「平均貯蓄額1904万円」の真実!60歳以上でも実態は…?
オールアバウト / 2025年1月7日 21時20分
2024年5月に発表された総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)」によると、2023年の平均貯蓄額は1904万円(二人以上の世帯)と昨年から3万円の増加。しかし平均貯蓄額は、生活実感とかけ離れていると捉える人も少なくありません。
平均貯蓄額からは見えない家計の実態を深掘り!
2024年5月に総務省統計局が発表した、2023年調査の「家計調査報告(貯蓄・負債編)」では、二人以上世帯の平均貯蓄額は1904万円で、前年の1901万円から3万円、0.2%の増加となりました。貯蓄保有世帯の中央値※は1107万円ではあるものの、年代によっては、あまりにも実感とかけ離れた数字で、貯蓄意欲が湧くどころか、「もっている人はもっているんだね」という感想で終わってしまうでしょう。しかし実態としては少し異なり、60歳以上でも、純粋な貯蓄額(貯蓄-負債)は972万円であると知れば、自分の老後資金は大丈夫なのか、今から、少しでも多く貯蓄をしなければならない、と気づくのではないでしょうか。
発表されたデータから、順番に見ていきましょう。
※中央値とはデータを大きさの順に並べたときに真ん中にくる数字のことです。
40歳未満だけで見ると平均貯蓄額は782万円
まずは、年代別の平均貯蓄額です。過去10年の年代別の平均貯蓄額の推移ですが、傾向としては変わらず、年齢が高いほど貯蓄額は多くなります。50代の平均と全体の平均がほぼ同じように推移し、60代以上と40代以下で二分されているのがわかります。平均貯蓄額1904万円と聞くと驚いてしまいますが、40歳未満の平均貯蓄額は782万円、実情は700万~800万円くらいなのではないでしょうか。
60代以上の世帯は、長い時間をかけてお金を貯めてきた成果ともいえますし、退職金などの一時金によって貯蓄額が増えたということもあるでしょう。40歳未満の世帯は、収入が思うように伸びないばかりか、出産・育児などで世帯年収が減り、貯蓄に回せるお金がないというケースもあるでしょう。40代になって平均貯蓄額が1000万円を超えるので、若年層は、これを目標に貯蓄計画を立てるといった考え方をしてもいいのではないでしょうか。
40歳未満の住宅ローンなどの負債は全年代の中で最大
平均貯蓄額とともに発表されるのが「負債」。2023年の負債平均額(負債ゼロ世帯も含む)は655万円で、前年から79万円、13.7%の増加。負債内容のほとんどが住宅購入のための住宅ローンで、負債額の約9割を占めます。負債額も年代別に見てみると、貯蓄額とは反対に、若年層が多く、40歳未満で1757万円と全年代の中で最大となっています。負債保有世帯は全体で39.3%。40代が67.9%と最も高い割合を示しています。負債保有世帯のみの負債平均額は1667万円で、40歳未満では2754万円、40代で2048万円、50代で1269万円、60歳以上で710万円という結果です。
年代が上がるほど住宅ローンの返済が進み、負債が減るのは当たり前かもしれません。
40歳未満については、貯蓄を見ると前年に比べ9万円、1.1%の増加でしたが、負債は前年に比べ237万円、9.4%の増加となっています。住宅・土地価格の高騰に伴い、住宅ローンの借り入れが増加傾向にあると思われます。
本当の貯蓄額はいくら?「貯蓄-負債」だと50歳未満はマイナス!
家庭の資産というと金融資産、つまり貯蓄や投資の金額に目が奪われがちですが、住宅ローンなどの負債があれば、それもマイナスの資産として考えておくべきです。不動産を所有していれば、活用して資産に組み込むことができますが、負債が残っている間は、不動産の評価を資産として捉えることはできないでしょう。つまり、家庭の本当の資産としては「貯蓄-負債」が純粋な貯蓄額ということがいえます。これまでのデータをもとに、年代別の純粋な貯蓄はどうなっているのかを見てみましょう。
全体での平均貯蓄額は1904万円ですが、そこから負債額655万円を差し引くと、純粋な貯蓄額は1249万円です。これを年代別に見ると、40歳未満では貯蓄額が782万円なのに対して、負債は1757万円。差し引き975万円のマイナスで債務超過の状態です。住宅ローンがいかに重いものかといわざるをえません。
しかし、これもまだ実態に即していません。なぜなら負債がない世帯も含めた平均だからです。負債がある世帯だけの平均でまとめたが次の表です。
負債がある世帯だけで見ると60歳以上も安泰ではない!
