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首都圏の中学受験「今年も厳しい」 志願者数増の人気校に見る、“難関大進学”ではない納得のニーズ

オールアバウト / 2024年12月26日 21時5分

首都圏の中学受験「今年も厳しい」 志願者数増の人気校に見る、“難関大進学”ではない納得のニーズ

近年加熱している首都圏の中学受験。2025年度入試も受験率が高く、「厳しい受験になりそうだ」という予測が出ています。志望者数を増やしている学校の特徴を解説するとともに、最高の合格をつかみ取る方法を紹介します。

首都圏の中学受験が今年も加熱しそうという予測が出ています。首都圏模試センターによると、2025年度入試の私立・国立中学受験者数は「5万2300名」。また、受験率は過去最高の「18%台」を維持するという予測もあります。

今後小学生の数は減っていきますが、首都圏では小学生の保護者の中学受験と中高一貫教育に向ける期待が大きくなっているようです。

ここ数年、最難関校の志願者数は、前年より減少か横ばいにとどまるという傾向もあり、人気の中心は中堅校といわれる学校に移っています。しかし、受験者数が増えることで、それらの学校の偏差値も上昇傾向にあるので、塾関係者からは「今年も厳しい受験になりそうだ」という声も聞かれます。

同じく首都圏模試センターによると、1人あたり平均出願校数も7.4校。これまた過去最高になりそうということで、合格を勝ち取るためには、受験校選びがキーポイントになるでしょう。

今回は受験生の人気を集めている学校の教育内容から、その理由を探っていきたいと思います。

志願者数が増えている学校 

ここに、志願者が増えている学校のリストがあります。2024年9月29日に実施された首都圏模試センター主催の合判模試で、前年と比較して志望者が増加した学校をランキング形式でまとめたものです。
小6第4回合判模試 志望者動向 増加TOP20(前年比)(画像:首都圏模試センター提供)

男女ともに1位の開智所沢中等教育学校は、2024年度入試でも多くの受験生を集めて話題になりましたが、今年も高い人気を維持しています。埼玉県の学校なので1月に受けられるうえ、都心からのアクセスもよいことから、併願校としても魅力があり、都内からの受験生も多く志望しています。探究・国際・医進という今のトレンドを押さえたコース設定による教育内容も人気の要因でしょう。

また、2026年4月1日から明治大学の系列校になり、校名を「明治大学付属世田谷」に変更し共学になる日本学園中学校、初年度多くの受験生を集めて何かと話題になった芝国際中学校も、志望者が増えていて、隔年現象による増加が予想されるので注意が必要な学校です。

他には、男子校では足立学園中学校、女子校では十文字中学校、跡見学園中学校、富士見丘中学校、光塩女子学園中等科、トキワ松学園中学校、共学校では日本工業大学駒場中学校、桜丘中学校、駒込中学校、淑徳巣鴨中学校などの増加が目立ちます。 

神奈川県では日本大学藤沢中学校、神奈川学園中学校、千葉県では芝浦工業大学柏中学校、麗澤中学校、埼玉県では武南中学校が増加しています。

グローバル・探究・STEAMがトレンド?

志望者が増えている学校を見ていくと、人気の傾向が見えてきます。かつては中学入試で私学を選ぶ目的の多くが「難関大学進学に有利だから」でした。しかし今は、大学入試の変化もあり、実社会に出た時に必要とされる能力の育成にどれだけ貢献できているかという点が注目されているようです。

そのような意味で、教育内容では、「グローバル」「STEAM」「探究」がキーワード。これは時代の変化と求められる能力の変化に呼応しています。

【グローバル】

グローバルとは、単に英語教育のことを指すのではなく、「グローバルな視点で物事を見て考える力を養う教育」のことをいいます。

具体的には、以下のようなさまざまな取り組みが見られます。

・留学や海外研修制度が充実している
・海外大学進学への道が開かれていたり、国際バカロレア教育(国際的な教育プログラム)を行っている
・日本の高校だけでなく、海外の高校卒業資格も同時に取れるカリキュラム(ダブルディプロマ)を持っている

