実写ドラマ版『【推しの子】』絶賛レビュー! 齋藤飛鳥が完璧で究極の「星野アイ」だった理由
オールアバウト / 2024年11月29日 20時15分
Amazoプライムビデオで配信スタートした実写ドラマ版『【推しの子】』が掛け値なしに素晴らしいクオリティーでした! 星野アイ役の齋藤飛鳥を筆頭に、絶賛します!(サムネイル画像出典:【推しの子】ドラマ&映画公式Xより)
11月28日より、Amazoプライムビデオで実写ドラマ版『【推しの子】』の1〜6話が独占配信がスタートしました。
発表当時のティザービジュアルや、後述もする原作者の赤坂アカのコメントなどから、配信前には不安の声も聞こえましたが……原作漫画とアニメも楽しんだ上で1〜6話の本編を一気見した筆者が結論から申し上げれば、この実写ドラマ版の出来栄えは大・満・足です!!!
SNSでは「期待値を上回った」高評価に
実際にSNSでは「思ったより悪くない」「いやけっこう良いのでは」「まさかの大成功になるかも」などと、「事前の低かった期待値を上回った」ことが伝わる高評価が相次いでいます。ただ、事前に放送されたアニメ版が最上級の出来栄えであり、熱心なファンの母数がとてつもなく多いため厳しい目になっており、現状ではドラマを1話のみ視聴している人も多い(だから評価はまだ保留)ためか、そこまで絶賛一辺倒というわけでもありません。
それでも、筆者個人は本作を「漫画の実写化」の歴史を更新するほどの傑作だと絶賛します。3つのポイントから、一挙に解説しましょう。
1:齋藤飛鳥は「アイそのもの」だと思わせてくれた
今回の実写ドラマ版『【推しの子】』の最大の評価ポイントは、実力派のキャストのハマりぶりです。何より「星野アイ」役の齋藤飛鳥は、もはやサブスクのはした金ごときで見ていることを申し訳なく思うほど、原作で言うところの「視聴者全員億支払うべき」といった気持ちにさえなるほどでした。 星野アイは劇中で「唯一無二」と語られる存在で、アニメの主題歌『アイドル』でも「一番星の生まれ変わり」「完璧で究極のアイドル」と歌われるほど。今回の「実写」のドラマでは生身の人間が演じて「本当にそこまで思われないといけない」、とてつもなく高いハードルがあります。しかしながら、齋藤飛鳥はルックスもさることながら、冒頭のコンサートの華やかさ、さらにはアイドルと母親という二足のわらじを履き“欲張り”に生きていることも伝わる演技も含め、もう完全に「唯一無二で誰よりも強く輝く一番星の完璧で究極のアイそのもの」だと思わせてくれたのです。
そして、劇中でアイが明るさを見せる反面……いや、その明るさがあるからこそ、そこはかとなく影(陰)を感じさせるところも重要でした。何しろ、アイは表向きには完璧なアイドルですが、だからこそ「うそでできている」自分を半ば冷笑的に捉えており、かつ「人を愛したい」という欲求も持っている人物です。クールな印象がある齋藤飛鳥は、その存在感からしてぴったりだと思いました。
実際に、劇中ではアイが「人を愛した記憶も、愛された記憶もない」ことを明かしながら、「そのうそはいつか本当になるかもしれない」などと返される場面もあります。それは、齋藤飛鳥自身が「アイは自分から最も遠い存在」だと感じて一度はオファーを断るも、「ちゃんと影の部分を持つ齋藤飛鳥なら、アイの影の部分をうそなく演じられると思う」という制作側からの言葉が心に残り、台本と原作を読み込んだ末に出演を決めたという経緯とも、どこかシンクロしているように思えたのです。 そして1話のラストで「ここまでの事態になって、絶対にうそじゃないことを告げる」説得力が半端ではなく、原作とアニメで展開を知っているはずなのに涙ぐんでしまいました。それまでアイドルとして、それもかわいい双子の母親として、明るい振る舞いをしているアイ=齋藤飛鳥の姿を見ていたからこそ、「本当」の気持ちが伝わったのです。
2:他キャストも理想的、特に原菜乃華の毒舌に大笑い!
