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フランス人はなぜスカートを履かないのか。ミニスカートにピンヒールは「娼婦」に見られてしまう?

オールアバウト / 2024年12月19日 21時25分

フランス人はなぜスカートを履かないのか。ミニスカートにピンヒールは「娼婦」に見られてしまう?

女性のスカートは季節を問わずに楽しめる、ファッションアイテムの1つです。しかしヨーロッパ、特にフランスでは、スカートに対する認識が日本と少し異なるかもしれません。フランス在住者の視点からその「本音」に迫ってみましょう。

日本を訪れたフランス人の友人を案内していたときのこと。彼女は、「日本の女性ってフランス女性よりスカートをはいているね。靴もすごくおしゃれだし……」と、驚きながらつぶやいていました。

スカートに対して「慎重」なフランス

当時は「へえ」と軽く流してしまった筆者ですが、フランスに住まいを移してから、ようやくその言葉の意味を理解することができました。フランスではパンツスタイルの女性が圧倒的に多く、スカート姿の女性をほとんど見かけないのです。

ファッションに寛容なイメージのあるフランス。しかし、フェミニンなコーディネートが多い日本に比べると、意外にもバリエーションが少ないのがフランスの現実です。特にスカートに関しては、多くの人が「慎重な姿勢を取っている」といえるでしょう。

フランス人女性の半数以上が、毎日ズボンをはいている

フランス女性はパンツスタイルが基本(写真は筆者撮影、以下同)
フランスの調査会社「トルーナ(Toluna)」が2021年に行ったアンケートによると、フランス人女性の10人中8人以上(84%)が、少なくとも週に4日はズボンを履くと答え、半数以上(55%)は例外なく毎日ズボンを履くと答えました。そしてその理由で最も多かったのは、「快適だから」という答えです(フランスに住む18歳以上の女性1054人を対象にした調査)。

確かにパリの街を歩くと、すれ違うほぼ全ての女性がパンツスタイルに身を包んでいます。特に冬場はその傾向が顕著で、日本で好まれているロングスカートでさえ、ほとんど見かけることはありません。

それは仕事でもプライベートでも同様です。快適だからという理由のほかには、「防寒」や「体型カバー」、さらに「女性の安全のため」といった現実的な問題も含まれています。

女性はズボンを履く権利がなかったフランス

それではなぜフランス女性は、これほどまでにパンツスタイルを好むのでしょうか。

フランスにはかつて、「女性はズボンの着用を禁止する」という条例がありました。1800年に制定された古い条例で、「女性らしいファッションを義務付ける=女性は男性と同じように権力を握ってはならない、政治活動には参加させない」ことを意図したものです。

“自由”を何よりも尊重するフランスで、このような条例が存在していたとは驚きですよね。さらに驚くべきことに、同条例が正式に廃止されたのはつい最近の2013年です。

ただし、実際には長年にわたって形骸化しており、フランスの女性たちは既に自由にパンツを履いていました。今では誰も話題にすることのない過去のネタですが、もしかするとフランスの女性たちは「パンツスタイルを選ぶ自由」に対して、日本人よりも強い意識を持っているのかもしれません。

ミニスカートは、「ピュート(娼婦)」の印象が強い

夏のパリ。スカートを履く人は増えるが……
そうした背景も相まってか、フランス人は「ミニスカート」に「ピンヒール」といった極端な装いには、「ピュート(娼婦)」という印象を抱くそうです。ばっちりメイクにブランド物のバッグを合わせるなんてもってのほか。もしファッションにミニスカートを取り入れたい場合には、足元をスニーカーや武骨なブーツにするなど、やり過ぎない工夫が必要です。

一方で夏のバカンスや恋人とのディナーなど、特別なシーンではミニ丈の服装を楽しむことがあります。その場合はミニスカートよりも「ミニドレス」が一般的。誰かと一緒にいることが前提ではあるものの、フランス女性にとってのミニ丈は、総じて「ソワレ(夜のお出かけ)のために」というイメージです。

60代以降の女性は「ファッションの自由度」が高い

しかし、そんな考えを一切持たない世代が存在します。それは60代以降のマダムたち。日本では若ければ若いほど「ファッションの自由」が許される傾向にありますが、フランスではむしろ逆です。マダムたちのファッションに対する自由度は、日本よりもはるかに高いといえるでしょう。

夏に腕を出したりデコルテを強調したり、ミニスカートを楽しんだり……と、フレンチマダムの「自由」へのパッションは、若い女性と比べものにならないほど。元々、人の目を気にしないフランス人でも、年齢を重ねることでさらに「縛り」や「世間の目」から解放されるそうです。当然、バカンス先ではビキニ姿も大披露! これに対して周囲が「イタイ」「年相応の格好をして」と指摘することもありません。

ファッション観は世代によってさまざま

若い世代は意外と保守的な一面も
年齢に縛られずコーディネートを楽しむフランスのマダムと、シンプルで快適さを求める若い世代では、ファッションに対する考え方も異なります。とはいえ「年齢を重ねるほど自由度が増す」という、日本とは真逆のフランスの価値観に驚いた人も多いのではないでしょうか。

ミニスカートの自由は、確かにTPOに左右されます。しかし「年齢を理由にファッションを諦めない」という姿勢は、筆者が魅力を感じるフランスの価値観の1つです。

この記事の筆者:大内 聖子 プロフィール
フランス在住のライター。日本で約10年間美容業界に携わり、インポートランジェリーブティックのバイヤーへ転身。パリ・コレクションへの出張を繰り返し、2018年5月にフランスへ移住。2019年からはフランス語、英語を生かした取材記事を多く手掛け、「パケトラ」「ELEMINIST」「キレイノート」など複数メディアで執筆を行う。
(文:大内 聖子)

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