負債がある世帯だけを見ると、全体平均でも様相が変わり、貯蓄額は1269万円に対し、負債は1667万円。平均でもマイナス398万円の債務超過なのです。40歳未満では、マイナス1933万円と大きな借金を抱え、貯蓄を増やせない状況にあるといえるでしょう。50歳以上で債務超過は解消されてくるものの、60歳以上が実は深刻で、貯蓄額は一見多いように見えますが、負債がある世帯の貯蓄額は1682万円、負債は710万円残っているため、純粋な貯蓄額は972万円という結果に。
会社員であれば、退職金で住宅ローンを完済し、残りは老後資金にと考える世帯が少なくありませんが、定年退職後も負債が残る世帯も少なくありません。定年退職後も働いて収入を得ること、負債をできるだけ早く返すこと、そもそも身の丈以上の負債を抱えないことなど、このデータから考えておくべきことが見えてくるのではないでしょうか。
総務省の「家計調査報告」に限らず、「平均貯蓄額はいくら?」といったニュースをよく目にしますが、全体の数値は大きくなりがちです。しかしデータを深掘りしていくと、実態としては、それほど喜ばしいことでもなく、驚くべきことでもなく、どの年代にとっても、深刻な問題が見えてきます。
人と比べる必要はまったくありませんが、こうしたデータをひもときながら、わが家の資産はどうなっているのか、一度洗い出しをしてもいいのではないでしょうか。
文:伊藤 加奈子(メディアプロデューサー、ファイナンシャルプランナー)
マネー誌『あるじゃん』や住宅関連誌、ライフスタイル誌などの数多くの媒体を立ち上げたメディアプロデューサー。マネープランクリニックの執筆を担当し、実際の家計の取材に基づいた「お金の話」や「貯蓄の話」の発信を行う。
(文:伊藤 加奈子(メディアプロデューサー、ファイナンシャルプランナー))
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
60歳で友人がいなく、周りが「老後資金」をいくら貯めているのか分かりません…60代であれば貯蓄「1000万円」はあるものでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年12月29日 23時0分
-
「教育費は想定通りにならない」子供3人を国公立大学に入れたい40代パパにFPが伝えたい注意点
MONEYPLUS / 2024年12月29日 18時0分
-
40代独り身で貯蓄はゼロ……結婚する気もないし、年金をもらいつつ定年後も「働き続ければ」どうにかなりますよね?
ファイナンシャルフィールド / 2024年12月29日 8時40分
-
老後の「お金の使い方」理想と現実はどう違う?70歳以降の「貯蓄額」平均はいくら?
ファイナンシャルフィールド / 2024年12月28日 4時10分
-
老後資金として「2000万円」貯めるのは不可能ではないですか?今25歳ですが、貯金は「100万円」しかありません…。
ファイナンシャルフィールド / 2024年12月14日 23時30分
ランキング
-
1NHKが「紅白歌合戦」で受信料に言及のびっくり "スタエン抜き"でも盛り上がった印象だが…
東洋経済オンライン / 2025年1月8日 13時0分
-
2三井住友銀行「初任給30万円」に引き上げに氷河期世代から恨み節…《実績あげた社員に還元して》の悲痛
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月8日 15時3分
-
3藤井聡太七冠、叡王奪還に向け好発進 叡王戦本戦トーナメント1回戦勝利 8冠独占目指す
産経ニュース / 2025年1月8日 17時44分
-
4松屋『3種ソースのグラタンハンバーグ定食』販売休止 「想定を超えるご注文を頂き…」
ORICON NEWS / 2025年1月8日 12時37分
-
5元ラブホテル従業員が明かす“不思議な出来事”。女性客から「仕事が終わったら、会いませんか?」誘いに応じると…
日刊SPA! / 2025年1月8日 15時48分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください