「西国分寺駅」には何がある? 徒歩すぐで市役所&おしゃれ図書館に行ける、歴史スポットにあふれた街
オールアバウト / 2024年11月10日 21時25分
JR中央線と武蔵野線が直行し、乗り換えでお世話になることが多い西国分寺駅。むしろ「乗り換え以外で利用したことがない」という人も少なくないかと思われますが、駅を降りた先の街中には何があるのか。この記事で詳しく紹介します!
西国分寺駅で地上を走るJR中央線と、その上で高架になっているJR武蔵野線はほぼ直角に交わっています。乗り換えで2路線をつなぐ階段・エスカレーターを上下するときは、案内標識をよく見ていないと「行きたかった方向と逆のホームに出ちゃった!」というミスも頻出しがち。では、その駅周辺には何があるのでしょうか。
実は西国分寺駅は奈良時代~鎌倉時代末と長い歴史のある「武蔵国分寺跡」の最寄駅であり、それ以外にもさまざまな時代の旧跡が集まる歴史タウン! 加えて流れる清水が心地よい湧水や緑豊かな公園・遊歩道も数多く、国分寺で生産された野菜の直売所があちこちにあるなど、自然や農業との関わりも深い街なのです。
西国分寺駅の基本情報:家賃相場はいくら?
西国分寺駅の家賃相場は駅徒歩10分以内、築年数10年以内でワンルームが約7.3万円、1LDK約10.4万円、2LDK約13.0万円(SUUMO、2024年10月8日確認)。東側の国分寺駅周辺よりも若干安く、2駅隣の立川駅と同程度です。
西国分寺駅の開業はJR武蔵野線が開通した1973年と、東京〜高尾間の中央線駅では最も歴史が短い駅になります。由来はもう駅名そのまま「国分寺駅の西にあるから」……なのですが、国分寺という市名の由来になった奈良時代の寺院「武蔵国分寺」の史跡は、実は国分寺駅ではなく西国分寺駅が最寄り駅です。
駅ナカで地元野菜が買える西国分寺駅
西国分寺駅には駅ナカスポット「nonowa西国分寺」があり、駅の出入りや路線乗り換え時の休憩・食事・買い物に便利です。
「nonowa」はJR中央線の駅にいくつかある商業施設ですが、西国分寺のものは大半の店が駅構内にあるのが特徴。「スターバックスコーヒー」「ウェンディーズ」など飲食・カフェも多く、「はなまるうどん」「QBハウス」など一部店舗は中央線のホームに併設されています。状況によっては「電車から降りる→うどん屋さんに飛び込む→うどんを食べてからすぐ電車に乗る」なんていう時短コンボもできそうです。
また、西国分寺駅の改札は一つだけですが、改札を出たすぐの場所に野菜の直売所「しゅんかしゅんか」が。国分寺市では市内の農家が生産した地場産農畜産物を「こくベジ」の愛称で販売しており、市内に約60の農産物直売所があるとか。300年前の江戸時代、市内の新田開発をきっかけに農地が一気に広がったそうです。
三角屋根がアピールポイントの西国分寺レガ
自転車をひいたおばあちゃんが往来していたりと、他の駅以上に地元感のある西国分寺駅。南口近く、というよりほぼ南口直結なのが「西国分寺レガ」。平成初期の1990年に誕生した地域密着型のショッピングセンターで、入り口上の三角屋根と大きな吹き抜けが特徴的です。
こちらは「プロント」「ドトール」「ロッテリア」などの飲食店、書店、ホームセンター、100円ショップなどが入っていて、「東武ストア(にしこくマイン)」というスーパーマーケットもあるなど、日々の買い出しに重宝します。
