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トランプ政権を軸に「2025年の国際情勢」を予想。行き当たりばったりの日本は渡り合えるのか

オールアバウト / 2025年1月9日 21時25分

トランプ政権を軸に「2025年の国際情勢」を予想。行き当たりばったりの日本は渡り合えるのか

1月20日、第二次ドナルド・トランプ政権が発足する。台風の目となり得るトランプ政権を軸に、2025年の国際情勢はどうなるのか考察した。(サムネイル画像出典:Anna Moneymaker / Shutterstock.com)

2025年は、おそらく近年まれに見る激動の1年になりそうだ。

まずは日本だ。7月までに、参議院議員選挙が行われる。2024年10月に石破茂政権が誕生したばかりだが、1月24日からは通常国会が開催され、その後には参院選が控え、ひょっとすると衆議院議員総選挙も同時に行われるのではないかとの憶測も出ている。現在、少数与党として劣勢にある自民党の石破首相らが、与野党の主要政党による「大連立」の可能性にまで言及しており、そうなれば日本の政治は一変する可能性もある。

近年まれに見る“大きな変化”の可能性

世界でも、近年なかったような“大きな変化”が起きる可能性が高い。というのも、アメリカで1月20日に第二次ドナルド・トランプ政権が発足するからだ。2017年から2021年までの第一次トランプ政権でも世界を驚かすような予想外の動きが見られたこともあり、第二次政権も世界で台風の目になると予想される。そしてその行方を世界中が戦々恐々として注目している。

そこで今回は、2025年の世界情勢について、何が起きそうなのか分かりやすくひも解いてみたい。

就任後、本当に戦争は「24時間」で終わるのか

まずトランプ氏の公約を見ていこう。最初はウクライナ紛争だ。トランプ氏はこれまで、2022年から続いているロシアとウクライナの紛争を「24時間で終わらせる」と主張してきた。トランプ氏は元々、ウラジーミル・プーチン大統領とは直接対話をしてきた関係性があり、一方で、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領とも第一次政権時からやりとりをしてきた。

とは言っても、トランプ氏は当時ゼレンスキー氏を「脅迫」していた。トランプ氏は、当時の選挙戦でライバルだったジョー・バイデン大統領が、息子のハンター氏と一緒にウクライナで汚職をしていた可能性があると主張して、ゼレンスキー氏に国内で捜査するよう要求した。さもないとアメリカからの軍事支援を中止すると脅していたのである。

トランプ氏は今回の選挙戦でも、ウクライナへの軍事支援をちらつかせてゼレンスキー氏に停戦の譲歩を迫ると見られている。ゼレンスキー氏も、アメリカからの支援なくしてロシアとは戦えないので、アメリカの「停戦要求」には従う可能性が高い。同時に、トランプ氏はプーチン氏にも停戦するよう持ちかけると予想されている。

そしてその陰では、トランプ氏と信頼関係を築きつつあるイタリアのジョルジャ・メローニ首相が鍵を握る可能性がある。メローニ氏は以前、「ウクライナ支援疲れ」を吐露したこともあり、本音では停戦を進めたいはずだ。

ウクライナ紛争には4万人以上とも言われる死傷者が出ているが、もし停戦となると、少なくとも死傷者は激減するだろう。もし継続的な停戦が実現できたらそれだけでも多くの人を救うことになり、トランプ氏再登場のポジティブな効果が出ると言えなくもない。

イスラエルとパレスチナ、中東の今後は

さらに現在続いている世界的にメジャーな紛争といえば、イスラエルとパレスチナの問題である。イスラエルは、2023年に同国に対して大規模テロを実行したイスラム組織ハマスの幹部を次々と殺害して一掃したが、テロの際にハマス側がイスラエルから誘拐していった多くの人質はまだ解放されていない。その交渉も、トランプ政権発足後には進む可能性がある。トランプ氏が、生き残った数少ないハマス幹部らの拠点であるカタールやトルコといった国にプレッシャーをかけることで、イスラエルが有利になるような交渉が行われるはずだ。

