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「あれは全て私がやりました!」 わが社の“承認欲求モンスター”をどう扱うべきか?

オールアバウト / 2024年12月4日 21時15分

「あれは全て私がやりました!」 わが社の“承認欲求モンスター”をどう扱うべきか?

兵庫県知事選におけるPR会社社長の炎上騒動が尾を引いている。なぜ彼女はあのような投稿をしてしまったのだろうか。“承認欲求強めな人”にありがちな物事の解釈の仕方を見ていこう。(画像:PR会社社長のInstagramを一部加工)

いまだに尾を引く、兵庫県知事選におけるPR会社社長の炎上騒動を受けて、ビジネスシーンで「わが社の承認欲求モンスターをどう扱うべきか」という難題が注目されている。

公職選挙法というものに対しての知識のなさもさることながら、「守秘義務」という法律も全て無視する、ハチャメチャぶりに背筋が冷たくなったビジネスパーソンも多いはずだ。

「そういや、うちの会社のキラキラ女子もインスタに高級バッグの写真やら高級ホテルのアフタヌーンティーしてきた写真とかよく挙げていたな。クライアントの機密情報とか投稿していないよな……」

承認欲求モンスターに欠落している2つの視点

これまでさまざまな企業で社員の情報漏洩などの不祥事対応を手伝ってきた立場で言わせていただくと、ビジネスシーンにおける「承認欲求モンスター」の恐ろしさはそこだけではない。

彼ら、彼女らは、とにかく自分の手柄が認められたいという欲求を肥大化させがちで、仕事をするうえで欠かすことのできない「顧客」や「チームワーク」という視点がごそっと欠けてしまう。そのため、商談や会議などでとんでもない行き違いが生じて、大きなトラブルに発展しやすいのだ。

一体どういうことか、今回の騒動の発端であるPR会社社長のnote『兵庫県知事選挙における戦略的広報:「#さいとう元知事がんばれ」を「#さいとう元彦知事がんばれ」に』を例に説明しよう。

PRのプロにあるまじき「異常な発信」

斎藤兵庫県知事に批判的な立場のメディアや弁護士などは、このnoteの存在をもってして公職選挙法違反だなんだと大騒ぎをしているが、本当の選挙のプロ、本当のPR業界の人間の印象はまったく違う。

ハッキリ言わせていただくと、「この人、本当に仕事を請け負ったの?」とどうしても疑いの目を向けざるを得ないのだ。

なぜかというと、選挙やPRのプロであれば、絶対になくてはおかしい「クライアントの満足度」「チームへのリスペクト」が抜けているからだ。

お読みになっていただければ分かるが、このnoteは自分の手柄話、苦労話が赤裸々に述べられている一方で、その功績についてクライアントである斎藤元彦氏や事務所スタッフたちがどう評価をして、どう感謝をしていたのかということが一切触れられていない。斎藤氏との打ち合わせ風景という写真は掲載されているが、この時にどのようなやりとりがあったとか、具体的なコミュニケーションに関する記述は一切ない。

これは「クライアントファースト」を徹底的に叩き込まれるPRパーソンにはあり得ない「異常な情報発信」である。

1人で成し遂げたとでも? 仕事をする者として「あり得ない」

筆者は過去、日本パブリックリレーションズ協会が発行した『広報の仕掛け人たち PRのプロフェッショナルはどう動いたか』(宣伝会議)という本の編集をお手伝いしたことがある。そこで、さまざまなPRのプロから、彼らが立案した戦略PRの事例について話を聞いたが、全てのPRマンたちが「クライアントからの評価や感謝のコメント」に言及して、そこを繰り返し強調した。

もちろん、クライアントの承諾がなければ、このような成功事例を語ることができないということもあるが、そもそもPRという仕事自体がクライアントの依頼なくてはできないからだ。

だから当然、PRパーソンが自分がやった仕事を語る際には、クライアントが登場する。そして、これはどんな仕事にもいえることだが、PRも「1人でやれることなど限られている」ため、チームへの感謝の言葉も出てくる。

例えば、企業がPR会社にSNS戦略やアカウントの運用を依頼したとしよう。しかし実際には、依頼したからといって、企業は「丸投げ」するわけではない。PR会社側が出してきた戦略について、企業側の担当者は社内調整や根回し、実行に移すまでの段取りをしなくてはいけない。運用がスタートしたら、社内に報告をして、改善点などを見つけるのも企業側担当者が行う。

そんな中でPR会社側が自社のホームページやブログで「この企業のSNS戦略は全て私たちがやっています」などど喧伝(けんでん)したらどうか。守秘義務違反はもちろん、仕事をする者として「あり得ない」のではないか。

今回のPR会社社長の投稿は、そのように実際にPRを生業としている者からすれば「あり得ない」ことのオンパレードだ。正直、きちんと契約を結んで業務を受けたPRパーソンの立ち振る舞いとは思えない。そこで「この人、本当に仕事を請け負ったの?」と疑われてしまうのだ。

「全て任された」と自分に都合よく解釈した?

もちろん、現時点でそのあたりについての事実は明らかになっていない。ただ、今回のケースで1つだけ言えるのは「承認欲求の強い人」というのは、「顧客」や「チーム」を軽視しがちということだ。厳しい表現を使うと、「自分1人で仕事をしている気になっている」。

このようなタイプの人のトラブルに多いのは、顧客や取引先などの相手の話を、自分に都合のいいように解釈するということだ。

これはあくまで筆者の推測だが、今回のPR会社社長の「選挙におけるSNS・広報戦略を全て任された」というのも、実はこれが関係しているのではないかと思っている。

政治家の「頼れるのは、あなただけ」を真に受け……

基本的に政治家というのは、「いかにしてタダで人を動かすのか」ということを考えている人たちだ。面会をした人全てに「お力を貸してください」とか「ぜひこれからもいろいろ教えてください」なんて言って、ペコペコ頭を下げる。

こういう世界に慣れている人間は「ああ、こいつはタダで応援してほしいんだな」と相手にしなかったり、「当選したら何かしら得があるから、手弁当で手伝っておくか」となる。

しかし、たまに「ウブな人」がこの誰にでも言う社交辞令を真に受けて、「○○先生から助けてくれと依頼された」と自分に都合よく解釈をする。

筆者も昔、選挙を控えた国会議員の出版を手伝って事務所に出入りをしていたところ、「私は彼の選挙全般を任されている」と胸を張る広告代理店、PR会社の人たち5〜6人に会った。

もちろん、これは彼らが話を盛っている。実際は当選後を見据えたボランティアでちょこちょこ口を出していた程度だ。しかし、このような“いっちょかみ”のビジネスマンたちに限って、飲み会なんかでは「あー、あれはわれわれが当選させたもんだよ」なんて自慢話をするものなのだ。

「選挙戦」というのは、このようにして「頼れるのは、あなただけですよ」とささやいて、いかにしてタダで選挙を手伝ってもらうのか、という勝負でもあるのだ。

いずれにせよ、「承認欲求強めの人」はこのように自分を中心に物事を解釈をするので、ビジネスの世界ではトラブルが多発しがちだ。ビジネスパーソンはそのあたりを踏まえて、「わが社の承認欲求モンスター」に仕事を任せていただきたい。

この記事の筆者:窪田 順生
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経てノンフィクションライター。また、報道対策アドバイザーとしても、これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行っている。
(文:窪田 順生)

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