不機嫌妻よ、夫側も「妻を諦めている」。キレる妻に「子どもじゃないんだから」は地雷だったか?
オールアバウト / 2024年10月27日 22時5分
結婚生活が長くなるにつれ、夫婦間のコミュニケーションの溝が深まることもある。妻の不機嫌の原因が自分にあるならば、「大人なんだから」言葉にしてほしい。しかし、この「大人なんだから」はどうやら地雷原でもあるようだ。
家での会話の主導権は妻が握っているという夫婦は少なくない。夫は「妻はいつも明るい」「いつも妻から話しかけてくる」と思い込んでいる。ところがある日、妻が話しかけてこなくなった……。そのとき夫は何を思うのだろうか。
突然、妻が急に話かけてこなくなった
「ある日、理由もわからず妻が急に話しかけてこなくなりました。何か聞けば言葉少なに答えるけど、向こうから話題を提供することはない。最初、僕はそれにも気づかなかったんですよ。数日たって、あれ、なんだか最近おかしいなと思った」そう言うのはマサトシさん(44歳)だ。結婚して10年たつ妻に異変があったのは今年の春頃。何を怒っているのかわからない。8歳になる長女に「ママ、何か怒ってるのかな」と聞いても「わからない」と言われた。
そのとき彼が率直に思ったのは「面倒くさい」だった。
「だって夫婦なんて赤の他人なわけですよ、もともと。慣れ親しんだ家族となっても、お互いにある程度、気を遣い合わなければうまくいくはずもない。体調が悪いとか、僕の言い方が気に入らないとか、そういうことがあるならきちんと言えばいい。僕は高圧的にものを言ったことなんてないんだから」
「子どもじゃないんだから……」
そういう自負があったので、数日後、妻に「どうしたの? 何かあったのなら言ってよ。言わなきゃわからないよ。子どもじゃないんだからきちんと言うべきでしょ」と伝えてみた。「すると妻は、『あなたのそういう言い方が嫌なの』って。は? という感じでした。そういう言い方って、どういう言い方なのか尋ねると『子どもじゃないんだから~』という件だそうです。
そういうのが嫌、という時点で、子どもじゃないんだからと繰り返したくなりました。オレはきみの親でもきょうだいでもないんだからさ、ちゃんと他人同士の親しさをキープしようよと言いました」
そういう説教臭い感じが、おそらく妻にとってはプレッシャーにもなるのだろう。神経質だ、繊細すぎるとマサトシさんは感じたようだが、言いたいことを言える立場と受ける一方の立場とでは、感じ方が違うはずだ。
「結婚したとき、夫婦はあくまでも対等なのだから、言い方には気をつけながらも言いたいことはきちんと相手に伝えようと意思確認をしたんです。うまくいっていると思っていたのに、気づいたら妻はどうやら不満をため込んでいる。
何度も何かあったのと聞いてきたんですよ、今まで。なのに言わずに、とうとう自分からは話さないという“暴挙”に出た。被害者はこっちだと言いたくもなります」
怒っているわけではなく、参っているといった感じのマサトシさん。今はいくらか話しかけてくるようになったが、根本解決には至っていないという。
夫側だって「妻を諦めている」
「よく妻側が夫を諦めた、なんていう話を聞きますが、それはこちらも同じなんですよ」笑いながらそう話すタクミさん(46歳)。結婚して15年たつうちに、互いに諦めているのではないかと言った。
「人間、誰でもいいところもあれば悪いところもある。それを許容し合うのが夫婦なんじゃないかと思うようになっています」
とはいえ、妻の不機嫌だけはやはり耐えがたいものがあるそうだ。
「うちの妻は機嫌を損ねると、話しかけても返事をしなくなる。こっちは思い当たる節がない。以前は『オレが悪かったのなら謝る』と言っていましたが、最近は面倒だから言わなくなった。気づかないふりをするんです」
長男が「スパイ」役
中学生の長男が“スパイ”をしてくれている。「どうやらお母さんは、この前、同窓会があるから○日はあけておいてと言ったのに、お父さんが予定を調整すると言ったきりだから怒ってる」とか、「お父さんが夏休みの予定を急に変更したから、お母さん、めっちゃ怒ってるよ」とか教えてくれるようになった。「自分が悪い時はすぐに『うっかりしてたけど、この前の件、遅くなってごめん』と自分から言います。でも息子も理由が分からないということがけっこうあって。そんな時は無理に聞かずに放っておくのが一番いいみたいですね」
大人なんだからさ、と言いたくなることもある。言葉できちんと説明してこそ大人でしょ、と。だがそれを言ってはいけないとタクミさんは自制する。
「大人だって、自分で自分の気持ちを持て余すような気持ちになる時はある。そのタイミングで、大人なんだからと言われたらますます気分が悪くなりますよね。顔で笑って心でため息をつく。お互いにそうなのだろうと想像しながら耐えます」
いつかもっと時間がたって、子どもが巣立ってふたりになったら「昔はそんなこともあったよね」と話せるのかもしれないと、タクミさんは笑った。
亀山 早苗プロフィール
明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。(文:亀山 早苗(フリーライター))
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