屋外に向いた店舗もあり、中には「新鮮市場しむら」など非常にローカル感ある青果店も。こちらは袋詰めのニンジン、タマネギ、ジャガイモが100円と、庶民にとっては非常にありがたい価格設定です。
「レガ」のアーケード部分をくぐった先が駅前ロータリー。通常こういったロータリーは駅出口に面していることが多いですが、駅からショッピングセンターを挟んでロータリーという構造はかなり独特ですね。
ロータリーで武蔵国分寺の案内図を発見。こうした案内や標識が西国分寺のあちこちにあり、ここが史跡と歴史の街であることが伝わってきます。
ロータリーの右手にある「国分寺市立いずみホール」。テラコッタ風のベージュカラーな外観と「西国分寺レガ」と似た三角屋根が印象的で、開館も西国分寺レガと同じ1990年。ピアノリサイタルや歌謡コンサートなどが行われています。
駅から徒歩数分で史跡、図書館、公共施設、市役所がそろう
ロータリーから武蔵野線の下をくぐり、東側へ向かいます。中央線と武蔵野線の交差により、西国分寺駅周辺は立体的な地形が多い印象を受けます。
東側のタワーマンション脇を通り過ぎると、その先は西国分寺団地に入ります。この辺りは平日昼ともなれば人もまばらで、のんびりした空気感。
あちこちに史跡への案内標識があるのも西国分寺の特徴。散策に便利ですね。
駅から数分の場所で「東山道武蔵路遺構再生展示施設」に遭遇! 東山道とは7世紀後半頃に整備された、当時の都(みやこ)と地方拠点(国府)を結ぶ幹線道路のこと。今でいう国道や高速道路のようなものですね。その直線道路跡が340mにわたって西国分寺で発掘されたそうで、その空間的・時間的スケールの大きさには驚かされます。
東山道の発掘跡は長い時を経て、現在では再び幅広の道路として整備されています。道路に面してさまざまな公共施設が建っており、こちらは総務省の施設です。
その隣にはシャープな外観の「東京都立多摩図書館」があります。現在の建物は2017年に設計されたもので、一般誌や学術誌の約1万9000冊を備えた「東京マガジンバンク」と、児童〜ヤングアダルト向けの蔵書を充実させて子どもの読書を推進する「児童・青少年資料サービス」の2機能を軸に、さまざまな取り組みやサービスを行っています。
館内は半円形で広大な図書スペースのほか、入り口右手の「カフェ キィニョン」や、蔵書資料などによる常設展・企画展を行う展示スペースも。読書や学問だけでなく、休日のティータイムや散策にもちょうどよさそうですね。
さらに隣にあるのは「東京都公文書館」。2020年に国分寺市に移転したそうで、黒い直方体のようなずっしりした外観が、公文書の番人といった重厚さです。閲覧室では貴重な公文書を読めるほか、江戸・東京の歴史を概観する常設展示「東京の軌跡」や企画展示を行っています。
さらに隣には「国分寺市役所」も。西国分寺には、実は市の文化・教育・行政・公共サービスの中核施設がそろっているのです。
武蔵国分寺公園は緑いっぱいで、のんびりできる
市役所と隣接しているのが「武蔵国分寺公園」。旧中央鉄道学園の土地を都が取得・整備して2002年に都立公園としてオープンした場所で、広域防災拠点としての役割も持っています。
池や噴水、円形広場のある北側と、こもれび広場や野鳥の森のある南側が「ふれあい橋」でつながっており、特に北側は噴水まわりが空気もよく爽快!
一方、南側のこもれび広場は広葉樹の大木が点在しており、名前通り木陰で「こもれび」を受けながらリラックスしている人がチラホラ。こういう所で本を読んだり、ちょっとお昼寝したりできると最高ですね!
