1960年6月生まれの障害年金を受給している女性。特別支給の老齢厚生年金を今からでももらうことはできるのでしょうか？

年金制度にまつわることは難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。今回は、障害年金を受給している女性からの「特別支給の老齢厚生年金」についての質問に専門家が回答します。

老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。

今回は、障害年金を受給している女性からの「特別支給の老齢厚生年金」についての質問です。

Q：1960年6月生まれの障害年金を受給している女性。特別支給の老齢厚生年金を今からでももらうことはできるのでしょうか？

「1960年6月生まれの女性。現在、64歳で障害年金を受給しています。今まで10年ほど会社勤めをし、厚生年金保険料を払っておりますが、特別支給の老齢厚生年金を今からでももらうことはできるのでしょうか」（匿名さん）

A：65歳までの間は、障害年金か、特別支給の老齢厚生年金かどちらか一方を選択することになります。年金事務所で年金額を確認してみましょう

老齢年金は、原則65歳から受け取ることができますが、厚生年金の加入期間が1年以上あり、性別と年齢によっては、65歳になる前から、特別支給の老齢厚生年金を受け取ることができる場合があります。相談者は、1960年6月生まれの女性ですので、特別支給の老齢厚生年金を62歳から受給できます。

相談者は、現在64歳で障害年金を受給しているとのことですが、障害年金（障害基礎年金や障害厚生年金）を受給している人は、①障害年金（障害基礎年金や障害厚生年金）、もしくは②特別支給の老齢厚生年金かどちらか、有利なほうを選択して受給することになります。

62歳にさかのぼって特別支給の老齢厚生年金を選択することもできますが、その場合は62歳から今まで受給していた障害年金を返金することになります。

障害年金と特別支給の老齢厚生年金、どちらを選択すれば有利かを考える場合、在職老齢年金制度に注意しましょう。

在職老齢年金制度とは、60歳以降、厚生年金の加入しながら、老齢厚生年金や特別支給の老齢厚生年金を受給する場合、毎月の収入（給与やボーナスなど年収の12分の1）と老齢厚生年金や特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分の月額を合計した金額が、支給停止基準額50万円（令和6年度）を超えると、老齢厚生年金や特別支給の老齢厚生年金が一部もしくは全額が支給停止される制度です。

相談者が特別支給の老齢厚生年金を受給することを選択した場合（②）、厚生年金に加入しながら勤務し続けているなら、在職老齢年金制度によって、特別支給の老齢厚生年金が支給停止される可能性はあります。

一方、特別支給の老齢厚生年金ではなく、障害年金を選択した場合（①）は、厚生年金に加入しながら勤務し続けていても在職老齢年金制度によって、障害年金が支給停止になることはありません。

障害年金と特別支給の老齢厚生年金、どちらを選択するかは、年金事務所でそれぞれの年金額を確認してから決めるといいでしょう。

監修・文／深川 弘恵（ファイナンシャルプランナー）

都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている。
(文:All About 編集部)