大統領の逮捕、悲惨な航空機事故による影響は韓国エンタメにも…「2025年のK-POP」はどうなる?
オールアバウト / 2025年1月16日 21時25分
2024年末に起きた大統領による内乱や航空機事故により、いまだ不安定な情勢が続いている韓国。その影響はK-POPにも? 2025年のK-POPはどうなるのか考えます。
M世代の韓国エンタメウォッチャー・K-POPゆりこと、K-POPファンのZ世代編集者が韓国のアイドル事情や気になったニュースについてゆるっと本音で語る【K-POPゆりこの沼る韓国エンタメトーク】。韓国エンタメ初心者からベテランまで、これを読めば韓国エンタメに“沼る”こと間違いなし!
今回のテーマは2025年のK-POP予想……のはずでしたが、年が明けても近年まれに見る先行きが不透明な状況の韓国。政治や社会情勢がエンタメ、K-POPに与えうる影響とは?
波乱の2024年、2025年はさらに激動の年に!?
編集担当・矢野(以下、矢野):2025年になりました。今年もよろしくお願いします! 2024年末の韓国は大統領による内乱や大きな航空機事故もありました。少なからずエンタメ業界にも影響が出ていたようですね。
K-POPゆりこ(以下、ゆりこ):韓国にとって2024年は波乱の年だったと思います。12月3日夜に尹錫悦大統領が突然「戒厳令」を発令。反発する国会議員たちの迅速な行動により一夜にして戒厳令は解除となったのですが、年が明けてからもしばらくはこう着状態が続きました。そして1月15日に内乱を首謀した疑いで逮捕。韓国で現職の大統領が逮捕されるのは初めてのことです。
矢野:僕と同世代の若者がデモに参加している映像を見ました。それもK-POPグループのペンライトを持って。エンタメと政治が地続きであると実感しました。
ゆりこ:初めは戒厳令によって番組収録やイベントが中止となってしまったアーティストのファンたちが、ペンライトを持って抗議したことから始まり、その後さまざまな人たちへ広がっていきました。
矢野:少女時代のデビュー曲『Into The New World』がデモのテーマソングになったことも印象的でした。その歌詞に新しい世界、変化を望む思いを込めたんですよね。ゆりこ:実は「タマンセ(※『Into The New World』の韓国語略称)」がデモや抗議活動に使われたのは今回が初めてではありません。しかし改めて聞くと攻めている曲ですよね。18年前のガールズグループのデビュー曲としてはかなり革新的でした。発売当時の日本を思い返すと「モテ」「愛され」ブームでしたから。自立と変革を歌う曲は韓国という土壌だったからこそ生まれ、支持されてきたのかもしれません。
※韓国語タイトル「タシ マンナン セゲ(また出会った世界)」、略して「タマンセ」と呼ばれる
矢野:「未来を変えていくのは自分たちだ」という強い意思を感じます。そして12月29日に起こってしまった悲惨な航空機事故。2025年1月4日までは韓国全体が「服喪期間」として年末年始の特番やイベントが休止、延期となってしまいました。
年末年始の音楽番組・イベント、新人デビューにも影響を与えた悲惨な事故
ゆりこ:航空関連では韓国史上最悪の事故です。大惨事がゆえに、年末の風物詩、地上波各局がドラマ関連のスタッフや役者を表彰する『演技大賞』、バラエティー関係者やタレント、芸人にスポットライトを当てる『芸能大賞』、そしてK-POP特番『歌謡大祭典』も事前収録して放送延期に。年明けに日本で実施された「第39回 Golden Disc Awards」のレッドカーペットも中止され、生中継から録画放送に切り替わりました。韓国側はもちろん、日本側で放送や配信を予定していた企業も対応に追われたことでしょう。矢野:いろいろなアーティストのSNSアカウントに追悼文と、当分コンテンツ公開を自粛するというお知らせが投稿されていました。SEVENTEENのユニット・ブソクスン(BSS)やIVEなどカムバックを延期したケースもありましたね。
ゆりこ:JYPエンターテインメント(以下、JYP)から元日にデビュー予定だったボーイズグループKickFlipも正式デビューは1月20日になりました。1月6日に先行公開された『Umm Great』は英語タイトルも韓国語タイトルも「ウン クレ」と近い発音でひねりが効いている上に、キャッチーな良曲でした。デビュー日がずれたからといって彼らの前途には悪影響ナシと見ていますが、それでも直前の変更には戸惑ったことでしょう。
