フランス人に「前髪」「ショートヘア」の女性が少ない意外な理由。日本人の髪形はどう思われている?
オールアバウト / 2024年12月3日 21時25分
前髪のあるヘアスタイルは、「若々しく見える」「親しみやすい」といった好印象を持たれています。しかしフランスでは日本と違い、前髪を作っている人をほとんど見かけません。日本の前髪文化はフランス人の目にどう映っているのか、パリ在住者が考察します。
日本では、「前髪」のあるヘアスタイルが男女ともに浸透しています。艶のある前髪とストレートヘアの組み合わせは清潔感も抜群で、シャンプーのCMでもよく見かけるほど一般的です。
しかし筆者の住むフランスでは、ヘアケア製品の広告で「前髪あり」のモデルを見たことがありません。実際に街を歩いていても、ほとんどの人が「おでこを出した」ヘアスタイルをしています。
フランス人はなぜ前髪を作らない?
ファッションにしてもヘアスタイルにしても、「自由」と「個性」を最重要視するフランス。そのため、髪形を選ぶ際も「若々しく見られたい」「親しみやすい印象を与えたい」といった“他人からの評価”を気にすることがありません。ナチュラルを好む国民性
ルックスに関して、フランス人は「ナチュラルが一番いい」と口々に言います。メイクはかなり控えめですし、ファッションは動きやすいパンツスタイルが主流。髪形も同様で、完璧に整ったものよりは、少しラフで無造作なスタイルが好まれています。ということで、切りそろえられた「ぱっつん」前髪やきれいにセットされた前髪は、成人女性の間ではあまり一般的ではありません。たまに見かけることがあっても、それはインフルエンサーやヘアスタイリスト、芸能人といった一部の人々であり、「ファッションの一環」として取り入れられていることがほとんどです。
くせ毛問題
フランス人が前髪を作らない理由には、髪質の違いも大きく関係しています。ヨーロッパ系のフランス人は、髪の毛が非常に柔らかく、全体的にくるくるとしたウェーブがかかっています。前髪を作ろうと思ってもこのくせ毛が邪魔してしまい、自分の思った通りにスタイリングできないのだそうです。また、北アフリカ・アフリカ系フランス人の場合も、髪に強いカールがかかっていることが一般的で、直毛スタイルにするにはセットにかなりの時間を要します。
フランス人にとっては、「真っすぐそろった前髪」を維持するのは至難の業。朝の仕度に時間をかける人もほとんどいませんから、多くの人が「ナチュラルなまま出かけていく」のです。
ズボラな一面も
とはいえ、「ナチュラル」の裏を返せば「ズボラ」ということになります。フランスの人々は乾燥した気候・硬水などの理由で髪を毎日洗いません。髪の健康にはいいとされていますが、頭皮の脂はどうしてもたまりやすくなります。そんな状況をうまくカバーするのが、フランス女性に定番の「お団子ヘア」です。フランスを訪れたことがある人なら、一度はお団子ヘアの女性を目にしたことがあるでしょう。このヘアスタイルについてフランス女性に尋ねてみると、「楽だから」「脂っぽさが気にならない」という実用的な答えが返ってきました。ナチュラルを良しとするフランス人ですが、前髪を作らない選択には「手間を省きたい」という理由も大きく影響しているようです。
フランス人が、日本人のヘアスタイルに抱く印象
日本人特有の黒髪ストレートや前髪スタイルに対するフランス人の印象は、多くの場合「エキゾチック」「若々しい」といったポジティブなものです。特にぱっつん前髪は、アニメや漫画など日本文化の影響もあり、「日本人らしい」「似合っている」とほとんどの人が好意的に見ています。しかし一方で、日本人の「ヘアカラー文化」を残念に思う人も。先述したようにナチュラルを良しとするフランス人ですから、「地毛のままがその人らしくていい」という見方になるのです。
また、「前髪を作ると顔が隠れる」と感じる人も少なくありません。そのため重めの前髪に対しては、「少し内向的」「シャイ」といった印象を抱くようです。さらに顔の半分を隠すような前髪スタイルは、アイコンタクトを重視する文化が根付くフランスでは「やや閉鎖的」と思われることがあります。
フランス人女性に「ショートヘア」が少ない理由
そうは言っても、筆者は「髪形の自由度はむしろ日本の方が高いのではないか」と思っています。フランスでは、女性のヘアスタイルに関して「長い髪こそフェミニンでいい」とする考え方が浸透しているためです。例えば、フランスの若い女性にはショートヘアの割合が比較的少ないことをご存じでしょうか。2024年夏に行われたパリ五輪でも、多くのフランス人女性アスリートが長い髪を1つにまとめて出場していた姿が印象的でした。
彼女たちにとってショートカットは「年齢を重ね、髪が細くなってきたら選ぶ」もの。日本の女性のように多彩なヘアスタイルを楽しむ姿勢は、「意外と保守的」なフランスではそれほど見られないのです。
このように、フランス人が個性や自由を重視していると言われる一方で、実際には「髪形」に関して一定の好みや固定観念が根付いていることは否めません。前髪文化には確かに「毛質の問題」などが関係していますが、掘り下げてみると、日仏の間に大きな価値観の違いがあることに気付かされます。
髪形は単なる外見だけでなく、私たちが暮らす社会や文化の一端を映し出す鏡なのかもしれませんね。
この記事の筆者:大内 聖子 プロフィール
フランス在住のライター。日本で約10年間美容業界に携わり、インポートランジェリーブティックのバイヤーへ転身。パリ・コレクションへの出張を繰り返し、2018年5月にフランスへ移住。2019年からはフランス語、英語を生かした取材記事を多く手掛け、「パケトラ」「ELEMINIST」「キレイノート」など複数メディアで執筆を行う。
(文:大内 聖子)
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