国際系といわれる学校では、インターナショナルスクールを併設していたり、英語で他教科を学ぶ国際クラスを設けていたりするところもあります。全員がその教育を受けられるわけではないところもあるので注意は必要ですが、これらの学校は既存の教育に疑問を持ち、グローバル社会を念頭においた新しい教育に関心を持つ家庭をターゲットにしています。

志望者増加校の文化学園杉並中学校は、10年前にカナダブリティッシュコロンビア州の海外校として認可が下り、日本と海外の高校卒業資格を同時に取れるダブルディプロマプログラムをいち早く採用した学校です。

また、城西大学附属城西中学校も古くからグローバル教育に強みを持っている学校ですし、八雲学園中学校は国際的な私学連盟「ラウンドスクエア」の加盟校です。

もともと私学の多くは、英語教育に力を入れており、海外研修もある程度行っていますが、最近はその行き先も変わってきています。足立学園中学校では、ラオスやアフリカのタンザニアで「志グローバルプログラム」を実施。佼成学園中学校は、1年生でモンゴル、2年生でフィリピン、3年生でタイに行きます。

また、男子進学校の中にもグローバル教育に力を入れて進化している学校があります。「硬教育」を理念に掲げる努力主義の伝統校・巣鴨中学校は、他に類を見ないオリジナルの海外研修プログラムを確立し、グローバル教育先進校となっていますし、成城中学校もその後を追っています。

グローバル教育が注目を集める理由の1つは、日本経済の低迷です。また、少子化で日本の生産年齢人口が減少し、子どもたちが社会に出る頃には、さまざまな国の人と一緒に仕事をするのが一般的になっていくことを考えると、グローバルに対応できる力を育む教育が期待されるのは当然の流れです。また、海外大学進学に関心がある家庭も増えているので、そのニーズに応えようという動きも活発になっています。

【探究】

新学習指導要領でも重視されている「探究」という言葉が、以前にも増してクローズアップされるようになりました。今や、どこの学校も探究というキーワードを使うようになりましたから、より具体的にどんな活動をしているのか、踏み込んで見る必要があります。

学校によって取り組みはさまざまですが、以下のようなものがよく見られる取り組みです。

・行政や企業と組んでそれぞれの課題を解決するためのプロジェクトを動かす
・個人の興味関心を元に長期にわたって研究を行い、論文にまとめて発表する
・修学旅行の行き先を検討、実施、振り返るところまで生徒主体で行う
・行事の運営を1つのプロジェクト活動と捉え、生徒に主体的に取り組ませる

もちろんこれらも探究ですが、総合の時間だけでなく、教科の枠を超えて生徒自らが課題を見つけて設定し、横断的かつ総合的な学習を行う学校もあります。

探究に力を入れている学校としては、かえつ有明中学校や元麹町中学校校長の工藤勇一氏が改革を進めた横浜創英中学校、自由教育の流れをくむドルトン東京学園中等部など。出口を大学進学だけにおかず、変化する社会を見据えて主体的に生きる力を育む教育を行う学校として、これまでの大学進学をゴールにした中等教育に疑問を持つ層から支持されています。

【STEAM】

STEAMとは、科学(Science)・技術(Technology)・工学(Engineering)・芸術(Art)・数学(Mathematics)の頭文字をとったもの。日本では理系人材が不足しているといわれています。

先ごろ、国際的な学力調査の1つ、TIMSSの結果が発表になりましたが、そこでも日本では理系に関心を持つ生徒が海外に比べて少ないという結果となりました。国も生き残りをかけ、技術革新を担う人材を育てるため、全国にDXハイスクールを設置するなど、STEAM教育に力を入れようとしているのです。

2024年入試でも、芝浦工業大学附属中学校、東京電機大学中学校、東京都市大学付属中学校などが、中堅校の中で理系進学に強い学校として受験生を増やしました。理系の勉強が好きというお子さんなら、実験室の設備やその使われ方、またDXの分野に関する取り組みなどもチェックされるといいでしょう。

伝統女子校の進化に注目

伝統女子校の進化にも注目です。コロナ禍以降、積極的なICT活用、女性活躍のためのさまざまなプログラムの導入、社会とつながる探究活動、高大連携・教育提携などを推し進めている学校が目立っています。

