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“見せ筋”にハマった筋肉オタク夫の「なかなかにうっとうしい」日常に妻のぼやきが止まらない

オールアバウト / 2024年11月9日 22時5分

“見せ筋”にハマった筋肉オタク夫の「なかなかにうっとうしい」日常に妻のぼやきが止まらない

夫は今、流行の筋トレに夢中だ。家族との時間も惜しんで筋トレをし、今や子どもたちよりも、筋肉を愛しているようにも見える。しかし、結局のところは、その筋肉は誰かに見せて「すごい」と言われたいだけのものなのだ。

気軽にジムに通って筋肉を鍛えることが流行っている。多くの人は「ちょっと引き締めよう」「もう少し筋肉をつけたい」「気分転換」という程度で、本気でのめりこんでいる人は一握りかもしれない。だが、その家族としては「なかなかに“うっとうしい”ものがある」らしい。

ある日突然「マッスルだー」となった

「うちの夫は、2年前のある日突然、マッスルだーっと目覚めたんですよ(笑)。きっかけは分かりません。社内の女性に『男性の筋肉って、すてきですよね』くらいのことは言われたんじゃないですか。それでモテたいと思って始めたんじゃないか。私はそう思っています。そういうタイプですから」

笑いながらそう言ったマリさん(42歳)。妊娠を機に結婚して13年になるが、もとは高校の同級生。別々の大学に行ったものの、友達付き合いは続いていたというから、知り合って27年にもなる。「単純な夫」の心理は手に取るようにわかると彼女は言った。

「何かにはまるのはかまわないんです。夫が筋肉つけたければやればいい。だけど、そのために家族にしわ寄せがくるのはやめてほしいんです」

共働きで、現在13歳と10歳の子がいる。以前なら早く帰れる時は夫が夕食を作っておいてくれたものだった。ところが“筋肉”にはまってからは、夫の食事のメインはプロテインやサプリ。肉を食べるとしても、鶏肉に限られている。

筋肉中心の食生活を家族にも強いる夫

「子どもたちは食べ盛りですから、豚肉、牛肉、何でも食べさせないと栄養が偏るでしょう。魚だって食べさせたい。でも夫は『タンパク質だけとっていればいいんだよ、あとはサプリで何とかなる』って。

あなたはそれでいいけど、子どもにそんな食生活はさせたくないと言ったら、じゃあ、きみが作ればいいよって。しかもなぜか明るく言うわけです。共働きのルールを忘れたかと私が激怒して、夫には週末、作り置きさせています」

物騒な世の中だから、子どもたちだけの留守番も避けたい。早く帰れるなら夫には、子どもたちと一緒にいてほしいとマリさんは思う。もちろん、自分が早く帰れる時はそうしているのだから。

「そうしたら夫、家の近所にできた24時間のセルフジムに新たに入会したんです。以前から行っているトレーナーのいるジムとは別に。家に早く帰った時は、夜中に24時間ジムにせっせと行っています」

何かに夢中になるのは悪いことではないけれど、なんだかねえとマリさんは苦笑する。

誰をも魅了する筋肉が欲しい夫

「うちの夫は基本的に、誰かに見せて『すごい』と言われたいがためにやっているんですよね。だから純粋に筋肉を愛しているオタクの人たちには申し訳ない感じ」

一般的に「使える筋肉、使えない筋肉」という言葉がある。アスリートの筋肉は使えて、ボディビルダーの筋肉は使えない。見せるための筋肉だから「見せ筋(みせきん)」とも言うらしい。

「夫はボディビルダーになりたいわけじゃないんですって。フィジークといってボディビルダーより筋肉量は少ないけど、トータルで見てバランスのいいかっこいい体を目指しているらしい。大会があるから出たいそうです。なんだか最近、夫の会話はほぼ筋肉ばかり。

もう少し子どもたちの話を聞くとか、子どもたちと一緒にできることを探してほしいんですけどね」

家の中でもせっせとトレーニングを重ねており、子どもが話しかけても自分の筋肉に見とれて上の空になることがある。

「筋肉を鍛えても心は変わらないんだね」

「筋肉を鍛えている人が、自分の体に陶酔しているのって私はかっこいいとは思わないと夫に言ったことがあるんですよ。そうしたら『でもさ、かっこいいと思ってくれる女の子もいるんだよ』とヘラヘラ。筋肉を鍛えてもヘラヘラした心は変わらないんだねと、さらに嫌みを言ってやりましたがピンときてないみたい」

鍛えることができなくなると困ると、今年の夏は家族旅行もジムのあるホテルに限られた。しかもいつもなら1週間ほどかけて旅行するのに、今年は近場で2泊。子どもたちからは大ブーイングだった。

「このままだと子どもたちの気持ちがあなたから離れていく。それでもいいのと先日、夫に言ってみたんです。さすがにその言葉は堪えたようで、夫も珍しく考え込んでいました。今後は少し、時間の使い方を考えてみると言っていたので、多少は変わるかもしれませんね」

家族みんなが興味をもてることならいいが、夫だけがよその世界に行ってしまったようで、パパ大好きな子どもたちはおそらく寂しい思いをしているはずだとマリさんは言う。

マリさん自身も同じように寂しいのだろう。こういう妻の言い分に、夫は耳を傾けた方がいい。妻の言うことはおそらく間違ってはいないはずだから。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(フリーライター))

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