JR中央・総武線「三鷹駅」には何がある? 実は太宰治ファンの聖地、常に文化が“新陳代謝”し続ける街
オールアバウト / 2024年11月12日 21時5分
JR中央線で新宿駅~立川駅のちょうど中間にあたり、中央特快も停車する三鷹駅。隣にある超有名タウン・吉祥寺駅の影に隠れがちですが、その街中には何があるのか。この記事で詳しく紹介します!
三鷹駅の一つお隣は、「住みたい街」ランキングの首都圏トップ常連の吉祥寺駅。それに比べて三鷹駅はどうにも地味で……といったイメージを持たれる人も少なくないかもしれません。
実際に三鷹駅を降りて散策してみると、長大な商店街に加えて、明治~昭和の文豪ゆかりのスポット、銭湯・サウナなど意外な見どころが盛りだくさんの街でした!
三鷹駅の基本情報:家賃相場はいくら?
JR三鷹駅は中央特快が停車するため、東の中野・新宿方向にも、西の国分寺・立川方向にも短時間で移動可能。しかもJR総武線および東京メトロ東西線の西側の始発駅でもあるため、時間をかければ千葉県の市川駅や西船橋駅にも電車一本でアクセス可能であるなど、東西の両方向に交通の便がいい駅です。三鷹駅の家賃相場は駅徒歩10分以内、築年数10年以内でワンルームが約8.4万円、1LDKで約13.9万円、2LDKは約16.7万円(SUUMO、2024年10月22日確認)。中央線の新宿駅より2万円弱安く、立川駅よりは1.5万円ほど高めです。
三鷹駅の半分は、三鷹市でなく武蔵野市
三鷹駅の所在地は当然「三鷹市」……と思いきや、実は三鷹駅の北側半分は三鷹駅ではなく武蔵野市。ちょうど三鷹駅の真下を玉川上水が斜めに通っており、上水のラインがそのまま三鷹市/武蔵野市の境界線にもなっているため、駅が二つの市をまたいだ状態となっています。現在の三鷹駅周辺に当たる地域は、1923年の関東大震災で被災者が移住してきたことにより人口が増加し、戦後も都心のベッドタウンとして発展していきました。また、駅南側(三鷹市側)は太宰治・山本有三・武者小路実篤といった作家・文化人が居を構えた「文士の街」としても知られています。
駅ナカ・南口デッキ上だけでも買い物スポットが充実
三鷹駅周辺を散策する前に、まずは駅ナカのショッピングモール「アトレヴィ三鷹」からご紹介。「アトレヴィ三鷹」は改札内の3階(改札階)と4階、改札外の1〜5階に広がっており、なかなかに大掛かり。ここだけでも買い物が完結できそうな充実ぶりですが、三鷹駅でのショッピングはここからが本番です。三鷹駅南口を出た先はペデストリアンデッキになっており、開放感があります。通路が駅周辺のさまざまな建物に接続しており、地上に降りる階段やエスカレーターも複数あるので、移動がとてもスムーズです。
駅南口から見て正面にあるのが「CORAL MITAKA(以下、三鷹コラル)」。地下1階〜地上5階まである複合商業施設で、それぞれのフロアに「三鷹市場(地下1階のスーパーマーケット)」「おしゃれ通り(2階のファッション店舗)」など、コンセプトに応じた名前が付けられています。
また、5階は「三鷹市美術ギャラリー」になっており、芸術やサブカルチャーに関する展示が定期的に催されています。そのギャラリーと併設されているのが、「人間失格」「走れメロス」などで知られる小説家・太宰治の経歴を紹介する「太宰治展示室」。太宰が戦前の1939年から、玉川上水に入水して没する1948年まで暮らしていた自宅を再現した展示空間です。
「三鷹コラル」以外にも、駅南口のデッキにつながる店舗は複数あります。「オオゼキ三鷹店」は生鮮食品のボリュームやリーズナブルさで有名なスーパーマーケットで、おすすめの青果商品が屋外にまで並んでいます。「Trikona(トリコナ)」には「サンマルクカフェ」や「キャンドゥ」、郵便局などが入居しており、駅前でのちょっとした買い物や休憩に便利。
デッキ直結の店舗に加え、デッキ階段を降りたすぐ近くにもスーパーマーケット「三平ストア三鷹店」(100円ショップ「ワッツ」併設)が。「オオゼキ三鷹店」の真下にもドラッグストア「サンドラッグ」があります。
至る所に良店があり、あちこち散策したくなる中央通り
「三鷹コラル」の真横にあるエスカレーターを降りた先、南北約1.1kmにわたって伸びるのが「中央通り」。ここの商店街は平日昼間でも人の往来はそれなりに多く、休日にはさらに多くの買い物客や散策する観光客でごった返します。また、中央通りと並走もしくは交差する「さくら通り」「しろがね通り」「旭町通り」などにも商店や飲食店が複数あります。こちらの「三鷹センター」ビルは、中央通りとさくら通りが交差する所にあり、なかなかの存在感。ビル内には「東急ストア」「ダイソー」などの店舗が複数入居しています。
三鷹センターの隣にある「三鷹中央ビル」にある「天文・科学情報スペース」では、太陽系・宇宙の観測などに関する展示を行っています。駅からは離れていますが三鷹市には国立天文台があるなど、実は宇宙観測に縁が深い街なのです。中央通りをかなり先まで進んだ所にある「三鷹プラーザ」は住居部分のバルコニーがギザギザの波状になっているのが特徴。低層部の1階と2階が店舗スペースになっています。
入居テナントは花屋さんや高級文具店、美容室、インテリアショップなどが並び、中央通りの店舗でもひと際おしゃれ度が高め。2階部分に並ぶ鉢植えの植栽も穏やかな雰囲気です。
中央通り近辺には、ほかにも魅力的なお店がさまざま! 例えば、焙煎コーヒー店「フジヤコーヒー supports by 横森珈琲」はガラス窓に描かれたシロクマさんがファンシーで、平日昼から多くのお客さんが訪れています。
三鷹に根付いて50年以上という人気店「肉のアンデス」。2023年1月より耐震補強のため休業していましたが、2024年7月に再オープンしました。これ以外にも、三鷹駅南口の商店街には長年愛されているお店や、個性的でニッチなニーズを満たすお店、居心地よく通いたくなるお店が数多く営業中です!
街並みのさまざまな所に見える思いやりと温かさ
三鷹駅のもう一つの特徴は住環境の良さ! 日経BP総合研究所が2023年に作成した「シティブランド・ランキング」において、三鷹市は「生活インフラ」「医療・介護」「子育て」などの高評価により全国区市町村中33位にランクしています。天文・科学情報スペースのある三鷹中央ビル内には、高齢者や障害者支援のためのイベント・教室・物販を行っている「みたかスペースあい」なども入居。2014年に商店街活性化・まちづくりのためオープンしたスペースで、障害者やファミリー層の支援のほか、市民・個人・団体のための活動拠点としても用いられています。
ビルの壁面には車椅子向けの商店街マップや、車椅子を借りられるステーションの掲示もされていました。病気や障害、または加齢によって足腰が不自由な人にとってはうれしい配慮です。障害を持つ人が一般企業などへ就職するための就労移行支援を行っている、東京都指定の事業所も中央通り沿いに発見。通り沿いの一部街路樹脇には木製ベンチも設置されており、中央通りでの買い物中、ひと休みすることもできます。
三鷹駅の南側は買い物の利便性が大変高いだけでなく、こうした多様性への配慮・社会的サポートが行き届いていて非常に住環境がよく、ファミリー層も増加中! 平日には幼稚園・保育園の子どもたちが大人の引率で和やかに散歩しているのも見かけ、さまざまな人に向けて開かれた街となっています。
太宰治など、文豪・文化人が愛した街
