「国立駅」には何がある? 一橋大学だけじゃない、手話のスタバにクラフトビール、銭湯もある散歩向きの街
オールアバウト / 2024年11月9日 20時15分
JR中央線の国立(くにたち)駅周辺は、隣の立川駅に比べるとコンパクトながら、南に走る桜並木が有名で、一橋大学のお膝元でもある高級タウン……といったイメージもありますよね。実際の街中には何があるのでしょうか。
「国立は『国』分寺と『立』川の間にあるから、両方の頭文字をとって国立」というトリビアは、今ではそこそこ有名かもしれません。しかし、実は国立駅の開業が1926年に対して、地名としての「国立」が登場したのは、旧谷保(やぼ)村が国立町(後の国立市)となった1951年のこと。国立町(市)の中にあるから国立駅……なのではなく、国立駅が先にあって、それに由来して地名の「国立」という街が誕生したのです。
そんな国立は現在、駅から真南に続く大学通りの桜並木と、途中にある名門・一橋大学がとりわけ有名。しかし周辺を散策してみれば、東西南北にそれぞれ個性的かつ魅力的な街並みが広がっています。
国立駅の基本情報:家賃相場はいくら?
国立駅に乗り入れるのはJR中央線のみ。家賃相場は駅徒歩10分以内、築年数10年以内でワンルームが約7.3万円、1LDK約11.2万円、2LDK約13.9万円(SUUMO、2024年10月8日確認)。路線が1本のみで中央特快も止まらないためか、おしゃれで整った生活環境にもかかわらず、両隣の立川駅・西国分寺駅周辺よりも若干安い相場になっています。赤い三角屋根で知られた国立駅の旧駅舎は、1998年に「関東の駅百選」に選定され、国立地域のシンボルとして親しまれました。2006年に駅として使用終了しましたが、2020年には駅南口に公共スペースとして復元され、再オープンしています。
駅ナカには聴覚障害者に配慮された「スタバ」が
まずは、駅ナカ・駅周辺施設「nonowa国立」をご紹介。「nonowa」はJR中央線沿いの駅にいくつかある商業施設ですが、国立のものは「EAST(東側)」「WEST(西側)」「SOUTH(南側)」の3ブロックに分かれており、規模はかなり大きめです。営業テナントはカフェ、飲食店、書店、ドラッグストアなどさまざま。「ザ・ガーデン自由が丘」「青山フラワーマーケット」など高級志向の店舗や、「私の部屋」などおしゃれな雑貨店もあるのが国立らしさですね。
注目は「スターバックスコーヒー」で、看板に描かれたサインのイラストは、手話で店名を表したもの。ここは、日本国内では初となる「手話を共通言語」としたお店(サイニングストア)で、聴覚に障害のある人と健常者が分け隔てなくスタッフとして活躍しています。手話や筆談によるオーダー対応、手話を学べるサイネージなど客へ向けたバリアフリーも多く、店内の雰囲気も良好なのでおすすめですよ。
南口の旧駅舎は休憩にも観光情報探しにも有用
国立駅南口のロータリーは他の街と比べてもかなり広め。
ロータリーに面する「たましん歴史・美術館」は、多摩信用金庫の設立した「たましん地域文化財団」が収蔵する美術品の数々を展示する施設。立川にある「たましん美術館」と合わせて、上記の財団が有するコレクションの奥深さに触れられます。
ロータリー手前にある「旧国立駅舎」は、先述の通り2020年に復元したものですが、今でもなお国立のシンボルとして人々の往来を見守っています。洋風建築を設計したのは、近代建築の巨匠であるフランク・ロイド・ライトの弟子、河野傳(つとう)と考えられています。
旧国立駅舎の内部には木製ベンチがあり、広々としたオープンスペース、国立市と国立駅の歴史を学べる展示室、グッズなどを販売する案内所に分かれています。屋外スペースでも物産展(マルシェ)やイベントをやっているため、さまざまな楽しみ方ができそうです。
個性的なショップが多い西側・富士見通り&ブランコ通り
街としての国立の特徴は、南口から南西・真南・南東と放射状に伸びる3本の通りと、その合間を切り分けた区画に強く表れています。駅から南西方向に伸びる「富士見通り」。名前と通りの方角は国立駅から西方面に「富士」山が「見」えるようにと、街づくりの計画時に決められたものです。飲食店にカフェなどさまざまな店舗があり、とりわけ美容院が多いことが特徴です。
通りの入り口には「西友 国立店」があり、食料品の買い物にも便利。さらに大型酒店の「SEKIYA」、地下にはクラフトビールが飲めるビアホールなどの飲食店が並び、普段使いにも便利。
富士見通りからは複数の小さい通りや路地が縦横に伸びているため、ちょうど三角形になった土地の角に建つ店舗も複数。「タリーズコーヒー」もちょうど角地に建っており、窓を広く取って店内から通りを眺められるようになっています。
通りには個性的でこだわりの深い個人経営のお店や、文化的な香りが深いお店も複数。雑貨店やレコードショップなど、お散歩も楽しめそう。
また、富士見通りに接続する小さな通りの中でも、見逃せないのが「ブランコ通り」。一区画分の短いスパンの中にブティック・サロンなどが密集しており、国立でも特に味のある場所です。
ブランコ通りからさらに細い路地には、年季の入った洋食屋やレコードショップも。路地を抜けた先で別の散策スポットにつながることも多く、こうした自分好みの「抜け道」探しをするのも国立ウオーキングの楽しみです。
国立といえば、桜並木が続く南側・大学通り&一橋大学
