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独断と偏見で「2024年のホラー映画ランキング」を作成してみた。年末に映画館で見るならぜひ第3位を

オールアバウト / 2024年12月7日 20時35分

独断と偏見で「2024年のホラー映画ランキング」を作成してみた。年末に映画館で見るならぜひ第3位を

筆者が独断と偏見で選ぶ、2024年ホラー映画ベスト10を紹介します!特に「ヤバい家族の最恐のおもてなし」を描く第3位をぜひ劇場で見てほしいのです。(サムネイル画像出典:(C) 2024 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved. )

2024年も残り1カ月を切りました。数多くの話題の映画が公開された2024年、ホラー映画も大充実していたことをご存じでしょうか。

ここでは、2024年に30本以上のホラー映画を見た筆者が、その中から独断と偏見で選んだベスト10を紹介しましょう。メジャーな作品以外でも見逃してほしくない掘り出し物がありますし、特に2024年最後に公開される、第3位の傑作を是が非にでも劇場で見てほしいのです。

10位:『スパイダー/増殖』(11月1日より劇場上映中)

過去20年間にわたるフランスのホラー映画で初登場1位を記録する大ヒットとなった本作の恐怖の対象は、タイトル通りに「クモ」。本物のクモ200匹とVFXを融合させて生み出した、たくさんのクモがいっせいにうごめき襲いかかる様は、いい意味で生理的な嫌悪感を呼び起こすでしょう。カメラワークやサウンドデザインも凝っており、種々のシーンのクオリティーから、格調の高さも感じました。

舞台となる円形のアパートメントは、パリ郊外に実在する公共住宅です。移民や低所得者(が住む場所)への差別問題も本作には込められており、それは外見で判断され忌み嫌われるクモという存在とも一部で重なっています。同じくアパートが舞台の攻防戦が描かれた『死霊のはらわた ライジング』が好きな人にもおすすめできますし、後述する『エイリアン:ロムルス』のように、恵まれない境遇の若者たちが理不尽に立ち向かう物語としてもおすすめします。

9位:『ソウX』(シネマート新宿で12月6日より2週間限定上映 あり)

猟奇殺人鬼「ジグソウ」が「解けないと死ぬ」ゲームを仕掛けるスリラー映画『ソウ』シリーズの通算10作目! 現在はRotten Tomatoesで81%の支持率などシリーズの中でもかなりの高評価を得ました。今回はゲームのプレーヤーではなく殺人鬼のジグソウが主人公かつ、彼が遭遇する理不尽な出来事を追うオープニングの描き方が丁寧で、まるでクリント・イーストウッド監督作の映画のような趣もあり、2時間に迫る尺でもずっとのめり込むことができました。

それでいて、死のゲームの悪趣味さはシリーズでもトップレベル。R15+指定でも甘いと思わせるほどです。グロいのがダメな人には全くおすすめできませんが、序盤の描写も手伝って、そのゲームの痛々しさからプレーヤーの「罪(と、もちろん理不尽さも)」を、これでもかと思い知らされます。シリーズの原点回帰的な側面もあり、絶対に忘れられないラストシーンも待ち受けています。シリーズ初見でも理解できる内容ですが、『1』と『2』を事前に見ておくほうがより思い入れができるでしょう。

8位:『アビゲイル』(各配信サービスでレンタル中)

 「犯罪グループが誘拐したのは、吸血鬼の少女だった……!」という、とんでもないアイデアが物語の発端となっている作品です。しかしながら「出オチ」で終わらせることなく、広く入り組んだ屋敷と、パワーバランスが次々に切り替わっていく様を、目いっぱいに生かして楽しませてくれます。R15+指定にも納得する血しぶきのゴージャスさも含めて、ほぼほぼブラックコメディーな内容に仕上がっていました。

 「少女をひと晩監視するだけで多額の報酬が手に入るはず」「だけど逆に屋敷に閉じ込められて“獲物”になる」という逆転劇からすれば、「ナメてた相手が実は殺人マシンでした映画」の1つともいえます。悪人だらけの中でも確かな善性のある女性主人公に感情移入ができる作劇もうまいですし、とにかくエンタメ性の高い内容を求める人に推薦できます。

7位:『他人は地獄だ』(11月15日より劇場上映中)

韓国の人気Web漫画を日本で実写映画化した作品で、上京した青年が格安シェアハウスで不気味な住人たちの恐怖に怯えるというストーリーです。極端な人物描写は、良くも悪くも現実離れした印象を抱く人が多いでしょうが、だからこそ「目が死ぬ」ほどに追い詰められる主人公の気持ちが痛いほどに分かる内容に。「自分の訴えを誰にも信じてもらえない」「自分が絶対だと信じていた認識までも揺らいでしまう」というホラーの定石もしっかり踏んでいます。

