勉強しないのは「親のエゴ」が要因かも!? 命令指示を出さずに子どもの成長が加速する関わり方
オールアバウト / 2024年10月28日 21時15分
「子どもが勉強しないんですけど」というよくある子育てのお悩み。じつは子どものやる気は、親の関わり方で変わります。コーチングを使って、子どもが自ら学んでいく関わり方を紹介します。
多くの親は、わが子が自ら進んで勉強に取り組むことを願うことでしょう。しかし、「いつまでダラダラしてるの!」「早く勉強しなさい!」と、つい子どもに声を荒げてしまう人が多いのではないでしょうか?
少し前の話ですが、大谷翔平がWBCで行った「今日だけは憧れるのをやめましょう。 勝つことだけを考えていきましょう」というスピーチが試合前のペップトークとして話題になったことがありました。ペップトークは、アメリカのスポーツ界で生まれた激励のスピーチで、試合前に監督やキャプテンが選手のやる気を引き出すために行うものです。
このように声かけでチームメンバーのモチベーションを高める、これは親子でも実践可能です。
今回は子どもが自ら学んでいく関わり方を、筆者の専門分野であるコーチングの要素を取り入れながらアドバイスします。コーチングとは、相手が自ら答えを見つけて行動できるよう対話で支援することです。このコーチングを子育てに活かすことで、子どもが自ら考え、行動する力を育むことができます。
「勉強しなさい」は逆効果? 大前提は「ラポール(信頼関係)」
「勉強しなさい」というような声かけは、子どものやる気をそぐ可能性があります。命令口調は、子どもに反発心を抱かせ、やる気を失わせ、ひいては親子間の信頼関係を損なう恐れがあります。親自身も子どもの頃、親からそう言われて、かえって勉強から遠ざかった経験があるのではないでしょうか。まず大前提として重要なことが、コーチングを行ううえでも土台となる「ラポール」、つまり相手との信頼関係です。親子でラポールが築かれていれば、たとえ叱責したとしても、子どもはそれを受け入れて成長の糧にすることができます。何を言うかよりも、だれが言うかがとても重要なのです。
その信頼関係も叱ってばかりだと築くことがむずかしいため、日々の親の関わり方の積み重ねが大切になります。
イライラしてしまう、これは実は親の課題。その正体は「エゴ」
勉強してくれないことにイライラして子どもに感情をぶつけてしまう――。じつはこういった場合、親自身に課題があることが多いのです。まずはなぜ勉強してほしいと思っているのかを顧みること。つまり親のエゴに気付くことが重要です。エゴとは、自分の感情や欲望を優先したり、自分が正しいと思ったりという自分本位の考え方です。もちろんだれにでもあるものですし、悪いものではありません。
ただ子育ての場合、子どものためにと言いながら親自身のエゴが強くなることにより、親子ともに苦しい気持ちになるということが起きがちです。まずは親自身が子どもをコントロールしようとしているエゴの気持ちに気付くことが大切です。自身のエゴを黙らせ、イライラしてしまう気持ちを抑えたうえで、子どもに言葉をかけていく必要があります。
そもそも、勉強は必ずしもやらなければならないものなのでしょうか。私たちの世代では、高学歴で大手企業に就職することが、安定した人生への近道だと考えられていました。しかし現代社会においては、大企業が必ずしも安定を保証するわけではありません。
むしろ、どんな時代がきても生きていく力、つまり、自ら学び、成長し、変化に対応できる力が求められています。
もちろん学歴社会も否定はしません。勉強が得意で努力できる子は、そこを伸ばしてあげることはとてもよいことだと感じます。ただ、勉強しなければ、いい大学に入らなければ、将来は終わりだといった自身の価値観での強い思いをもっているとしたら、少し立ち止まって自分を俯瞰することが必要です。
勉強する・しない、どこの学校に入る、どんな仕事をする、どんな人生を歩む、これはすべて「子どもの課題」です。子どもの課題は子どもが乗り越えていくしかないのです。
心から“承認”できたとき、子どもの成長は加速する
とはいえ親としては、人生の選択肢や可能性が増えることにもつながるため、勉強してよい成績をとってほしいと願うものです。では、子どもの成長はどのように支援したらよいでしょうか。それには、「承認」→「声掛け」→「見守る」を意識してみてください。すぐに行動や結果を求めるのではなく、じっくりと関わることが重要です。
まずは「承認」についてですが、小さなステップごとに認めてあげてください。
・「勉強しようと思っただけでマル」を意識して接してみてください。例えば、「今、勉強しようと思ってたのに」と子どもが返した場合、「しようと思ってたんだね」と承認します。
・勉強をしているとき、「頑張っているね」と行動承認をしてください。
・成績が伸びなくても「頑張っていたね。頑張り続けたらきっと結果に表れてくるよ」と、いう感じで行動への承認を続けて見守ってください。
私が実施しているコーチング塾の生徒さんでも、コーチングを学んで中学受験を控えたお子さんに対する関わりを変えたことで、お子さんの成績が大きく伸びたという報告もありました。
子育てはゲーム! 楽しむ要素を忘れずに
子どもにこうさせたいという親の気持ちは、愛情があるからこそ生まれる素晴らしいものです。ただし、それを一方的に押し付けるのではなく、自身のエゴとは切り離したうえで、どう関わるとよいのか。これを“ゲーム”だと思いながら、楽しむ要素を忘れずに実践することをおすすめします。はじめはむずかしいと思いますが、小さな承認を繰り返し、声をかけ、待って見守ることを続けましょう。子どもは自主的に行動するようになり、驚くほど成長します。親自身が子どもを一人の人間として、「何があってもこの子は大丈夫」と信じて関わってみてください。
コーチングとは、スポーツ場面や上司部下の関係などで活用するスキルなどと思われがちです。しかし、これまで多くの先生や保護者の方々にコーチングを通じて支援してきた筆者からすると、コーチングは親子や身近な人とのコミュニケーションで活用できるものだと思います。
子どもの成長が支援できたり、人との関係性がよくなったりして、親自身の人生を豊かにすることができるのです。ぜひ日常生活に取り入れてみてください。
坂田 聖一郎プロフィール
教員を13年間経験した後、独立し「株式会社ドラゴン教育革命」を設立。「学校教育にコーチングとやさしさを」コンセプトに、子どもたちがイキイキと学べる教育を実現できる世の中を学校の外から作りたいという想いで活動する教育革命家。(文:坂田 聖一郎(子育て・教育ガイド))
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