1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

PTAを任意加入にすると「模試」が行えない!? 教員が監督謝礼を受け取るためのナゾ仕組み

オールアバウト / 2025年1月17日 21時25分

PTAを任意加入にすると「模試」が行えない!? 教員が監督謝礼を受け取るためのナゾ仕組み

高校のPTAは小中学校のPTAに比べ、会計規模が大きくなる傾向があります。高校で実施する模試のお金をPTAの会計で処理する自治体もあり、なかには「PTAを任意加入にしたら模試ができなくなる」という理由で、改革が進まないケースもありました。

これまであまり注目されてこなかった高校のPTA。小中学校のPTAと比べると、保護者が労働力を求められる機会はぐっと減りますし(代わりに教職員の労力負担が増すものの)、役員の押し付けなど保護者間のトラブルも比較的少なく、一見平穏です。

でも実は、高校のPTAでは保護者の金銭負担が大きく増す傾向があります。自治体や学校にもよりますが、保護者(1家庭)がPTAに年間5ケタのお金(数万円)を納めるケースも珍しくありません。

小中学校のPTA会計を担うのは役員の保護者が多いのに対し、高校PTAのそれは学校の事務職員が担うことが多く、会費(保護者分)は学校徴収金と一緒に徴収されるケースが大半です。

また高校のPTA会計は、空調費(エアコン関連)や施設設備費、図書費、樹木剪定(せんてい)費など、学校運営の費用が多くを占めることもよくあります。それらの費目は、PTAの一般会計に含まれる場合もあれば、「空調費会計」「施設設備費会計」など一般会計とは別の会計枠で処理される例も見られます。

慣習としてなんとなく受け入れられてきましたが、本来は公費で賄うべきものばかりでしょう。小中学校のPTAでも学校に備品を買ってあげること(寄付)はいまだによくありますが、高校ではそういった用途の額が、1~2桁アップするイメージです。

ただし、高校PTAの会計処理は小中学校PTAのそれと比べ、自治体や学校ごとの違いが非常に大きいうえ、保護者が関わることが少ないため実態をつかみづらくなっています。筆者もまだ手探りですが、分かってきた部分から、少しずつ書いていきたいと思います。

都道府県ごとに大きく異なる「模試」の会計処理方法

まず今回取り上げるのは、高校PTAで扱う「模試のお金」についてです。筆者自身が以前経験した高校のPTA(千葉県)では模試の会計は見たことがありませんでしたが、実は全国あちこちの高校PTAが「進路指導費会計」などとして模試のお金を扱っています。

筆者がそれを知ったのは2022年でした。インボイス制度導入への反対活動をする方から「インボイスの登録をしている県立高校PTAがある」と聞き、なぜそんな必要があるのか疑問に思い高校に問い合わせたところ、「模試」や「購買部」のお金をPTAで扱っていることが分かったのです(「購買部」のお金については改めて取り上げます)。

模試のお金をPTAで扱っていたのは、広島県の県立高校でした。事務職員の方の話によると、その高校ではPTAの名前で生徒(保護者)から模試費用を集め、そこから当日試験監督をする教員への謝礼や光熱費などを除いた額を業者に納めているとのこと。扱う額が大きいため(年間8桁!)PTAとして税理士を雇っており、インボイスはその税理士の勧めで登録した、ということでした。

模試費用のうち、教員に払う謝礼のみをPTAで扱う高校もあります。山口県のある高校でPTA会計を経験したという事務職員の方によると、その高校では生徒(保護者)から集めた模試費用を直接業者に納めていたそうですが、このうち試験監督をする教員に払われる謝礼のみ、PTAの会計を通していたということです。

なぜPTAを通すのか。山口県の高校では「謝礼を教員に支払う際に源泉徴収(税務署への届け出)が必要だから」とされているそうですが、この辺りのルールは都道府県など自治体によって異なるようです。そもそも模試のお金をPTAを通さず取り扱っている高校も、全国にはたくさんあります。

『隠れ教育費』などの著書がある学校事務職員・柳澤靖明さんによると、教員が試験監督の仕事を受けること(兼職)の可否は、任命権者(都道府県の教育委員会など)が決めているのだとか。

PTAを任意加入にしたら「模試」が行えない?

なお、島根県の県立高校でPTA会長をする男性は、「(強制加入をやめて)任意加入にしたい」と校長に話したところ「そんなことをしたらPTAに入らない家庭が出て、模試を行えなくなってしまうから(任意加入は)ダメだ」と言われたそうですが、さすがにこれはおかしいでしょう。

PTAは学校の下部組織などではなく、ただの任意団体です。PTAへの加入を強制しないと模試が行えないなんて、本来あり得ない話ではないでしょうか。

柳澤さんによると、実は小中学校でもやや似た話はあるといいます。

「英検や数検、漢検など民間の検定試験を小中学校で行う『準会場制度』の場合も、検定試験の代金を業者に支払う際、経費(検定料の集金や監督代行などにかかる費用)として、学校の取り分を残すことができるので、そのお金を活用しているという事例は聞いたことがあります」

高校の模試も、小中学校の検定試験も、なんだかおかしな仕組みです。教員への試験監督の謝礼をなくせ、と言いたいわけではありません。PTAを通したりしなくても、先生たちには業者からきちんと対価が支払われるべきですし、PTAは任意加入を前提に運営される必要があります。

模試や検定試験、監督謝礼、購買部などの会計処理については、まだまだ不明な点があります。詳しい事情をご存じの方は、筆者まで情報を寄せていただけると大変喜びます。

この記事の執筆者:大塚 玲子 プロフィール
ノンフィクションライター。主なテーマは「PTAなど保護者と学校の関係」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』ほか。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。
(文:大塚 玲子)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください