赤本に加えて「銀本」も入手して! 中学受験追い込みシーズンに“過去問読書”で国語力を上げる
オールアバウト / 2024年11月20日 21時15分
中学受験の国語の課題文は大別すると物語文、論説文、随筆文の3つに分けられます。中学受験塾講師として指導歴35年・1000人超の受験生送り出してきた筆者がそれぞれの攻略法を解説します。おすすめは日能研生にはおなじみ「銀本」の活用です。
「国語力」を高めるための効果的な勉強法って?
「国語力」とは、いったい何を指す力なのでしょう? 語彙(ごい)力、それとも読解力、記述力、またはテストの得点力でしょうか?おそらく漠然とこれらすべての総合力を「国語力」と呼んでいるのでしょう。
中学受験の国語の課題文は大別すると物語文、論説文、随筆文の3つに分けられます。中学受験塾講師として35年以上従事し、1000人超の受験生送り出してきた筆者が、それぞれのおすすめの作品をご紹介しながら、読解のポイントと得点力を伸ばす勉強法についてアドバイスします。
物語文:日能研生にはおなじみ「銀本」を使って過去問を読書する
物語文の読解は、登場人物が他者との関わりの中でどのように考えて、どのように反応するか、それについてどう思うのかを作問者が問い掛けています。そのため課題文の主人公は、小学生から高校生がほとんどであり、読者=生徒でも想像可能なシチュエーションが背景として描かれています。入試問題として選ばれる課題文には、反社会的・非道徳的な世界を描いた作品は選ばれません。
小学校の課題図書では、学齢に応じた良質な作品を読むことにより、読者の世界観を広げて成長を促すことができるとして、「講談社青い鳥文庫」や「岩波少年文庫」などが推奨されています。
では、中学受験ど真ん中の生徒は、何を読めばよいのでしょうか? ずばり、中学入試問題として扱われた物語文を読むのがおすすめです。
「受験が近いから、そんな時間なくて無理!」と思った読者にこっそり裏技をお教えしましょう。日能研の銀本に取り上げられている国語の課題文を読書するのです。「解く」のではありません。「読む」のです。
「銀本」は日能研で使われている教材で、書店では『中学入試試験問題集』(みくに出版)として販売されています。算数編、国語編、社会編、理科編と科目別に分冊されていて、国語編は「女子・共学校 国語編」と「男子・共学校 国語編」の2種類があります。
昔は1冊にまとまっていたのですが、今は女子生徒には「女子・共学校編」が、男子生徒には「男子・共学校編」が用意されています。いずれも厚さが4cm以上というボリュームです。
新たに銀本を購入される場合は、4科目の中で唯一、女子平均点が男子平均点を上回る科目は国語ですから、「女子・共学校 国語編」の最新版(2025年度受験用)を読むのがおすすめです。共学校、女子校のそれぞれについて、あいうえお順に並んでいるので、校名を聞いたことがある難関校から読み進めるとよいでしょう。
過去に、麻布中と海城中(第1回入試)、開成高校の2022年の国語入試問題で『氷柱の声』(くどうれいん著)の同じ場面が出題されたことがあります。つまり、課題として取り上げられやすい、物語文の中でも印象的な場面だけに注目して読解力を上げるという方法です。カンフル剤としては有効なのでお試しあれ。
論説文:要チェック! 夏前発売の新刊は出題される可能性あり
論説文は、物事の因果関係を論理的に説明した文章なので、きちんと筋が通った内容理解さえできれば、読解は難しくありません。ただし、背景知識や語彙力がないと読解が難しい場合があります。例えば、植物学者の稲垣栄洋氏の著作は、植物の話を説明するために、国語や社会のエピソードを混ぜながら分かりやすく書かれています。その中身は、興味深い話をする先生の授業そのものなので、いわば文字で書かれた授業といえるでしょう。
論説文は誰を対象に書かれたものであるかによって、内容の難度が異なります。一般的には、「岩波ジュニア新書」<「ちくまプリマー新書」<「中公新書」「光文社新書」「新潮新書」「岩波新書」などの大人向け新書<「講談社ブルーバックス」などの科学系新書の順に難度が高くなっています。
これら出版社から興味を引くタイトルの新書が新刊として夏前に発売された場合には、本年度の入試問題として出題される可能性が高いため受験生は要注意です。
随筆文:名随筆は押さえる+銀本の随筆文を解く
最後に、3種類の課題文の中でも、子どもにとって最も難解な随筆文についてです。随筆文は大人の考えを述べた文章であるため、受験生には類推するのが難しく得点しにくい文章といえます。では、随筆文の攻略はどうすればよいのでしょうか。まず、代表的な名随筆は読んでおくべきです。
筆者のおすすめを挙げておくと、『父の詫び状』(向田邦子著)、『こころの処方箋』(河合隼雄著)、『思考の整理学』(外山滋比古著)、『幸田家のことば』(青木奈緒著)となります。
他にも、どちらかといえば受験生より保護者におすすめなのが、『ベスト・エッセイ』(光村図書刊、日本文藝家協会編)です。この本はいろいろな筆者のエッセイを年度ごとに1冊にまとめたものですから、通勤電車内で電子書籍をタブレットで読むのによいでしょう。
随筆文の読解は、難関校で出題されることが多くなっています。日能研の銀本などを利用して、随筆文だけをピックアップして解くのが効果的です。
上記3つの課題文の読解に加えて、漢字・ことわざ・慣用句・文法・文学史などの知識分野を充実させて、語彙力をつけることも国語の得点力を上げるためには重要です。頑張りましょう。
この記事の執筆者:小野 博史
準大手中学受験塾トップクラスの指導を皮切りに、教室長、教材部長などを歴任。平成8年、千葉県柏市で中学受験・私立中高専門塾エクセレントゼミナールを設立主宰。講師として35年超、合格率にこだわった受験指導で1000人以上の受験生を送り出す。私立中高のカリキュラム・教材に精通し、ミスマッチを起こさない受験校選びには定評がある。SAPIX、日能研、四谷大塚などの大手塾の生徒にも個別指導をしており、的確なセカンドオピニオンを提供することで合格可能性を広げ、悔いのない中学受験に導くことを身上とする。(文:小野 博史)
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