「P連はPTA会長の立身出世のためにあるのではない」解任された元副会長が「会長の勘違い」に釘をさす
オールアバウト / 2024年11月8日 21時35分
最近では「P連改革」の話もよく聞くようになってきましたが、P連改革はPTA改革以上に苦戦することも……。とある市P(市単位のP連)で副会長を“解任”されたPTA会長・ワタルさんの体験談をお聞きしました。
PTA改革の流れが全国に広がるなか、最近は「P連改革」の話もよく聞くようになってきました。各PTAにおける保護者に対する強制をなくそうとしても、結局最後に「P連によるPTA(会員)への強制」が残ってしまうため、手を付けざるを得なくなるわけです。※P連=PTAの連合組織
ですが、P連改革はPTA改革以上に苦戦する人が多い印象です。地道に少しずつ改善を試みている人たちもいますが、「どうにもならず、やむを得ずP連を退会した」という話も、実際とてもよく耳にします。
細かい違いはもちろんありますが、こういったP連には似通った共通の問題点が見られます。今回はその一例として、O県のとある市P(市単位のP連)で副会長を“解任”されたPTA会長・ワタルさんの話をお伝えします。
「上へ行く」ため、任意周知による会員減は避けたい
ワタルさんは2020年度からPTA会長になり、現在5年目。2022年度からは市Pの副会長と、2023年度からは県P(県単位のP連)の理事も兼任してきました。ワタルさんは市Pや県Pにかかわるようになってから次第に、P連の運営や研究大会の参加費、開催方法などについて、疑問や違和感を抱くようになりました。例えば「PTAにおける任意加入の説明や入退会届の整備について、県Pあるいは市Pとして指針を出したほうがいい」といくら提案しても、上層部は耳を貸しません。特に「県Pの会長になりたい」「上の役職につきたい」と考える人たちは、「会員数の減少=自らの失点」と捉える傾向があり、入退会届の整備には消極的でした。PTA単位では改革路線の方も一定数いたものの、主流派にはなり得なかったのです。
ブロックや県の研究大会に対しても疑問が募っていました。本来そういった大会で提供される知見は、PTA会員みんなに共有されるべきものですが、そのための手段が何もなかったからです。そこでワタルさんは「Zoomなどで配信するか、動画を撮影してアーカイブを残し、後でみんなが見られるようにしよう」と提案しましたが、これも「無料で見られるようになれば参加者(参加費)が減ってしまう」というので、検討すらしてもらえなかったそう。
また、PTAの会計や監査は事務員や担当者任せで、PTAによっては現場でかなり混乱が生じていたため、ワタルさんは市Pに「もっと充実した会計や監査の研修を行ってほしい」と求めましたが、これも「各PTAに任せている」と言われておしまいだったとのこと。
「P連がその辺をもっとサポートできれば、各PTAの負担が減り、より継続性のある運営が可能になるだろうとお話したんですが、ほとんど変わりませんでした。P連は『必要な事業をやろう』とか『必要とされる団体になろう』ということより、『会員(会費)や動員数(参加費)を維持したい』『例年通りの行事を維持したい』ということが中心で、そのために会員の時間やマンパワーが搾取される、という状況でした」(ワタルさん)
「P連退会は副会長として不適切」→解任
こういった矛盾を見かね、ワタルさんのPTAでは以前から「P連を退会したほうがいい」という声が高まっていました。それでもワタルさんは、なんとかP連を改革しようと奮闘していたのですが、2023年の末には同地区の別の小学校のPTAがP連退会を表明したこともあり、ワタルさんの小学校のPTAも、P連退会を免れそうにありませんでした。ワタルさんは内心、困っていました。というのは、ワタルさんは2024年度も市Pの副会長を引き受けていたからです。もしここでP連を退会すれば、副会長に空席が生じて同地区のPTAに迷惑がかかりかねない。そう思ったワタルさんは、市Pの事務局に会則を確認のうえ、上の子が通う中学校のPTAと調整を行い、もし小学校のPTAがP連退会を決議したときは中学校のPTA役員として市Pの副会長をやれるよう所属先変更を申し出て、内諾を得ました。
ところが、話は思わぬ展開に。新学期に行われたPTA総会では、やはりP連退会が決議されたため、ワタルさんが市Pに退会の旨を伝えたところ、翌日市P会長から電話がかかってきて、「副会長の辞任を勧告する」と告げられたのです。ワタルさんが「勧告なら固辞する」と答えたところ、会長は「それなら会則に則り解任する」と回答。「P連退会は、副会長として不適切な言動だ」というのが、その言い分です。
「P連退会は会員の総意として総会で決まったことであり、僕個人の意見ではありません。会長には『小学校のPTA会長としてではなく、中学のPTA会員として副会長を続ける』とお話ししたんですが、聞いてもらえませんでした」(ワタルさん)
自己実現のための場? 「上ではなく横を見てほしい」
P連ではなぜこのように、声をあげる人が排除されやすく、改革が実現しづらいのでしょうか。ワタルさんは「PTA会長が勘違い」しやすいことも、一因ではないかと話します。「うちのように小さな学校のPTA会長でさえ、自校や他校の行事や会議に行けば来賓席に座らされて、先生方や関係者からは『会長』と呼ばれ、周囲から持ち上げられます。そうすると、自分でよほど意識していないと、勘違いして王様になってしまうんです。その成れの果てが、P連で上へ行きたがる人たちでは。政治家との会合や、会議に出席したことを、自分の実績か何かのように思って、アピールしている。
PTAやP連は、会長や役員の『立身出世』のために存在するわけではありません。PTAを支える一般会員の声や思いを、然るべきところに届けるため、そういった立場にあるだけのこと。そこをはき違えられては困ります。P連の上層部は上(上部団体)ばかり見ていないで、もっと横を見てほしい。隣人(会員)を愛してよ、ってことです」(ワタルさん)
おそらく似たような状況のP連は、日本中にたくさんあるのでは。P連は何のためにあるのか、一部の保護者の自己実現のための会になってはいないか――。ワタルさんの話を、いま一度、P連見直しのきっかけにしてもらえたらと願います。
この記事の執筆者:大塚 玲子 プロフィール
ノンフィクションライター。主なテーマは「PTAなど保護者と学校の関係」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』ほか。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。(文:大塚 玲子)
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