公園からすぐ近くにあるのが「武蔵国分寺跡」の僧寺北東地域。武蔵国分寺とは奈良時代中期、政治や社会の混乱を仏教の力で鎮めるべく、聖武天皇が諸国に建立を命じた「国分寺」の一つ。東西2km、南北1.5kmに及んだ大伽藍(だいがらん)は1333年の分倍河原の合戦の際に焼失しましたが、その遺跡が江戸時代には知識人の注目する名所となり、1922年には国の史跡として制定されました。
現在では大伽藍の名残はほとんど残されておらず、僧寺北東地域の跡地はほとんど単なる草原と化していますが、千年以上も昔にはここが政治・文化の中心だったのです。
階段を下った先の湧水&緑地でマイナスイオン補給
僧寺北東地域からすぐの所にある、くねった階段を下っていきます。この高低差は多摩川が長い年月で武蔵野(東京西部の古名)の台地を削り取って生まれた「国分寺崖線」というもので、崖線の長さは都内の立川市〜大田区まで30kmにも及ぶそうです。
階段の下、保存樹林地の脇にある湧き水は「お鷹の道・真姿の池湧水群」として環境庁の「名水百選」に選定されています。ここの清流にはアブラハヤなど小魚も生息しており、湧水の清らかさがうかがえます。
水のせせらぎ、こもれび、虫や鳥のさえずりが大変に心地よく、人通りもさほど多くはないのでまさに癒しの環境。ウオーキングによさそうです。画板を持った小学生&先生の一団も見かけるなど、地域の子どもらにとっても自然教育の場として親しまれています。
西国分寺の改札前にあった「こくべじ」直売所を、ここでも発見。地元農家の本多さんが営む直売所で、朝採り野菜が安く買えるとあって地元住民に人気だそうです。秋らしく柿の直売もされていました。
しばらく「お鷹の道」を進みます。ここは尾張徳川家の御鷹場(おたかば)、つまり鷹を使った狩猟を行う場所として選定されていたことが名前の由来になっているそうで、ホタルも住んでいるとのこと。都内にホタルを見られる場所があるとは、何とも意外ですね……!
武蔵国分寺跡資料館に隣接するカフェも
「お鷹の道」をしばらく進んだところにあるのが「武蔵国分寺跡資料館」。江戸時代に国分寺の名主であった本多氏の旧邸宅であり、国分寺重要文化財でもある住宅長屋を使用しており、「おたかの道湧水園」も併設しています。
武蔵国分寺跡からの出土品や資料を展示メインにしており、この地域に関する理解をグッと深められる場所です。入場料が税込100円というのもお得。
また、「史跡の駅 おたカフェ」は、全国に約1600カ所ある「まちカフェ」の一つで、ここが資料館のチケット窓口も兼ねています。
和風屋根の建物+オープンテラスというのが何ともおしゃれで、犬とともに屋外ランチを楽しんでいる人もいました。無料で使える屋外の休憩所やコワーキングスペースもあり、ちょっとした息抜きにも軽作業にもおすすめです。
また、カフェからはカレーのいい香りが! 入ってみると1200〜1300円のランチセットがあったので、「鶏肉と野菜のスープカレー(1200円+大盛り100円)」を注文しました。
スープカレーは、深川飯のようにスープがあらかじめかかっている独特なスタイル。スパイシーなスープカレーと食べ応えある野菜がとてもおいしく、辛さも気にせずペロリといただけました。落ち着いた照明と木質のインテリアがシックなくつろぎ空間なのでおすすめです!
武蔵国分寺跡の広大な空間に歴史へのイメージが深まる
「お鷹の道」をしばらく進むと、立派な「国分寺楼門(ろうもん)」に遭遇。こちらは米津寺(東久留米市)の楼門を明治時代に移築したもので、武蔵国分寺とはルーツや年代が異なりますが、さまざまな時代の史跡が複層している西国分寺らしさを感じさせます。
そこから少し歩いた場所にあるのが、武蔵国分寺跡の伽藍中枢部。昔はここに講堂や金堂など壮麗な建築が建っていたそうですが、現在はその名残もほとんどなく、武蔵国分寺公園のように大木とこもれびの穏やかな野原になっています。
武蔵国分寺跡を出て西方向へ少し歩いたところには、立派な柿の木が。西国分寺では歴史ある史跡と自然の緑・農地の緑がパッチワーク状に現れます。
武蔵国分寺跡以外にも歴史スポットがたくさん
もう一つおすすめなのが「国分寺文化財資料展示室」。武蔵国分寺や関連史跡の歴史をコンパクトに紹介しており、武蔵国分寺を含む全国の「国分寺」から収集された古瓦(こが)コレクションなども展示されています。予約不要かつ入場無料で、展示室職員のご案内・解説がとても丁寧で面白く、小粒ながら良質な歴史ギャラリーです。