矢野:大変な最中にも日本の『第75回NHK紅白歌合戦』や『第66回 輝く!日本レコード大賞』に出演してくれたグループも複数いました。皆さん胸元に黒い喪章を付けてパフォーマンスしていた姿が印象に残っています。
ゆりこ:それぞれいろいろな思いを抱えながら出てくれているのだろうなと思いながらテレビを見ていました。
矢野:あらゆる変更や中止は事故の犠牲者やそのご遺族、関係者の心情を考えると当然のことなのですが、やはりエンタメ業界は平和と安全がベースにあってこそ成り立つものだということを再認識しました。
いよいよ本題!? 年始から大波乱の2025年K-POP業界の動向予想
ゆりこ:忘れがちなのですが、兵役に行った人たちが予定通り除隊して活動再開できるのだって平和が守られてこそ。ああ、本当は今回「2025年のK-POPシーン予想」を話す予定でしたよね。矢野:はい、昨年のミーティングではそう決めましたね。しかしその後にさまざまなことが起き過ぎました。
ゆりこ:“韓国エンタメウォッチャー”としては情けないのですが、最初から白旗を上げます。今年ほど予測不可能な年はないかもしれない。これまでだってK-POPを含めた韓国エンタメ業界は毎年ドラマティック過ぎるほどドラマティックでしたし、良くも悪くも常に「えー!?」という何かが起こってきました。でも本国での事前情報やうわさ、過去のデータを元に、大まかな流れというか「今年はガールズ(orボーイズ)の年かも」「このあたりのグループが盛り上がりそうだな」ほどのざっくりとした部分は見える年もあるんです。
矢野:しかし今年はそれが見えない、ということですね?
ゆりこ:はい。あえて言語化するとしたら「妙な静けさ」と「グラグラとした不安定さ」が同居するような状態が続くかもしれない。その理由は先ほどお話しした政局・社会不安に加え、昨年から続く大手事務所の契約トラブルにあります。
矢野:昨年はさまざまな事務所で契約絡みの騒動が起きた一年でした。未解決のものも多く、K-POP界は揺れています。そしてそこに社会不安も重なり、事態は長期化しそうですよね……。
ゆりこ:12月の戒厳令の解除直後は「国民の手で民主主義を守り抜いてすごいな」「さすが韓国!」と思いながら見ていました。でも韓国の知人たちと話したり、日々現地のニュースを見たりする中で、それが他国の傍観者による楽観的過ぎる感想だったと反省しました。大統領を引きずり下ろして、他のマシな人に取り替えれば即解決! という簡単な話ではないんですよね。韓国に住む人々の意識、社会全体にこびりついた「不信感」と「ダメージ」は思っていた以上に根深く大きい。エンタメ業界にも何らかのマイナス影響はあると覚悟したほうが自然だと思えます。
矢野:尹氏の弾劾裁判が本格的にスタートし、5月中旬までに罷免するか否かを判断するそう。大統領官邸周辺の雰囲気は物々しく、日本でも連日のように揺れる韓国国内の様子が報じられています。一連の騒動が沈静化するまでにはかなりの時間がかかりそうです……。
キーワードは「リスク分散」 新人グループが多数デビューする年に
ゆりこ:今の状況からかろうじて予想できるのはエンタメ企業の「リスク分散思考」が強まるだろうということ。特に大手事務所は数年に一度、厳選された秘蔵っ子のみをデビューさせて、多額のプロモーション費用を注ぎ込むという従来の形から、より短いスパンで複数のグループをどんどんデビューさせていく方向に切り替えるかもしれません。まずファンの反応を見て、中でも芽が出そうなグループに集中投資するなどですね。これは財力とマンパワーのある企業に限られますが。矢野:1つのものに集中的に投資するのではなく、いくつかの対象に、何回かに分けて投資するのはリスク分散の鉄則ですよね。今年はSMエンターテインメント(以下、SM)からaespa以来5年ぶりのガールズグループがデビューするという報道を見ました。HYBE傘下レーベルからも複数デビューが予定されているとか。そして先ほど触れたKick Flip。その他にも出てくる可能性はありますよね。ゆりこ:SMの新ガールズグループは先日映像がお披露目されました。2月に『Hearts2Hearts』という名前でデビュー予定です。そして、YGエンターテインメントもボーイズグループを準備中という報道があります。大手やその傘下企業から続々新人が出てくる年になりそうです。JYPから傘下レーベル「INNITエンターテインメント」のローンチもありました。アイドル中心ではなく“エンターテイナー”を育てるというコンセプトらしいので、K-POP業界にどこまで食い込んでくるかは未知数ですが、一種のリスク分散のための挑戦ともとらえられます。一方でリスクヘッジとは真逆のアプローチで、かつての防弾少年団(BTS)のように中小事務所が社運をかけて出した渾身のグループが大化けすることもあるなと思っていて。そうなったら面白いな、という希望的観測です。
