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すぐ「すみません」と言う日本人、謝らないフランス人。欧米社会の「謝罪しない美学」とは?

オールアバウト / 2024年12月12日 21時5分

すぐ「すみません」と言う日本人、謝らないフランス人。欧米社会の「謝罪しない美学」とは?

日本にあって、フランスにないもの。それは「謝罪」の文化です。欧米の人々があまり謝らないことは広く知られていますが、フランス人も例外ではありません。今回は、フランス流の「謝らない文化」についてご紹介します。

約束の時間に遅れるときや、飲食店で注文ミスがあったとき。日本人であれば、第一声で「すみません」と謝るのが普通です。しかし筆者が暮らすフランスでは、謝罪の言葉を耳にする機会がほとんどありません。

例えば、過去に筆者がフランス人と待ち合わせをした際、相手が30分ほど遅れてきたことがありました。そのとき相手が述べたのは、「どうして遅れてしまったか」という長い説明だけ。謝罪の言葉はありませんでした。

フランス生活に慣れてきたとはいえ、このような場面に遭遇すると、日本との文化の違いを改めて感じてしまいます。

フランス人の謝らないシチュエーション例

では、どのようなシチュエーションで謝罪がなかったのか。筆者が実際に体験した出来事をご紹介します。

風邪をうつしたとき

誰かに風邪をうつしてしまっても、フランス人は基本的に謝ることをしません。たとえそれが“クラスターの原因”になったとしてもです。筆者もフランス人から風邪をうつされたことがありますが、「ごめんね」という言葉の代わりに「よく休んで」と言われました。

フランスでは、風邪は自然現象と捉えられることが多いようです。他人を責めるよりも、「自分も風邪を引くリスクを理解している」という暗黙の了解があるのだと感じます。

スーパーで不良品を見つけたとき

スーパーで卵を手に取ったときのこと。確認のためケースを開けてみると(フランスでは紙パックが一般的)、いくつかの卵の殻が割れていました。それを店員さんに伝えたところ、「そのまま置いておいてください」というシンプルな返答が。もちろん、謝罪の言葉はありません。

店員さんとしては、「自分が直接割ったわけではないから、謝る必要はない。自分に非はない」と感じたのでしょう。会社の一員として謝罪することを当然と考える日本人とは、価値観が大きく異なります。

公共交通機関が遅れたとき

日本では、電車や地下鉄が遅延した場合、「ご迷惑をおかけして大変申し訳ございません」という謝罪のアナウンスが流れます。しかし、フランスではこれが一切ありません。遅延の理由が事故であろうとストライキであろうと、公に謝ることをしないのです。

自動改札機や発券機が故障している場合も同様です。こうした状況では、「他の機械を使ってください」や「いつ直るか分かりません」といった対応をされることがほとんどです。フランス人の間では、「自分は直接かかわっていないのだから」という意識が働いているのだと思います。

なぜフランス人は謝らない?

オフィシャルな場面でも、ビジネスシーンでも、親しい間柄でも、謝ることがほとんどないフランス人。ではなぜ謝らないのでしょう? 実際にフランス人に理由を尋ねると、「意味のない謝罪は、服従と同じ」という答えが返ってきました。

つまりフランス人にとっては、相手を敬って腰を低くすることよりも、謝罪せずに「威厳」や「自信」を保つことが重要なのです。平たく言えば、「相手に弱みを見せない」文化が根付いていると言えるでしょう。

この価値観は、幼稚園や小学校など幼少期から培われます。学校教育では、日本よりもプレゼンテーションやディベートの機会が多く、家庭でも両親のコミュニケーションを通じて学ぶ環境があります。つまり感情論よりも「なぜ問題が起きたのか」「どう解決すべきか」を重視する彼らにとっては、「謝罪しない」姿勢は当たり前のことなのです。

相手にも謝罪を求めない

一方で、フランスには「相手に過度な謝罪を求めない」文化があります。

例えば、先述した「公共交通機関が遅れた」場合。こうした状況では、フランス人の多くが「車掌が謝罪しても状況は変わらない。電車が動かない以上、謝るよりも迅速に問題解決に取り組むべきだ」という、非常に現実的な考えを持っています。またこの考え方は政治家や著名人など、「誰かが何かをしでかしてしまったとき」にも当てはまります。

以上から分かるように、謝罪に関しては、フランス人は日本人よりもかなり慎重なのです。道でぶつかったときや足を踏んでしまったときには「Pardon(失礼)」と言いますが、状況が深刻になればなるほど謝罪は難しくなります。フランス映画などでもそうした場面が映し出されていると思いますので、興味のある人はぜひ注意深く鑑賞してみてください。

この記事の筆者:大内 聖子 プロフィール
フランス在住のライター。日本で約10年間美容業界に携わり、インポートランジェリーブティックのバイヤーへ転身。パリ・コレクションへの出張を繰り返し、2018年5月にフランスへ移住。2019年からはフランス語、英語を生かした取材記事を多く手掛け、「パケトラ」「ELEMINIST」「キレイノート」など複数メディアで執筆を行う。
(文:大内 聖子)

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