「刃物による殺傷・流血の描写がみられる」という理由でPG12指定がされていますが、そのレーティング止まりとは到底思えないほど、全編がグロテスクかつ理不尽な雰囲気に満ち、意図的に不快指数を高めにした内容なので鑑賞には注意が必要でしょう。ブラック企業の理不尽さもまた極端ながら容赦なく描かれるので、仕事を理由にメンタルが落ち込んでいる人には全くおすすめできません。その不快さを体感することで、とある展開には驚きと納得感も抱くはずです。

6位:『バーン・クルア 凶愛の家』(11月22日より劇場上映中)

こちらはタイ製のホラーで、経済的理由からマンションに引っ越した女性が、コンドミニアムを別の家族に貸し出した矢先に夫の不審な行動に気付き、少しずつカルト集団のおぞましい企みに近づいていくという内容です。母親が邪悪な力におびやかされる幼い娘を救おうと奮闘する様は『エクソシスト』を思わせますし、不安と恐怖が積み重なっていくスタンダードなホラーの定石にならっているのですが、……中盤からの展開が重要です。

テクニカルな構成は、とあるショッキングな出来事を伝える手段としても秀逸ですし、物語全般、特に意外な結末と見事にリンクしています。オカルト要素が強く、R15+指定にも納得する地獄のような状況が描かれる内容ながら、実話にインスパイアされたというのも驚き。身近にあるかもしれないリアルな恐ろしさもそこにはありました。12月現在も小規模で公開中ですので、ぜひ映画館の「逃れられない」状況で体感してほしいです。

5位:『テリファー 聖夜の悪夢』(11月29日より劇場上映中)

残虐非道なピエロの殺人鬼を描くシリーズの第3弾で、最大のセールスポイントは「R18+指定にも大いに納得する殺害シーンの残虐さ」。公式Webサイトの「鑑賞は自己責任で」や、ポスターの「全米が吐いた。」の触れ込みは伊達ではなく、特に終盤のアイデアは最悪、でグロ耐性が十分だと自覚している筆者でも「ウプッ……」となってしまいました(褒め言葉)。SNSでも「あれ映画館でやっていいんだ」「途中退場者を複数見かけた」などと話題となっています。

そんな内容ながら「子どもが殺される直接的な描写はしない」というモラルも貫かれています。実際の撮影では、子役たちを暴力やネガティブな描写から避けるように徹底し、トラウマや危害を与えていないかを確認するために俳優組合の関係者がセットを訪れていたのだとか。それでも冒頭から「子どもの惨殺後の死体」が写るのはショッキングですし、それすらも物語にうまくつなげる意地悪なアプローチにはもはや感心してしまいました。2作目『テリファー 終わらない惨劇』から直接的に話がつながっているので、先にそちらを鑑賞をしておくのがおすすめです。

4位:『エイリアン:ロムルス』(各配信サービスでレンタル中)

言わずと知れたSFホラーの金字塔である『エイリアン』。その初代監督であるリドリー・スコットが手掛けた『プロメテウス』と『エイリアン:コヴェナント』の評価は賛否両論でしたが、本作ではエイリアンという存在への「原点回帰」的な恐怖を追求しており、往年のファンも、初めてシリーズに触れる人からもおおむね大好評で迎えられました。

『ドント・ブリーズ』の監督らしいエッセンスがふんだんに盛り込まれつつ、過去の『エイリアン』シリーズのオマージュも込められているほか、独自のアトラクション的な見せ場もあるという、監督の作家性とファンサービスも両立したエンタメホラーとして、1つの完成形と言えます。本作を初めて見る人にとって、後追いでシリーズを見れば、『エイリアン』シリーズへの理解と敬愛も伝わるはずです。

3位:『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』(12月13日より劇場公開)

日本で2024年5月に劇場公開されたデンマーク・オランダ合作映画『胸騒ぎ』を、アメリカでリメイクした作品です。その内容は「次第におかしいことが分かっていく家族のおもてなしに、居心地の悪さと不気味さを覚えつつも、気を遣ってしまって、なかなか逃げ出せない」様を追うもの。舞台やシチューションをしっかり再現する、誠実なリメイクの姿勢が見て取れます。(C) 2024 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved. しかしながら、そこは『ハッピー・デス・デイ』『M3GAN ミーガン』などを手掛けたブラムハウス・プロダクションズ制作というだけあって、新たなアイデアも盛り込まれ、エンタメ性がオリジナル版よりもマシマシな内容に!