矢野:新人グループにとっては過酷な時代にも思えます。若くて目新しいから、大手事務所だから、有名プロデューサーが手掛けているからといってヒットは保証されない。新人だからと注目される期間が年々短くなっている気もしています。昨年もデビュー5年目の「aespaの年」と言えるほどでしたし、SEVENTEENも相変わらず強かった! それに年末には G-DRAGONさんまで復活。何といっても今年はBTSメンバーが全員そろうのですから。先輩たちがとても強い。
不安定な社会に求められるのは「安心感」と「信頼」
ゆりこ:今年は“BTS復活イヤー”ですからね。そこは今年の大きな希望。早速J-HOPEさんのソロツアーが発表されて話題になっていますが、全員そろっての大規模ワールドツアーは2026年になる可能性がうわさされています。とはいえ、今年中も何かしらのグループ活動があると期待しています。あえて詮索せずに発表を待って素直にギャーっと喜びたい(笑)。あと忘れてはなりません。秋にはEXOも全員除隊します。一部メンバーが古巣SMとの関係に課題を抱えていますが「Asia Artist Awards 2024」ではリーダーのスホさんが、先日の「SMTOWN LIVE 2025 in SEOUL」でもチャンヨルさんが今後のカムバックを匂わせる発言をしていたので期待したいです。矢野:リップサービスでないことを願います。最近のメンバーの活動や言動を見ているとBIGBANGもツアーがあるかもしれないですね。2NE1もソウルでのアンコール公演を発表しました。
ゆりこ:以前とある報道番組でエコノミストが「不況や不安定な社会で売れるのはおなじみのブランドや定番商品」だと言っていました。『紅白歌合戦』をきっかけに日本でB’z人気が再燃しているのも、世相と無関係ではないかもしれないですよ。そういった側面から、2025年は歴代王者たちの帰還タイミングとしてはベストではないでしょうか。事務所としても名前を売るためのプロモーション投資が不要なのでローリスクなありがたい存在です。
矢野:新人グループが多数披露される上に、人気のベテラングループが戻ってくる……ファン視点ではかなり面白いことになりそう。半年後の予想もつかない分、楽しみです。
ゆりこ:あと、やはりNewJeansの契約問題が解決しない限り、K-POP全体にモヤがかかった状態は続くと見ています。今韓国ではそれ以上の社会問題が起こり続けているので一時期の加熱報道は落ち着きましたが、ふたをして見て見ぬふりして次へ進める問題ではないと思います。
矢野:他のアーティスト、他社のスタッフ、韓国エンタメ業界に関わる人すべてにとって「他人事」ではないですよね。そして同じような火種がどこかでくすぶっているかもしれない。
ゆりこ:約15年前も東方神起のメンバー脱退がきっかけとなり「奴隷契約」と呼ばれていたアーティストたちに不利な契約を改善すべく韓国の法律が変わりました。2015年には事務所による特定アーティストに対する活動妨害、放送局などへの圧力がけを禁止する、通称「JYJ法」も成立しています。ただ実際のところ、それらが守られていたとはいえないのですが……。いずれにしてもNewJeansの件も韓国芸能界の慣習や法律をも変える可能性があります。
矢野:大きな産業へ成長したK-POP界は、従来のシステムを見直し、不具合があれば必要に応じて取り換えるなどして、新しい“K-POPスタイル”を構築していく必要がありそうです。ただ、いずれにしても、2025年もK-POPを楽しむことに変わりはありません。今年はどんなK-POPシーンに出会えるのか、わくわくしています!
【ゆるっとトークをお届けしたのは……】
K-POPゆりこ:韓国芸能&カルチャーについて書いたり喋ったりする「韓国エンタメウォッチャー」。2000年代からK-POPを愛聴するM世代。編集者として働いた後、ソウル生活を経験。
編集担当・矢野:All Aboutでエンタメやメンズファッション記事を担当するZ世代の若手編集者。物心ついた頃からK-POPリスナーなONCE(TWICEファン)&MOA(TOMORROW X TOGETHERファン)。
(文:K-POP ゆりこ)
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