テロ後のイスラエルによる報復攻撃で、パレスチナ自治区ガザでは4万人以上が巻き添えで殺害されているが、この紛争もトランプ氏が仲介することで停止する可能性が高い。そうなれば、ガザ住民の7割を占める女性と子どもたちが、これ以上、報復によって巻き添えで死亡することはなくなるだろう。

また中東では、2023年に独裁政権だったアサド政権が崩壊したシリアや、イスラエルと交戦状態にあるイランの動向にも注目だが、それらもトランプ政権が鍵を握っている。シリアに安定した親米政権が生まれるか、またイスラエルが2025年内に爆撃など行う可能性が高いイランの動きについても注視されている。

トランプ氏、北朝鮮への接触は? 韓国政界の混乱はどうなるか

アジアでは、北朝鮮の金正恩総書記が国際的にスポットライトを浴びることが考えられる。というのも、第一次政権時に金総書記と直接対談をしたトランプ氏が、再び金総書記に接触することは間違いないからだ。注目は金正恩が核開発を止めることができるかどうかだが、それがある程度実現すれば、トランプ氏が北朝鮮側に提示するアメリカのバックアップによる北朝鮮の経済開発が動き始めるかもしれない。もちろん、中国やロシアなどは、北朝鮮がアメリカになびくことを阻止しようとすると思われるので、そう簡単には進まないだろうが。

お隣の韓国では、2024年12月、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が国内に非常事態を宣言する「特別戒厳」を発表し、国会ですぐに却下されたが、その行動が憲法違反に当たるとして弾劾訴追された。すでに大統領の職務は停止しており、逮捕される可能性も高まっているが、今後、韓国政界が混乱し続ければ、北朝鮮がトランプ氏と接触をすることで朝鮮半島が緊張するだろう。韓国も指をくわえて見ているわけにはいかないからだ。

また韓国の政権交代によって、現在の親日政権から反日政権に変わるという見方が大勢を占める。そうなれば韓国は日本に対する挑発などを激化させるだろう。それによって国民の支持を固めたいと考えるはずだ。

最も注目されるのは、米中関係

こうした国際情勢の中でも、2025年の最大の注目は、アメリカと中国の経済摩擦だろう。中国は最近、経済低迷が著しい。中国経済を支えてきた不動産業界と、製造業などの輸出業界という両輪がどちらも停滞しており、不動産では不良債権などが手をつけられない規模に膨れ上がっているとされ、輸出数量も2021年以降に減少が続いている。

さらにトランプ氏は就任後、中国からの全輸入品に10%の追加関税を課すと宣言している。中国の出方によってはさらに高まるとも示唆し、中国側からも制裁措置を取るという発言が出ている。またハイテクや半導体の産業などでアメリカの中国排除も続き、泥試合になる可能性がある。

さらに中国と言えば、日本人にも関心が高い「台湾有事」が起きるかどうかも注目されているが、2025年に台湾有事が起きると考えている専門家は少ない。ただ日本に対して行っているのと同じく、引き続き、台湾周辺で戦闘機や艦艇、民間の船舶などによってプレッシャーをかける活動は続くだろう。

トランプ政権は、中国から入国禁止になっているマルコ・ルビオ上院議員が国務長官に指名され、米軍特殊部隊出身で中国に厳しい姿勢を取る、元ニュース司会者のピート・ヘグセス氏が国防長官に指名されるなど、過去まれに見る“対中タカ派”だらけが集まることなる。外交や安全保障面でも、両国の緊張関係が高まることは必至だ。

日本は渡り合っていけるのか

日本は、こうした中国や北朝鮮、韓国などの動きを見ながら、同盟国だが予測不能なトランプ大統領率いるアメリカとの関係も鑑みて、自国の利益を追求できるのだろうか。トランプと良好な関係を築いていた安倍晋三元首相はもういない。これまで行き当たりばったりの言動を見せ、ある意味でいろいろと予測不能な部分もある不安定な石破茂政権が、はたして伍(ご)していけるのか。

2025年、日本人はこれまで以上に日本のリーダーをしっかりと見定める必要があるだろう。さもないと、荒波の中で漂流することになりかねない。

この記事の筆者:山田 敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。

X(旧Twitter): @yamadajour、公式YouTube「スパイチャンネル」
(文:山田 敏弘)

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