フランス人の仕事始めは「1月2日」から。なぜ年末の大掃除や正月休みが存在しないのか
オールアバウト / 2024年12月30日 21時25分
フランスの年末年始は、日本に比べると非常にシンプルであっさりしています。休暇も比較的短いため、その過ごし方には日本と大きな違いがあります。
フランスの人々にとって、1年で最も重要なイベントである「クリスマス」が終わりました。日本であれば、これから年末年始の準備が本格化するところですが、フランスではそうした習慣がありません。街ではクリスマスのイルミネーションが今も輝き続けており、クリスマスの雰囲気を残しながら新年を迎えるのです。
フランス人の仕事始めは、1月2日
さらに日本と違うのは、「年末年始休暇」と呼ばれるまとまった休みが存在しないこと。クリスマス前後はしっかりと休むフランスでも、年末年始の休みは1月1日の祝日のみで、12月31日まで通常通り働くのが一般的です。つまり1月2日から仕事が始まるフランスでは、日本のような「お正月ムード」が一切なく、新年を迎えた後もすぐに日常が戻ってきてしまいます。正月休みに家族や親戚とゆっくり過ごす日本とは、かなり対照的ですね。
「今年の汚れは今年のうちに」が存在しないフランス
クリスマスを過ぎてもデコレーションを片付けない理由は、キリスト教の習慣から来ていて、クリスマスの祝祭が1月6日の「エピファニー(公現祭)」まで続くと言われているためです。ゆるゆると続くクリスマスの余韻を見て、当初は筆者も「日本と全然違うな」と感じたものでした。日本ではイベントが終わればデコレーションをすぐに片付けるのが普通で、特に年末に向けては新しい年を迎える準備が優先されます。しかしフランスではそうした文化がないため、年末を迎える際には個人でも会社単位でも特別な準備が行われないのです。
ということでフランスには、「年末の大掃除」や、「美容院に行ってきれいな状態で新年を迎える」習慣がありません。仕事先でも普通に過ごし、「ちょっと特別な週末を迎える」という感覚で大みそかを迎えます。日本の特別感あふれる年末年始とは違い、非常にあっさりとした時間が流れるのがフランスの特徴です。
日本の年末年始休暇が「うらやましい!」
ただ自営業や開業医など、人によってはクリスマス前から年始まで長期休暇を取る場合があります。休みの期間にはかなり個人差があると言えるでしょう。ちなみにフランスの学校は、年末年始を挟んだ約2週間が冬休みとなっています。その間はスキー旅行に出かけたり、家族や親戚、友人たちと楽しい時間を過ごすフランスの人々。彼らの多くは、「キャリアのために仕事をする」というよりも、「生活のため」や「プライベートを充実させるため」に働いています。そんなポリシーを持つフランス人ですから、日本の年末年始休暇の習慣をひとたび知れば、多くの人が「うらやましい!」と感じることでしょう。
実際、日本の正月文化を知るフランス人からは、「いろいろやることがあって大変だけど、年末年始にゆっくり休むのはすごく良いことだね」といった感想を聞きました。やはりフランスの人々には、「休暇は長ければ長いほど良い」という感覚が根付いているようです。
どう過ごす? フランスの年明け
ではそれほど短い年末年始のお休みを、フランスの人々はどう過ごしているのでしょうか。一般的に大みそかの夜は、恋人や友人といった親しい仲間たちと集まることが多いです。若い世代であれば友人たちとにぎやかなホームパーティーを、ご年配であればパートナーやご近所さんと自宅で穏やかな時間を過ごします。
筆者が過去に参加したフランス人同士のパーティーは、シャンパンやスナック菓子、スティック野菜などが用意された「家飲み」に近い雰囲気で行われました。集まった人々はカップルや友人、そしてその同僚たち。日付が変わる直前には、皆で大騒ぎしながらカウントダウンを始めたことを覚えています。
一方、パートナーと穏やかに元日を迎える場合は、いつもより少しだけ豪華なディナーを用意します。ただフランスの人々は、クリスマスで力を使い果たしてしまうせいか、大みそかから元旦にかけては無理をしない傾向があるようです。
その際に活用するのが、レストランのテイクアウト料理。「レヴェイヨン(大みそか)ディナー」と呼ばれるメニューでは、生牡蠣やフォアグラ、サーモンのムニエルやローストチキンなど、クリスマスディナーと似た料理が並びます。
とはいえ、年末年始の料理に大きな決まりはありません。フランスの人々は食事や習慣よりも、「誰と過ごすか?」を重要視しているイメージです。
正月ボケも正月太りもない
1月2日からは、日曜日でなければお店もレストランも全てが元通りになります。フランスの年末年始休暇は元日のみ。よって、日本のような「正月ボケ」や「正月太り」は存在しないと言えます。もちろん、お年玉や初詣といった特別なイベントもないので、日本人にとっては少し寂しい光景が広がるかもしれません。
「欧米のクリスマスは家族と過ごす」とは、日本でも広く知られた事実です。ところがフランスの正月は日本と逆で、たった1日の祝日で全てが終わってしまいます。1月6日の「エピファニー(公現祭)」には「ガレット・デ・ロワ」と呼ばれるケーキを食べる習慣があるものの、しっかりとした休暇を挟む日本に比べれば、新年が本格的に始まったという実感を得にくいのが正直なところです。
そんな習慣が根付いているフランスの人々にとっては、年末年始休暇がわずか1日だけというのはごく当たり前のこと。多くの人が「クリスマス前から休めるのであれば休みたい」と感じていますが、実際にはカレンダーの決まりに従わざるを得ない、というのが本音のようです。
この記事の筆者:大内 聖子 プロフィール
フランス在住のライター。日本で約10年間美容業界に携わり、インポートランジェリーブティックのバイヤーへ転身。パリ・コレクションへの出張を繰り返し、2018年5月にフランスへ移住。2019年からはフランス語、英語を生かした取材記事を多く手掛け、「パケトラ」「ELEMINIST」「キレイノート」など複数メディアで執筆を行う。
(文:大内 聖子)
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