三輪田学園中学校はその筆頭で、立地のよさや環境のよさ、面倒見のよさなども併せ持って安定した人気を維持しています。また昭和女子大附属中学校は、数年前から力を入れてきたグローバル教育に加え、スーパーサイエンスコースを1年生から導入し、「グローバル&サイエンス」教育の先進的女子校へと進化。

跡見学園中学校は、本物に触れる教育という理念を掲げ、芸術科目も重視。知性を磨き情操を養う教育で、自律し自立する女性を育成するという創立時から変わらない教育が再認識されて人気が出ているようです。またトキワ松学園中学校はもともと「探究女子を育てる」という理念を掲げた学校で、探究の先進校といってもいいでしょう。

女子校は、女性の地位が今以上に低かった時代に、女性の自立を目的に創られた学校が多いので、現代でもそのような理念に基づいた教育を行っている学校が多く、時代の変化に素早く反応して進化を遂げられるのでしょう。

また、男子校・女子校ともに、思春期に異性の目を気にせず過ごす中で、自分らしさを発揮し、リーダーシップを育めるのも特徴の1つです。ジェンダーの時代ですが、別学を選べるのは中学受験ならでは。共学と決めつけずに一度は見学に行くことをおすすめします。

面倒見のよさ、居心地のよさ、立地のよさで人気の学校

この他に、順天中学校、城西大学附属城西中学校、日本工業大学駒場中学校、駒込中学校、淑徳巣鴨中学校、東京成徳大学中学校、桜丘中学校、麗澤中学校など、新たな時代に求められる教育を展開しつつ、生徒にとって居心地がよく、個々の生徒の可能性を伸ばしてくれることを期待できる学校にも人気が集まっています。

また立地の面では、東京の東部・北部・東京都隣接する千葉・茨城エリアは、近年若い世代の人口が増加しており、そういう人たちの受け皿として志望者が増えている学校が目立ちます。

関西や他の地域の動向

一方、関西や名古屋はまたニーズが違うようで、大学進学に強い学校と大学附属校が根強く人気のようです。入試も4科目、3科目入試が主流で、英語入試以外の新タイプ入試を行う学校はありません。

ただ、関西や名古屋でも探究的学びやグローバル教育、高大連携は広がっています。また、高校の授業料無償化の影響で、これまで公立志向だった地域でも私学の人気が出てくる可能性もあるでしょう。首都圏ほどではないにしても、一定の中学受験ニーズはあるのです。

受験軸に沿った学校選びで「最高の合格」を勝ち取る

昨今SNS での盛んな情報発信で認知度を高め、人気を上昇させているケースも多々見られます。これも、学校の広報努力なので悪いことではないのですが、最終的には自分の目で確かめることが大切です。

筆者は、これまで20年間に渡って200校以上の学校を取材し、2万人以上の受験生と親に接してきました。よかれと思って始めた受験なのに、子どもだけでなく親も「受験沼」にハマってしまうケースをたくさん見てきました。

受験が成功するかどうかは、親がどれだけ「自分の思い込みを捨てられるか」にかかっています。偏差値という尺度は合格を勝ち取るための戦略的指標と捉えて活用するにとどめましょう。何のために受験をするのか、わが家の「受験軸」を見直し、軸に沿った学校選びをすることが重要です。

中学入試は、受験日程も入試要項も複雑で、どの日程にどこの学校を受験するのか、今なお悩んでおられる人もいるでしょう。同じ学校でも、偏差値も日程によって全く違うので、一概に模試の合否判定の結果だけで併願校を決めるのは危険です。実際に出願するときには、日程ごとの応募状況や難易度も詳しく見ていく必要があります。

6年間過ごす場所を選ぶのですから、学校がどんな理念に基づき、教育を行っているのかを見極めることも大切です。

この記事の執筆者:中曽根 陽子
数少ないお母さん目線に立つ教育ジャーナリストとして、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。海外の教育視察も行い、偏差値主義の教育からクリエーティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。お母さんが幸せな子育てを探究する学びの場「マザークエスト」も運営している。『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)など著書多数。
(文:中曽根 陽子)

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