むのが、2024年度より渋谷区の区立小中学校で始まった「シブヤ未来科」です。

カリキュラムとしては、総合的な学習の時間を軸にして、教科、特別活動、道徳、学校行事の一部なども含めた、教科横断の総合的な学びとなっています。

シブヤ未来科では、児童生徒一人ひとりが探究するテーマを自分で決め、「My探究」に取り組みます。昨年度、先駆けて探究学習をスタートさせたモデル校では、ギターがうまくなる方法をひたすら探究する生徒など、それぞれが好きなことに打ち込む姿が見られたといいます。

「モデル校の小学校では、やりたいテーマごとに教室を分け、1年生から6年生まで学年を横断してMy探究に取り組みました。例えば、楽器をやりたい子は音楽室、料理をしたい子は家庭科室、ダンスがやりたい子は体育館といったように、テーマが近い子が集まります。探究活動は個人でスタートする子が多いですが、ミニ報告会でお互いがやっていることを知って、ペアやグループで活動する姿も見られました。

また、『環境にやさしい未来の学校づくり』をテーマにMy探究に取り組んだある児童は、資料を調べたり社会科や理科で学んだ知識を活かしたりしながら校舎やエコシステムの要件を整理し、似たテーマの友だちと意見交換をしながら、教育版マインクラフトで理想の学校を表現しました」(柳田さん、以下同)

そのほかにも中学校では、「人とよりよくコミュニケーションを取れるようになるには?」というテーマで探究に取り組んだ生徒が、最終的には「言語や文化によって言葉の受け取られ方が異なるのでは?」という新たな問いを立て、海外からの留学生との意見交換などを通してさらに探究を深める事例なども生まれていると言います。

小学校低学年から探究の基礎を学び、ホンモノを体験し、「My探究」へ

とはいえ、「これ」というテーマを見つけるのは容易ではありません。児童生徒が自分の探究テーマを見つけられるよう、1年間を大きく3つのブロックに分け、段階的に取り組むカリキュラムとなっています。

「最初は、そもそも探究ってなに?というところからスタートし、探究の基礎となる情報収集、データ分析、プレゼンテーションなどのスキルを身につけます。さらに中盤は、従来の総合的な学習の時間での取り組みのように、福祉や環境といった共通のテーマについて学習します。そのうえで、後半はそれぞれが自分で課題を設定し、My探究に取り組みます。また、前半を中心に年間を通して、企業や地域の協力のもとさまざまな体験学習を行います。課題設定の前提となる、なんでこうなんだろうという問いや、もっと知りたいという知的好奇心をもってもらうため、外部と連携したこの“本物体験”には力を入れています」

総合的な学習の時間が始まるのは小学3年生からですが、小学1・2年生についても、「自分でテーマを決め、考え、意見を発表する」という機会を多く設けています。

「最初は教員がテーマや問いをいくつか設定し、そこから選ばせるというように、主体的な学びを段階的に深めています。これまでは、先生が提示したテーマや課題に取り組むのが学校の当たり前でしたが、子どもに選択肢を与えることで、自分で決めて自分でやるという“自己決定力”を育みたいと考えています」

子どもたちの「My探究」を支える地域・外部との連携

シブヤ未来科の狙いは、未来を生きる子どもたちに必要な力を身につけてもらうこと。そのためにも、「自ら考え判断して学び続ける自己調整力」「多様な仲間と協働して新たな価値を生み出す創造力」「自分が思い描く未来を実現する挑戦力」を育むことを目指しています。

このシブヤ未来科のコンセプトは全小中学校で一貫していますが、どのように取り組むかは各学校に委ねており、それぞれが特色ある展開をしています。
スタートアップの起業家を呼んで、よりよい学校づくりについてディスカッションを行った区立松濤中学校。

「企業との連携で視野を広げることを重視する学校もあれば、地元の商店街と連携して地域密着型の探究を行う学校もあります。例えば、生徒による校則改革に取り組む区立松濤中学校では、スタートアップの起業家を呼んで話を聞き、よりよい学校づくりについてディスカッションを行いました。生徒によるピッチ(意見発表)では、中学校も単位制にしたらいい、登校時間を遅くすれば不登校の生徒も通いやすくなるといった私たちも驚くような意見が出ました。最後に起業家の方にフィードバックをもらうことで、生徒たちにとって思考を深める機会にもなりました。また、企業と一緒に商品開発をしたり、大学や大学院と共同でプロジェクトに取り組んだりするケースも出てきています」

のべ300の外部連携先と協力し、社会全体で子どもを育てる

区立笹塚小学校では、GMOインターネットグループがロボットプログラミングのクラブ活動を支援。ロボットコンテストなどへの出場も目指しています。
シブヤ未来科の特長の一つが、子どもたちに「本物体験」を提供する外部連携先の数と多様さです。

渋谷に拠点のある事業者を中心に、スタートアップやNPO法人から大企業、地域の人材なども含めて、のべ300あまりの連携先が登録されています。

連携先を増やすのに苦労する学校が多いなか、なぜこれほどまでに開拓が進んでいるのでしょうか。外部連携のきっかけには4つのパターンがあると、柳田さんは言います。

「学校がもともとつながりのあったところと連携を深めるパターン、教員が自力で見つけてくるパターン、各校にいる地域コーディネーターがつなぐパターン、そして、私たち教育委員会の事務局が見つけてくるパターンがあります。外部連携に積極的な学校や教員が多く、私たちも企業のセミナーや会合などに顔を出すなどして、連携先はどんどん増えています。

企業としては、CSRやブランドイメージの面でメリットがあり、宣伝にもなります。でも何よりも、子どもたちのために何かしたいという思いをおもちの方、社会全体で子どもを育てるという私たちの思いに共感してくださる方がとても多くありがたく思っています」

今秋から本格始動する「My探究」。年度末には渋谷区全体としてシブヤ未来科の発表会を開催することが決まっており、各学校でも発表会・報告会などを開催予定です。

例えば、渋谷区立広尾中学校では、教員、区役所の職員、企業の担当者、大学生、留学生などさまざまな人の前で発表し、フィードバックをもらう中間報告会を10月に開催します。どのようなMy探究が生まれるのか、期待が集まります。

この記事の執筆者:笹原 風花
ライター・編集者。奈良県出身、東京在住。第2の故郷はオランダ・ライデン。高校生向けの大学受験情報誌の編集部に4年間勤めたのち、制作会社勤務を経て2014年に独立。取材・執筆分野は教育や学びを中心に多岐にわたり、企業の社内報や広告制作などにも携わる。
(文:笹原 風花)

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