武蔵野線のガードをくぐったすぐ先にあるのが「武蔵国分尼寺跡」。武蔵国分寺とセットで建立された寺院で、その名のとおり尼僧(女性)のためのお寺でした。こちらの金堂跡も、現在は土台などを残して野原と一体化しています。
武蔵国分尼寺跡の隣にある「黒鐘公園」には(近年ではわりと珍しくなった)さまざまな遊具が並んでおり、親子向けレクリエーションの場として愛されています。ローラー滑り台は長い間故障していましたが、2024年7月末に修繕されて再び利用可能になったそうです。
黒鐘公園から北方向に進んだ先にある切り通しの歩道は「伝鎌倉街道」。こちらも国指定の史跡として保存されている部分であり、住宅地や武蔵野線のすぐ近くとは思えないほどに繁った雑木林の谷間に歩道があります。
伝鎌倉街道を出た後の「史跡通り」を歩いて、西国分寺駅へ戻ります。こちらの通りは史跡と直接関わりがあるわけではなく、駅から史跡に通じる道路であったことから自然と地元の人から「史跡通り」と呼ばれるようになったそうです。歴史ある史跡や住宅・商店が隣接している西国分寺らしいエピソードですね。
駅北側には飲み屋街、人気スーパー、そして自然スポット
西国分寺駅へ戻って、北口から出た先はやや殺風景な住宅街。駅前すぐに自転車駐車場がありますが、西国分寺駅の構内を自転車で行き来していた方々もここを利用しているのでしょうか。
駅前には小さな居酒屋街も。なかなかにディープな雰囲気を漂わせています。
北口を出て少し歩いたところには「オーケーストア」も。南口のレガ西国分寺ほどではありませんが、こちらも日々の買い物に重宝しそうです。
オーケーストアから来た方向へしばらく歩き、右へ曲がった所にあるのが「恋ヶ窪分水跡」。江戸時代に開削された「玉川上水」の分水で、この分水によって地域に人の住める環境が整ったそうです。
そこから少し進んだ先には「恋ヶ窪遺跡」のプレートも。周辺には遺跡の面影は希薄ですが、西国分寺駅から北側の一帯は縄文時代から続く遺跡だったとのこと。
駅に戻る途中で「姿見の池緑地」というプレートを見つけたので、「何だろう?」と思い、地図を頼りに向かうことに。細い路地を歩く途中で、地元の農家さんがビニールハウス整備の作業をしていました。
野菜の無人販売所では、地元住民の女性が野菜を購入している場面も。農家で採れたて野菜をその場で購入できるスポットが、西国分寺はあちこちにあります。
到着した「姿見の池」は、住宅街のエアポケットのように自然豊か。鎌倉時代に近隣の女性がここの池に自身の姿を映し見ていた伝承が、その名前の由来だそうです。池は昭和40年代に埋め立てられますが、平成前期に国と都の湧水復活再生事業によって再整備され、以前の美しい景観を取り戻しています。
清い池水の中で立派な鯉が泳いでおり、その姿を望遠カメラで撮影しているご老人の姿も。他には絶滅危惧種のオグルマが自生するなど、この池は人間にとっても動植物にとっても心安らぐ空間となっているようです。
西国分寺駅周辺は休日散策に最適な隠れグッドスポット!
西国分寺駅周辺をひと周りして驚いたのは、縄文時代~江戸時代までの数多くの遺跡・史跡が駅の南北に点在しており、それが街並みから分離することなく溶け込んでいること。ちょっと散策するだけでもさまざまな発見があって知識欲を深められますし、水や緑が豊かな公園・緑地・遊歩道も多くあるので、ふと途中下車して散策する時のリラックス感はかなり高めです。
買い物の拠点は駅前に集中していますが、駅ナカ&駅周辺にはスーパーマーケットなど多くの店舗があるので、問題なく日常生活を送れそうです。もちろん野菜直売所で地元産野菜を買うのもOK! 中央線・武蔵野線の2路線が使えて交通の便もいいなど、多くの長所や魅力を持った街と呼べるでしょう。
この記事の筆者:デヤブロウ プロフィール
都内在住の街歩きライター。Yahooエキスパートとして台東区の地域情報を発信するほか、「macaroni」など複数メディアで執筆を行う。飲食店、博物館、銭湯巡り、寺社探訪を中心に地域情報を発信中。東京シティガイド検定を取得済み。
(文:デヤブロウ)
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