「2024年のアニメ映画ベスト10」を勝手に作成! 1位は「劇薬映画」かと思いきや見るたびに好きになれた
オールアバウト / 2024年12月26日 20時35分
2024年公開の日本のアニメ映画から選んだベスト10を紹介しましょう! さまざまなアプローチから歴史を塗り替える名作がたくさん誕生し、特に青春映画が大充実していたのです。(※画像出典:(C)2024「トラペジウム」製作委員会)
2024年もたくさんの映画が公開されました。ここでは、筆者の独断と偏見による、2024年公開の日本のアニメ映画から選んだベスト10を紹介しましょう。さまざまなアプローチから歴史を塗り替える名作がたくさん誕生していたこと、特に青春映画が大充実していたことを知ってほしいのです。
10位『PUI PUI モルカー ザ・ムービー MOLMAX』(11月29日より劇場公開中)
2021年に放送され大ヒットしたストップモーションアニメ『PUI PUI モルカー』の完全新作となる劇場版です。今回はCGアニメ作品ながら、全体的な色彩や温かみ、トコトコと走る「モルカー」の愛らしさ、さらには映画『ワイルド・スピード』シリーズに影響を受けたと思われるカーアクションなど、テレビアニメ版から引き継がれ、さらにパワーアップした魅力がたっぷりあります。さらには、劇場版独自の「ハイテクなAIのモルカー」が登場し、現代らしい「既存の仕事や概念がAIに取って代わられる」様を描くという現代的な要素も。AIが人間の脅威となる古典的なSF要素と、『アイの歌声を聴かせて』にも通ずるAIと人間の関係を考えさせる物語の両方を併せ持っています。ファンサービスもふんだんなので、テレビアニメ版『PUI PUI モルカー』を見ておくとより楽しめるでしょう。
9位『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』(12月20日より劇場公開中)
テレビアニメ『忍たま乱太郎』の劇場版で、ファンの間で高い人気を誇る小説を原作とした作品です。物語の主軸は行方不明になった「土井先生」を生徒たちが取り戻そうと奮闘するシンプルなもの。忍術アクションのクオリティーは高く、並行して展開する戦(いくさ)の状況も分かりやすく描かれていますし、シリアスな中にクスッと笑えるコミカルなシーンも多いため、『忍たま』をあまり知らない人も楽しめるでしょう。そして、土井先生と「きり丸」は共に家族を失っており、休みの日は寄り添って暮らしていることが重要です。きり丸はテレビアニメ版から10歳ながらアルバイトをしている身で、「ドケチ」であることはギャグとして描かれていましたが、それもまた彼が見つけた生きる道であること、それ以上に土井先生を大切に思う描写の数々に、ついつい涙腺がゆるんでしまいました。「小学生の女の子にとって初恋の相手」ともいわれる土井先生の優しさとかっこよさは、本作だけでも存分に伝わることでしょう。
8位『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』(各配信サービスでレンタル中)
漫画『ハイキュー!!』(集英社)を原作としたテレビアニメから続く内容で、原作屈指の人気エピソードの映画化ということもあり、劇場公開後すぐに若者たちが劇場に殺到し、累計興行収入は115.5億円という大記録を打ち立てました。バレー試合時間の1試合3セットに合わせた85分というタイトな上映時間で、相手の選手の動きを分析し予測もした戦略の上でボールを叩き込む「ロジックのある攻防戦」が描かれるおかげもあり、「ハイキュー!!」を知らない人でも楽しめるでしょう。選手たちの「筋肉の動き」や「重力」を感じさせる作画は圧巻で、2Dのアニメのはずなのに「コートを3次元的」に見せる演出も素晴らしく、「コートにいる感覚を擬似体験できる」衝撃がありました。「1試合の最初から最後までを描く」「試合の合間に回想を挟む」物語構成は『THE FIRST SLAM DUNK』にも似ていながらも、そちらとはまた別のアプローチでスポーツのアニメ映画の完成させた記念碑的な1本です。
7位『ルックバック』(Amazonプライムビデオで見放題配信中)
絶賛された読み切り漫画を原作とした作品で、劇場公開当初は119館と中規模ながら口コミ効果もあって劇場数は増加し、累計興行収入は20億円を超えました。上映時間は58分という中編ながら、アニメのクオリティーと物語の密度が半端ではなく、小学校時代に新聞で4コマ漫画を連載していた自信家の女の子と、その漫画に憧れていた引きこもりの女の子との関係性は、とても愛おしいものとして映るでしょう。その後に彼女たちが別々の道を選ぶシーン、そして日本で起きた重大な事件を連想させる、すべてを打ち砕く出来事……その無力感を目の当たりにするからこそ、創作物そのものの意義を感じられるでしょう。自らの意志での選択と望みが描かれる様は、同じく押山清高監督によるテレビアニメ『フリップフラッパーズ』でも一致していますので、そちらも併せて見てほしいです。なお、同じく藤本タツキ原作の漫画のアニメ『チェンソーマン』の劇場版『チェンソーマン レゼ編』も2025年公開予定です。
