「ただ格安なだけ」ではない、中長距離LCCの先駆け「スクート」は“要求が多い”日本人向き?
オールアバウト / 2024年10月23日 18時30分
格安航空会社(LCC)は、運賃が安く旅費が節約できる移動手段として市場を拡大している。LCCの先駆的存在のシンガポール発「スクート」の担当者に聞いた、安いだけではない強さの秘訣(ひけつ)とは。
格安航空会社(LCC=ローコストキャリア)は、大手航空会社(FSC=フルサービスキャリア)より運賃が安く旅費が節約できる移動手段として、日本を含む世界で普及する。昔は近距離路線が中心だったが、最近では中長距離路線のLCCも続々登場している。
日本に就航する中長距離LCCの就航空港や行き先とあわせて、先駆的存在のシンガポール発「スクート」の担当者に聞いた「LCC成功の理由」と「今後のLCC市場の展望」を紹介する。
日本に就航する中長距離LCC「主要8社」とは?
LCCで一般的によくイメージされるのが、飛行時間が短い国内線や、日本から近い韓国・台湾など。さらに遠い中長距離路線も近年、LCCが増えている。
日本に就航する主な中長距離LCCと特徴は、以下の通り。
ZIPAIR(ジップエア)
日本航空(JAL)傘下。アジアだけでなく北米路線も運航。機内無料Wi-Fiや全席AC電源など。Air Japan(エアージャパン)
全日本空輸(ANA)傘下。ボーイング787で普通席のみ。FSCでもLCCでもない新しい旅をアピール。Peach(ピーチ・アビエーション)
ANA傘下。関西空港を拠点に国内線・国際線を運航。新機材で東南アジアも進出中。ジェットスターグループ
カンタス航空傘下でJALと提携。日本豪州線はボーイング787。海外で知名度が高い。スクート
シンガポール航空グループ。ボーイング787でシンガポール~欧州便も運航。エアアジアX・グループ
エアアジアの中長距離専門。徹底した低コスト化による格安運賃で知られる。ベトジェット・グループ
ベトナムのLCCで、アジアで最も勢いがある。飛行機は最新、運賃はセールで激安も。セブパシフィック航空
フィリピンのLCC。語学留学やリゾートで日本人にも人気のセブ島など拠点に運航。ZIPAIR、Air Japan、Peachの3つが日系。ジェットスターは国内線および国際線近距離線を運航するジェットスター・ジャパンがあるが、中長距離線はジェットスターおよびジェットスター・アジア航空の運航となる。
国内LCC就航空港、日本直行便でどこに行ける?
中長距離LCCが就航する日本の主な空港と行き先は以下の通り(韓国、台湾、中国本土、香港・マカオを除く、さらに以遠の行き先)。
羽田空港
エアアジアX(クアラルンプール)、ベトジェット(ホーチミン)成田空港
ZIPAIR(東南アジア、北米など)、Air Japan(バンコク、シンガポール)、ジェットスター(マニラ、ケアンズ、ブリスベン)、スクート(シンガポール)、タイ・エアアジアX(バンコク)、セブパシフィック航空(マニラ、セブ、クラーク)関西空港
Peach(バンコク、シンガポール※)、ジェットスター(マニラ、ケアンズ、ブリスベン、シドニー)、スクート(シンガポール)、エアアジアX(クアラルンプール)、ベトジェット、セブパシフィック航空(マニラ、セブ) ※2024年12月就航予定新千歳空港
スクート(シンガポール)、エアアジアX(クアラルンプール)那覇空港
ジェットスター(シンガポール)中部空港
ジェットスター(マニラ)、セブパシフィック航空(マニラ)福岡空港
セブパシフィック航空(マニラ)羽田空港は、日中が主に日本国内線で、国際線も大手航空会社の人気が非常に高く、全体的にLCCは少ない。一方で成田空港と関西空港はLCCが多く、特にZIPAIRとエアージャパンは成田空港を拠点とする。
近年、東南アジア諸国からのインバウンドも人気があり、コロナ禍以降の運航再開と新規就航が相次いでいる。
格安なだけではない、中長距離LCCの先駆け「スクート」の強み
2012年のデビュー以来、順調に路線ネットワークを広げる中長距離LCCが、シンガポール航空グループのLCC「スクート」だ。高い運航安全基準を満たしつつもリーズナブルな運賃で、現在はアジア太平洋や欧州など世界15カ国・地域、70都市以上に路線ネットワークを持つ。
日本路線では、成田空港と関西空港でシンガポール直行便を毎日運航、新千歳空港=シンガポール間は台北経由のシンガポール便を週4運航する。なお、燃油サーチャージは不要、機内持込手荷物も通常のLCCが7kgのところ10kgまで可能だ。
LCCといえば、「運賃が安い」一方で「手荷物ルールが厳しい」「座席が窮屈」「利用空港が不便」など、いわゆる「安かろう悪かろう」というイメージが、一般的に根強くある。そんな中で「スクートはただ『格安』なだけのLCCではありません」と、スクートのマーケティング・コミュニケーション・ロイヤリティディレクターのアガサ・ヤップ氏は語る。
「スクートでは、飛行機は快適かつ環境にも配慮した最新機材を保有しています。座席は2タイプ、受託手荷物や事前座席指定、機内食・ドリンクや機内Wi-Fiなどのサービスは必要な人ごとに提供する“オプション”として用意しています」
日本人は運賃が安くても要求レベルは“高い”
誰にとっても、運賃が安いに越したことはない。その中で、「LCCといえども、安全性はもちろん機内の快適さやサービスについて、特に日本人はある程度求める人が多いのです。その点でスクートは日本人旅行者が求めるニーズを満たしている中長距離LCCと言えます」と、ヤップ氏は強調する。
デビューから10年あまり、利用者の信頼を得て業績も伸ばしてきたスクート。LCCとして成功してきたのは、利用者から信頼されるに値するサービスなどを提供し続けてきたことに他ならない。
さらに、ヤップ氏はスクートの拠点が「シンガポール・チャンギ国際空港」であることも旅行者にとってメリットだと話す。
「アジアの主要都市だけでなく地方都市、南インド、オーストラリア、さらにアテネやベルリンなどにも就航しています。日本人にとって未知の場所へ行ける点でも利用価値が高いうえ、拠点のチャンギ空港は乗り継ぎ待ちが多少長くとも楽しめる設備が充実しています」
「差別化」が進むLCC、上手に活用して旅費の節約につなげて
現在、航空運賃の高止まりや燃油サーチャージの高騰などで、コロナ禍以降、海外旅行再開に二の足を踏む日本人は多い。円安や現地の物価高などの問題もあるが、航空券代を抑えられれば旅費の節約につながる。
FSCの場合、ANA、JAL、シンガポール航空など航空会社ごとに評価される。だがLCCはまとめてひとくくりにされることが多く、実際に乗るまでよく分からない、乗ってやっと「意外と普通に利用できた」と実感する人も少なくない。
中長距離線のLCCは、短距離線と異なり飛行機に乗っている時間が長くなるため、機内で我慢しなければならないケースに遭遇するとかなりつらい。それだけにLCC各社のサービスなどを事前にしっかり調べ、できる限り快適に過ごしたいものだ。
(文:シカマ アキ)
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