続いては、国立駅から真っすぐ南へ伸びる「大学通り」へ。幅広の車道・歩道に沿って多くの有名店が軒を連ね、街路の桜並木が春には観光名所にもなるなど、国立を代表する場所としてテレビ番組にもよく登場します。
通りに沿った花壇や緑地はどこもきれいに整えられ、季節ごとに美しい花々を咲かせていますが、これは行政だけでなくボランティアの協力あってこそ。官民が一体となって国立の景観作りに取り組んでいる様子がうかがえます。
高級スーパーの「紀ノ国屋 国立店」や、複数の店舗が入るショッピングセンター「ポポロ」なども大学通り沿いにあり、ちょっと奮発したショッピングにも重宝します。
また、通りの植え込みに沿って休憩用のベンチもありました。天気がいい日であれば、お散歩中に休憩や読書するのにも便利そうですね。
大学通りの中間にあり、通りの名称の由来にもなっているのが、ご存じ「一橋大学」です。1920年に誕生した「東京商科大学」を前身としており、戦後の1949年に現在の名前へ改称。商科大学時代を含め、建学から100年以上にわたって政治家・実業家・知識人・著名人を数多く輩出してきた名門校です。
夕方に差し掛かった平日の時間帯、国立駅から一橋大学へ歩いていくと、途中で多くの学生さんとすれ違います。彼ら・彼女らの中からも、将来の日本や世界で活躍する人材が生まれていくことでしょう。
なお、大学通りには「自然と文化の散策路」という別名もあり、国立の文化的な香りと街路樹の緑を満喫しながら、ずっと南まで進んでいくのもおすすめ。通りの先にはJR南武線・谷保駅があり、周辺も近年おしゃれなショップや飲食店が増えているので、国立駅からゆったり歩いてみてもいいかもしれませんね。
東側・旭通りの先には、おすすめの銭湯があります
国立駅南口から伸びる3本の通りのうち、最後に紹介するのは南東を向いた「旭通り」。通りが作られた当初は「如水通り」という名前だったそうです。
飲食店などの店舗は、富士見通りや大学通りと比べて、ローカル感がかなり強め。餃子がおいしい&リーズナブルなお店などもあり、さくっと食事を済ませたい場合や、顔見知り同士で気取らずワイワイやりたい日は、この通りがおすすめです。
また、旭通りの特徴はスポーツジムやフィットネスクラブが多いこと。「スポーツクラブ&スパ ルネサンス」「エニタイム フィットネス」など、通りの入り口〜末端まで複数店舗が点在しているので、仕事帰りや休日に運動したいなら、旭通りに行けば困ることはなさそうです。
国立駅から旭通りを10分ほど進んだ先にあるのが、現在では市内で唯一となった銭湯「鳩の湯」。近年リニューアルされた内装は美しく、炭酸泉・シルク風呂・ジェットバス・水風呂・サウナ・外気浴スペースと設備も充実しています。
タオルレンタルがあるので手ぶらでも入店できるほか、お風呂上がりには生ビールを片手にくつろげるテーブル&休憩スペースもあって、まさに至れりつくせり! 国立散策やスポーツジムなどでひと汗かいた後にぴったりの「ととのい」スポットです。
北側・光町通りの先にはあの新幹線が!
実は、国立駅の北側にも小規模ながら商店街などがあり、その先には意外な見学スポットもあります。駅の北口すぐの場所にあるのが、大ボリュームのコーヒーや軽食がうれしい「コメダ珈琲店」。
少し先の複合ビルにはスーパーマーケット「三浦屋 国立店」があり、こちらも地域住民の買い物に重宝されています。
駅から北方向に少し歩くと、国立市から国分寺市へ。「光町通り」は低層の住宅や商店が並び、南口の旭通りなどと比べても、一層下町的で昔ながらの雰囲気。昨今では特にありがたい存在である、個人経営の青果店も元気に営業中です。
その光町通りをしばらく進んでから左に曲がった所にあるのが「新幹線資料館」。1969年に制作された新幹線試験車両が改修され、現在では車両自体が新幹線の歴史を展示する博物館として利用されています。
近くには東海道新幹線の研究開発を行った「鉄道総合技術研究所」があり、試験車両も平成初期に国分寺市へ無償譲渡されたものだそうです。通りにも見られる「光町」という地区名もまた、新幹線の「ひかり号」に由来しているとか。
国立駅から歩いてほど近い範囲に、日本の鉄道史で非常に重要な場所があることには、少し驚かされてしまいます。南側の一橋大学とも合わせて、国立という街は日本の近現代史と縁が深いようですね。
東西南北それぞれに個性と見どころあり
国立駅は、緑豊かで高級店の多い大学通りはもちろんのこと、個性の光る個人店舗が多数ある富士見通り、スポーツジムや銭湯など健康と関わる店舗の目立つ旭通り、のどかな下町の先に新幹線博物館のある光町通りと、訪れる通りごとに違った見どころがあります。
それらの通りが集約する国立駅の旧駅舎や駅ナカ商業施設も、ただの店舗や公共ラウンジにとどまらないサービスや居心地の良さにあふれています。住環境を第一に住まい探しをしている方は、国立駅周辺を候補に入れてもよさそうです。
この記事の筆者:デヤブロウ プロフィール
都内在住の街歩きライター。Yahooエキスパートとして台東区の地域情報を発信するほか、「macaroni」など複数メディアで執筆を行う。飲食店、博物館、銭湯巡り、寺社探訪を中心に地域情報を発信中。東京シティガイド検定を取得済み。
(文:デヤブロウ)
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