6位『数分間のエールを』(各配信サービスで販売中)
ミュージックビデオ(以下、MV)の制作に情熱を燃やす高校生と、音楽の道を諦めた教師が出会う、原作のない完全オリジナルの青春物語です。MVの(主観的な)本質、ものづくりの意義と可能性、そして青春の交錯を68分のタイトな上映時間の中で、モノローグを多用し、ワクワクする見せ方でMVの制作過程を見せ、なおかつMVそのものでストレートかつ全力で感情を「ぶつけている」ともいえる内容です。実際にMV制作集団「Hurray!」が作り上げ、劇中歌を手掛けたボカロPのVIVIが「似た境遇だった」と語るなど、作り手の気持ちや試みが劇中のキャラクターとシンクロしていることも重要でしょう。2024年は本作と併せて実写映画『ディア・ファミリー』や後述する『トラペジウム』と、夢に向かって努力した「先」、そして「人の心を動かす」ことに向き合った人たちによる傑作があり、特に本作での涙腺決壊のクライマックスは、一生忘れることはできないでしょう。
5位『化け猫あんずちゃん』(2025年2月22日にBlu-ray&DVDが発売予定)
化け猫と女の子のひと夏の交流……と呼ぶには少しためらいのある、「借金まみれでろくでなしの父親に捨てられた」と思いこみ、たびたび舌打ちをしてやさぐれている女の子と、初めこそ適当のようで次第に彼女の気持ちに向き合おうとする中年の姿は、時にクスッと笑えて、時にほっこりと癒されたりもできるでしょう。『天然コケッコー』などでダメな大人や田舎を描いてきた山下敦弘監督の作家性が見事に生かされていました。さらなる魅力は久野遥子監督が『花とアリス殺人事件』でも発揮した、実写をアニメでなぞって制作する「ロトスコープ」の手法。「自転車を盗まれて辺りを見まわし戸惑う」や「ゲームで遊んでいて小さくガッツポーズをする」など、「現実そのままの動き」をかわいい絵柄で楽しめることが大きな魅力になっていました。女の子とずんぐりむっくりとしたお化けという組み合わせから、『となりのトトロ』が好きな人にも大推薦します。
4位『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章/後章』(各配信サービスで見放題配信中)
巨大な宇宙船が上空に浮かぶ東京での女の子たちの日常が描かれる作品で、原作漫画の連載当時から東日本大震災を意識していましたが、今ではコロナ禍の現実や、世界中で戦争が起こる世界の混乱も連想させるでしょう。原作者の浅野いにおが制作にガッツリと関わっていることもあり、美麗で細やかな作画や演出など、全方位的に見どころ満載な内容に仕上がっていました。絶望的な状況に追い込まれる女の子の気持ちを痛切に描き絶賛された『前章』に比べ、『後章』は特に結末部分で賛否両論を呼びました。「世界の問題への立ち向かい方」をどう捉えるかで、大きく評価は分かれるでしょう。その上で、筆者は本作が絶望的な世界への諦観から転じた希望を示した物語であり、改めて大切にしたいと思えました。現在はAmazonプライムビデオで、映画では描かれていない場面があるテレビシリーズ版(全18話)も配信されており、その「第0話」から、映画を見た人には新たな感動と衝撃があることでしょう。
3位『きみの色』(2025年2月26日にBlu-ray&DVDが発売予定)
映画『聲の形』やテレビアニメ『平家物語』の山田尚子監督の最新作で、3人の少年少女がバンドを組む、原作のない完全オリジナルの青春音楽映画です。水彩画が動いているかのような美しいアニメの表現や、少年少女たちそれぞれの「好き」があふれ出すような優しい物語、かわいくてポップな楽曲など、それぞれの要素が「大きな出来事がほとんど起こらない」ことで、さらに魅力的に思える内容でした。劇中の多くは主人公・トツ子の主観で物語が進み、それは「秘密とうそ」「選択と過程」を肯定する物語として必然的な語り口だと思えました。見終わってみれば、「好きなことは、周りからの影響をきっかけにしつつも、自分で見つけることができる」「自分の魅力や内面は“原点”を振り返ってみることで気付くことができるかもしれない」といった発見もあるので、若者にももっと届いて欲しいです。
2位『がんばっていきまっしょい』(下北沢トリウッドやシネマサンシャイン衣山で上映継続中)