三鷹コラル5階の太宰治展示室に代表されるように、三鷹駅は「文学・文化の街」という側面も色濃く残しています。大正時代〜昭和初期にかけて、多くの小説家や文化人が移り住んだのは、当時の三鷹地域が緑豊かで閑静だったことと、既に開通していた中央本線により都心アクセスがよかったことに由来するそうです。三鷹駅南口から徒歩3分の場所にあるのが「太宰治文学サロン」。2008年にオープンした当サロンは、太宰治に関する資料展示を行う無料のミニギャラリーです。サロンがあるのは、太宰治の一家がよく利用していた「伊勢元酒店」の跡地。このような太宰治ゆかりの跡地・足跡スポットが、三鷹駅の南側に21カ所もあるそうです。
太宰治を語るとき、彼が三鷹近くの「玉川上水」にて愛人と入水を遂げた悲劇的末路も避けては通れません。三鷹駅南口のペデストリアンデッキを東側・玉川上水の方向に降り、緑道沿いに南東へ歩いて行きます。途中、太宰治が入水した場所を示すプレートがありました。かつては自分の著作でも書き記した玉川上水の風景を眺めながら、人生の最期を前に太宰治は何を思っていたのでしょうか。
一方、その近くには「路傍の石」「真実一路」などで知られる作家・山本有三が暮らしていた洋風邸宅を改修した「三鷹市山本有三記念館」も。太宰治の雰囲気を繊細で鋭利な「陰」とするならば、こちらの洋館からは温和で力強い「陽」の気配が漂ってきます。
中央通りには、三木露風や武者小路実篤など三鷹地域に住んでいた文豪や作家にゆかりあるモニュメントがあちこちに点在。「肉のアンデス」近くには山本有三の言葉を添えた、少年2人の像もありました。三鷹駅はあちこちに文学・文化の香りが漂う街です。
北口近くには、あの有名アニメスタジオが!
ここからは駅北側(武蔵野市側)へ。商店街などの規模は南側よりもコンパクトながら、清潔で住みやすい街並みが広がっています。三鷹駅の北口は南口とは違い、階段で地上に降りる形となっています。「三鷹駅」のフォントがどことなく古風。駅前ロータリーに面した複合ビル2階に入っている喫茶店「cafe terrasse verte(カフェ・テラス・ヴェルト)」は、広々とした店内。屋外テラス席もあり、穏やかな晴れの日に利用したくなります。駅北口の近くにあるのが、タワーマンション「武蔵野タワーズ」。低層部分にスーパーマーケット「オーケー三鷹北口店」や「CAFÉ de CRIÉ(カフェ・ド・クリエ)」などが入っているほか、タワー裏手の遊歩道部分ではマルシェ(地域の物産展)などイベントが行われています。
また、武蔵野タワーズの近くには、『攻殻機動隊』『PSYCHO-PASS(サイコパス)』、最近では『怪獣8号』『キン肉マン』など数々の傑作アニメ作品を手掛けているアニメスタジオ「Production I.G(プロダクション・アイジー)」が。他にも「タツノコプロ」や「WIT STUDIO(ウィットスタジオ)」など、三鷹駅近辺は老舗や近年有力株のアニメスタジオが多いのも特徴です。
バス停留所「西久保二丁目」の近くには、カフェやランチスポットが点在
駅前ロータリーから北方向に伸びる「中央大通り」を進みます。中央大通りと井の頭通りが交わる交差点をまたいだ先の「西久保二丁目バス停」周辺は、おいしい&おしゃれな飲食店やショップが多く、三鷹駅北口でも特におすすめのエリアです。ナチュラルテイストで爽やかな内装と、自然派でおいしいランチプレートが魅力の「ニシクボ食堂」。旬の食材をふんだんに取り入れ、和風の調理で丁寧に仕上げられた焼魚定食・煮魚定食などのご飯がうれしい「おふくわけ」。
本格的な焙煎コーヒーを提供している「NING'S COFFEE(ニンカフェ)」。外観はちょっと和風で、ほっこりさせられます。
温かい味わいの喫茶や軽食を出しており、物静かで読書したくなる店内の「Cafe SchnurrWarz(カフェシュヌルバルツ)」など、一度入ればまた行きたくなる飲食店やカフェがたくさん! 探してみれば、あなた好みのお店がきっと見つかるはずです。
バスの往来数が多い!