近年では特に狂気的な役で高い評価を得るジェームズ・マカヴォイがノリノリで恐ろしい役を演じており、特に中盤のとある展開からは「ただのリメイクには終わらせない!」といった作り手の気合がビンビンに感じられる内容となっていました。(C) 2024 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved. そのおかげで、「胸糞の悪さ」をこれでもかと押し出したオリジナル版よりも、(今回もその要素はふんだんにあるものの)かなり親しみやく、より広い層におすすめしやすい内容となっていました。「簡潔な殺傷出血、薬物使用および児童虐待の描写がみられる」を理由とするPG12のレーティングも適切ですし、作品には必要なものに思えました。ネタバレは厳禁、年末に映画館で、シンプルかつめちゃくちゃ面白くて怖いホラーサスペンス映画を見たいという人に、大プッシュでおすすめします。

2位:『Chime』(配信プラットフォームRoadsteadで独占販売・レンタル中)

45分の中編作品ながら、カメラワーク、音、役者の顔の全てが不穏で、展開は不条理。泣きそうになるほど、さらには「見る前には戻れない」ほど、世界の認識を変えるほどの恐怖を呼び起こす作品でした。直接的な殺傷描写のためにR15+指定がされていますが、中盤の「明確な理由がないまま一線を超えてしまうかもしれない」恐ろしさは、絶対に子どもには見せてはならないと思いました。

黒沢清監督作は、この2024年にリメイク作の『蛇の道』と菅田将暉主演の『Cloud クラウド』も公開され、そのどちらもまた犯罪に加担してしまう者たちの「加害者性」の恐ろしさを描いていました。画面のみならず人間の「闇」がじわじわと広がっていくような作家性が詰まった、黒沢清作の最高傑作が『Chime』だと断言しますし、あの「椅子」のシーンはホラー映画史上に残るでしょう。

1位:『サユリ』(DMM TVで独占見放題配信中)

同名漫画を原作とした作品で、何より話題を集めたのは中盤の「転換」(予告編でも示されているので視聴注意)。何も知らずに見ると、あまりのギャップに驚きつつも爆笑、知っていても「待ってました!」とばかりに爆笑が待ち受けるという「まさかのコメディー要素」も楽しいのですが、それ自体が「理不尽な事態に振り回せる日本のホラー映画」の「カウンター」にもなっていることが秀逸でした。

それでいて、R15+指定にも納得する恐怖描写の「ガチ」ぶりと、物語の完成度も並々ならぬものがあります。その先に待ち受けた、人間の罪、怒り、強さ、そして全ての感情をぶちまけたようなクライマックスとラストを見て、筆者は滝のように涙を流しました。ホラー映画というくくりを抜きにしても、きっと人生で大変なことが起こっても、この映画のことを思い出して少し勇気がもらえるだろう……そこまでの希望を与えてくれた、「全てのホラー映画の中でNo.1」と断言できる大傑作です。

まとめ:記憶に残るホラー映画、そして2025年の必見作も!

そのほかの2024年のホラー映画では、『毒娘』『オーメン:ザ・ファースト』『インフィニティ・プール』『あのコはだぁれ?』『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』『ニューノーマル』『デッドストリーム』『クワイエット・プレイス:DAY 1』『悪魔と夜ふかし』『ビートルジュース ビートルジュース』『憑依』『破墓/パミョ』『エルダリー/覚醒』『THE SIN 罪』なども忘れられないインパクトと面白さがある作品でした。

そして、2025年に公開されるホラー映画の中で筆者のイチオシは、1月24日公開の『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』。グロはなし、大きな音でも驚かさず、派手さもありませんが、「受け手の想像」を利用した恐怖に何度も身体中がゾワっとしました。日本のホラー映画の魅力を受け継ぎつつ、新たな可能性を見せつけた傑作です。さらには、1月17日公開のダークなストップモーションアニメと実写を融合させた『ストップモーション』、1月24日公開の田舎の「掟」に追い詰められていく『嗤う蟲』、1月24日公開の韓国の実在の心霊スポットを題材とした『ヌルボムガーデン』、2月21日公開の窓やドアが全て消えてしまった家に取り残された2人の子どもを追う『SKINAMARINK スキナマリンク』、謎の男に運転を強要された男が危険なゲームに巻き込まれる2月28日公開の『シンパシー・フォー・ザ・デビル』などが待ち受けています。どれも怖くて面白そう……!その前に、12月13日より公開の『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』を筆頭に、この2024年の傑作ホラー映画も積極的にご覧になってほしいです。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
(文:ヒナタカ)

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