齋藤飛鳥だけではなく、出演者の全員の演技が素晴らしくて、筆者としてはみんなに「最高of最高」と言いたい勢いです。原作で、クールもとい“陰キャ”な印象から恋愛リアリティーショーで“陽キャ”を演じるギャップまでを見事に表現した星野アクア役の櫻井海音、お兄ちゃん子でアイドルになるという絶対的な信念を持つ星野ルビー役の齊藤なぎさも、演技・存在感・ルックスともに文句のつけようがありませんでした。 その中でも個人的な推しは、有馬かな役の原菜乃華。原作でも、ツッコミを入れたり、はたまたイジられたりするコメディーリリーフ的な立場でもありましたが、実写では原菜乃華の声のトーンと表情が絶妙で、彼女が「おい! 全部聞こえてんぞ!」「ああ? 早速解散すっか!?」といった毒舌を口にするたびに大笑いできるほど。だからこそ、アクアが気になること(恋心)も、俳優としての苦悩もギャップとなり感情移入ができました。YouTuberのMEMちょ役に個性の強い「あの」というキャスティングには、少しだけ不安もありましたが、本人がインフルエンサーでもあるため、劇中で「バズらせのプロ」を名乗ることも含めて説得力は抜群。ぶりっ子なようでいて、実は冷静な視点や後ろ向きな気持ちを持ちつつ、行動力のあるMEMちょに確かにハマっていました。
さらには黒川あかね役の茅島みずきも、精神的に追い詰められる心理の表現はさることながら、あるシーンで「違う人物に見える」場面では、実写ドラマ独自の舞台と演出ゆえの説得力があり、その工夫と彼女の演技そのものに感動しました。
さらには、YouTuberのぴえヨン役に野田クリスタルという配役にも大笑いしつつも、その筋肉量を思えば大いに納得。周りの大人の役柄も、斉藤ミヤコ役の倉科カナ、五反田泰志役の金子ノブアキ、鏑木勝也役の要潤など、それぞれ理想的な配役および演技でした。 さらに、子役も達者で、特に有馬かなの幼少期を演じた永瀬ゆずなの「ここはプロの現場なんだけど? ったく監督もなに考えているんだか」といったセリフが原作やアニメの印象のままで感動するほどでした。
3:実写化の意義も存分!
さらには、「実写化」の意義も大いに感じました。何しろ、そもそもが芸能界の裏側で渦巻く心理を描く作品であり、もちろん漫画とアニメのかわいい絵も魅力的なのですが、実写ではそこに実際の俳優が演じることで「生々しさ」もプラスされ、さらには「ドラマの撮影現場」「アイドルのコンサート」も実写という「本物」を見せるからです。例えば、劇中の漫画原作のドラマ『今日は甘口で』の撮影においては鳴嶋メルト役の簡秀吉による「ヘタな演技のうまさ」が際立っていますし、恋愛リアリティーショー『今からガチ恋始めます』のパートの終幕にある「映像」や、「新生B小町」のパフォーマンスやその時に有馬かなが見た光景にも、「実写だからこそ」の新たな感動があります。
さらには、この『【推しの子】』という実写ドラマ化そのものをメタフィクション的に捉えた構造も新たに備えています。実はドラマの1話では“転生前”の描写やアクアたちの幼少期の出来事を大胆に省き、40分の尺になるまで刈り込んでいています。そのテンポの良さも美点なのですが、さらに5話ではその理由の一端を、明らかに「セルフツッコミ」をするような場面が付け加えられていたりもするのです。
そもそも、「『【推しの子】』は芸能界だけでなく、漫画作品の実写化についてもさまざまな言及を、時には批判もしている作品であり、だからこそ原作者の赤坂アカは「実写化する事はないんじゃないか」と思っていたともコメントしています。 しかし、むしろ今回の実写ではそこにも自己言及的で、原作にあった「人気漫画の実写化で炎上は免れない。宿命だよ」といったセリフも積極的に拾い、その厳しさを踏まえてこそ、キャスティング、原作へのリスペクト、美術と画作り、さらには実写という表現を生かした映像面での演出まで、こだわり抜いていることが伝わるのです。
賛否を呼ぶ改変もあれど、それも「シンクロする構造」として納得
それでも、実写ドラマ版『【推しの子】』で賛否を呼んでいることとして、劇中の漫画『東京ブレイド』を舞台化するパートが「実写ドラマ化」へと代わり、ジャンルも「推理もの」と変更されたことがありますが、筆者はこちらも大いに肯定したいです。この改変で、まさに実写ドラマである本作と劇中劇がシンクロしている構造になっています。さらにその終幕などで、原作とはやや違う描き方が新たな感動を呼び、それでいて原作の芯を外していていない、作劇上の工夫としても納得できるものだったからです。
総じて、実写ドラマ版『【推しの子】』は、原作から議論されていた「実写化」というアプローチについて作り手が考え抜き、とことんクオリティーを突き詰めたからこそ、ここまでの完成度になったといえるでしょう。12月5日21時より配信されるドラマの続きである7〜8話、続く12月20日より劇場公開される実写映画『【推しの子】 The Final Act』にも大いに期待しています。
この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
(文:ヒナタカ)
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