「西久保二丁目」停留所の近くには「ゆうゆう窓口」がある大きめな郵便局も。こうした郵便局が通り沿いにあると助かりますね。中央大通りを進み、回転すし「KURA(くら)」のある交差点を越えると、その先は立派な桜並木が続きます。4月頃にはちょっとしたお花見スポットにも。並木の先は「武蔵野市役所」「武蔵野クリーンセンター」「武蔵野総合体育館」「NTT技術史料館」など、武蔵野市内の公共施設や見学スポットが並ぶエリアになっています。中央大通りの特徴は、車線幅に比較してバスの往来数がかなり多いこと。三鷹駅北口から武蔵野市内や練馬区内のさまざまな方向に向けてバス路線が走っているのですが、その大半が駅北口〜中央大通りの区間を共用しているのです。バス停によっては、三鷹駅行きのバス時刻表はギッチギチ。三鷹駅北側を散策して疲れたときは、バス停に行けばサッと駅行きの車両に乗れそうですね。
南口には銭湯が2軒も!
街歩きで汗をかいたり、疲労を覚えた後は銭湯でサッとリフレッシュしたいもの。そんなときに行きたくなる銭湯が、三鷹駅南口では2軒も営業中です。「アサヒトレンド21」は、ビル型銭湯ながら脱衣所や浴室が広く、清潔。浴槽の温度もちょうどよく、とりわけ高温のジャグジー風呂に癒されます。この銭湯で特におすすめなのがサウナ。室内はそこそこの人数を収容でき、体への負担はほどほどながらしっかり汗をかけて満足できる絶妙な温度設定。しかも水風呂と外気浴スペースの動線が非常によく、サウナで汗をかいてからサッと水風呂で体を引き締め、すぐに外気浴スペースでゆったり……という「ととのい」ルーチンが快適で、こだわり強めなサウナーにも広く推奨できる穴場の銭湯です!
また、中央通り商店街にほど近い場所には、ビル型銭湯「春の湯」もあります。こちらも三鷹地域で長年愛されてきた風呂屋なので、「アサヒトレンド21」と入り比べてみてはいかがでしょうか。
こまやかな新陳代謝を続ける三鷹駅
三鷹駅では2024年12月にニュースポットがオープン予定です。それがこちらの温浴施設「FLOBA(フローバ)」。取材時点では工事用の幕に覆われていました。こちらは「複合型居場所施設」だそうで、ラウンジスペースやカフェ&ダイニングも充実。ちょっとしたノマドワークなど、お風呂以外でも長時間過ごしたくなる施設になりそうです。
新しく登場するものがあれば、去っていくものもあります。三鷹駅西側の広大な車両基地にまたぐ「三鷹跨線(こせん)人道橋(跨線橋)」は、1929年に建設された大掛かりな鉄橋で、太宰治がここを好んで訪れていたほか、多くの鉄道ファンに愛され続けたスポットです。
現在は老朽化のため封鎖されており、2025年8月までに撤去とのことですが、多くの文豪達の足跡が現在も語り継がれているように、この跨線橋の思い出も人々の中に永く残ることでしょう。
JR三鷹駅周辺は買い物スポットとして栄えており、多くの文豪たちによる深い文化的土壌があるだけでなく、新しい世代やさまざまな個性を持つ人々に対する住みやすさ・ホスピタリティの向上など、未来に向けて細かな発展と改良を続けている街です。もしも太宰治や山本有三が現在の三鷹駅周辺に住んでいる現代人だったなら、彼らがどんな小説を書いていたか気になりますね!
この記事の筆者:デヤブロウ プロフィール
都内在住の街歩きライター。Yahooエキスパートとして台東区の地域情報を発信するほか、「macaroni」など複数メディアで執筆を行う。飲食店、博物館、銭湯巡り、寺社探訪を中心に地域情報を発信中。東京シティガイド検定を取得済み。
(文:デヤブロウ)
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