1998年に実写映画化、2005年にドラマ化もされた、同名の小説を原作としたボート競技に挑む少女を描いた作品。ある理由で頑張れなくなった主人公が、頑張るための理由を、仲間たちを通して見つけていく物語です。試合上の駆け引きを重視した作品ではありませんが、仲間たちが奮闘し、大切なことを知り成長する青春劇として「王道」の魅力が詰まっていました。キャラクターそれぞれが愛らしいのですが、さらに重要なのは繊細な心理描写と美しい風景の数々。3DCGだからこその「広がり」もまた素晴らしく、あるシーンで目の前の海がぱっと広がる様が、その時の主人公の心理と一致しており、心からの感動があります。個人的にはスポーツを扱った映画の中で最も好きな、ずっと大切にしたい作品になりました。
1位『トラペジウム』(Blu-ray&DVDが2025年2月26日発売予定)
小説を原作としたアイドルを夢見る少女の物語で、劇場公開時から話題となったのは主人公の言動の強烈さ。特に「彼氏がいるんだったら友達にならなきゃよかった」「こんなすてきな職業ないよ!」のセリフは、かつてない恐怖を覚えるほどでした。しかし、だからこそ、彼女が好きなことにとことん固執するからこそ盲目的になり失敗し、そこから大きな反省をする過程に大きな感動がありました。アニメとしての演出に手が込んでおり、特に「信号機」や「風見鶏」がキャラクターの心の動きを示していることにも、ぜひ注目してほしいです。友達であり、アイドルになることを誘われた3人の女の子たちが、どれほどに主人公のことが好きで、救われていたのかを考えてみるのもいいでしょう。筆者は見るたびに新しい発見があり、その感想も変わっていきました。
1回目「いや自分は好きだけど、賛否はめっちゃ分かれるでしょ!」→2回目「初めは主人公の露悪的なところばかり見てしまったけど、そのほかの心理にこそ奥深さがあるな」→3回目「みんな主人公のこと大好き過ぎるでしょ……やっとこのセリフのすごさに気づいた……」→4回目「これは歴史を塗り替える青春映画の大傑作だ……!」というように。
決して万人が絶賛する作品とは言えませんが、細部に制作スタッフのこだわりが詰まっており、キャラクターみんなが見れば見るほどに好きになれる(たまに「そういうとこだぞ」と主人公を叱りたくもなる)ため、噛めば噛むほど味が出る、「劇薬映画かと思いきやスルメ映画」といえる魅力に満ち満ちた1本です。
ほかにも忘れ難い、日本のアニメ映画&海外アニメ映画!
そのほかでは、『BLOODY ESCAPE 地獄の逃走劇』『傷物語 -こよみヴァンプ-』『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』『劇場版ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』『クラメルカガリ』『クラユカバ』『映画 それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』『劇場版モノノ怪 唐傘』『わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー! ドキドキ・ゲームの世界で大冒険!』『ふれる』『こまねこのかいがいりょこう』『風都探偵 仮面ライダースカルの肖像』も忘れられない作品でした。海外のアニメ映画にも、ぜひ注目してほしいです。特に『トランスフォーマー/ONE』と『ロボット・ドリームズ』は「仲良しだった2人の関係性」の尊さと切なさに満ちた作品でした。わずか20館の劇場で公開スタートした『ロボット・ドリームズ』が口コミ効果で、日本での興行収入が1億円を突破したことも、とてもうれしいです。 また、12月27日より日本公開の『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』は、監督はテレビアニメ『東のエデン』の神山健治、アニメーション制作は『攻殻機動隊 SAC_2045 持続可能戦争』のSola Entertainmentで、実際の本編でも日本のアニメらしさを感じられますが、制作の主導はアメリカであり、アメリカ映画という扱いになっています。大作映画『ロード・オブ・ザ・リング』3部作の前日譚ながら、予備知識がなくても楽しめる、戦争の残酷さとむなしさをはっきりと描く内容になっていました。
大ヒットした8位の『劇場版ハイキュー!!』と7位の『ルックバック』以外は、まだ見ていないという人も多いことでしょう。ぜひとも、年末年始で優先的に見る選択肢に入れてみてほしいです。
この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
(文:ヒナタカ)
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