1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

日本とは異なる、フランスの息苦しい「おひとりさま」事情。“ソロ活”をしている人はどう見られる?

オールアバウト / 2025年1月22日 21時25分

日本とは異なる、フランスの息苦しい「おひとりさま」事情。“ソロ活”をしている人はどう見られる?

焼き肉、カラオケ、ラーメン、キャンプなど、「おひとりさま」に寛容な日本。一種の文化として定着しつつあるこの「おひとりさま」ですが、海外では珍しく映ることもあります(写真は筆者撮影)。

「“おひとりさま”への圧が強い」これは、フランスで暮らす筆者がよく感じることです。誕生日パーティーや結婚式、旅行などは特にそうで、これらのイベントはパートナーか親しい友人と一緒に行動することが普通とされています。

例えば、日本で1人旅をした際の経験をフランスの友人に話した時のこと。彼女の反応はこうでした。「1人で旅行? すごい。勇気あるね!」

彼女にとっては、旅先での体験談そのものよりも、日本の治安の良さや、女性が1人で旅行する意志の方が印象的だったようです。1人旅という行動がフランスでは一般的ではないため、驚きや新鮮さを感じたのかもしれません。

フランスでは「おひとりさま」への風当たりが強い

というのも、フランス含む欧米諸国では「カップル文化」が根付いているためです。男女の組み合わせに限らず、イベントにパートナーを同伴するという習慣が一般的で、オフィシャルな場面でもカジュアルな場面でもその傾向が強く見られます。

しかしながら、「関係が薄いのに出席しなければならない」場合があるのをご存じでしょうか。例を挙げれば、パートナーのいとこの結婚式や、大学時代の同級生との飲み会などです。自分が誰1人として知らない環境に「パートナーだから」といって連れ出されるのは、日本ではあまり経験しないことでしょう。

「誰も知らないし」と言って断ることもできません。断ってしまえば、パートナーが先方から「あそこは付き合いが悪い」と陰口を叩かれることも。若い世代ではこうした慣習も薄まりつつありますが、年配のフランス人の間では「おひとりさま」への風当たりがまだ強いのが現状です。

ただ、このカップル文化には「パートナーの周囲と絆を深められる」というポジティブな面もあります。フランスでは「告白してから付き合う」習慣がないため、身内のイベントに招待されることで初めて「正式なパートナー」として認められるのです。これは信頼の証しとも言えるでしょう。

とはいえ個人的には、1人の意志で自由に行動すること、そしてそれを否定しない環境がもっと広がってもいいのではないかと感じます。中世から続く「カップル社会」で暮らすフランス人は、この点についてどう思っているのでしょうか。何人かに話を聞いてみました。

レストランは問題ないが旅行は難しい

まずは外食について。今回話を聞いたフランス人からは、「1人でレストランに行くのはまったく問題ない。食事がメインなのだから、1人で行きたかったら1人で行けばいいし、誰かと行きたかったらその相手が人でも犬でも構わない。話し相手が欲しかったらセルヴールやセルヴーズ(ウエーターやウエートレス)に話しかけるといい。みな慣れているだろう」と回答をもらいました。

確かに、以前と比べるとフランスのレストランでも「おひとりさま」が増えてきたように感じます。特に首都パリではその傾向が強く、おひとりさま好きな筆者自身も、よく1人でレストランに行き食事を楽しんでいます。店のスタッフから奇異な目で見られる、という経験は特にありません。

同じく1人で食事をするフランスの人々も、頻繁に目にします。ただしこうした光景は、ディナーよりランチに多いかもしれません。理由は2つあり、まずはディナーがランチに比べて値段が高くつくこと。そして、日本のように「おひとりさまに特化した飲食店」が少ないことです。そのため1人で夕食を取る場合は、テイクアウトやデリバリーの方が多いと言えるでしょう。

また、1人の食事が問題ないとは言っても、レストランの雰囲気や状況によっては気まずさを感じることもあります。フランス在住者の視点としては、カフェやブラッスリー(カジュアルなビストロ)が最も1人で入りやすく、高級フレンチが最も1人で入りにくいと感じています。

フランス人にとってはハードルの高い「1人旅」

一方で、旅行に関しては「男1人のロード・トリップ以外は、女性の1人旅なんて聞いたことがない」という意見をもらいました。冒頭でもご紹介したように、フランス女性は特にパートナーと旅に出る傾向が強いのです。

もちろん、これはフランスだけに限った話ではありません。治安面で不安の残る地域では、性別に関係なく1人での旅行を避けています。「ソロキャンプ」なども非常に珍しく、1人旅自体が少数派と言えるでしょう。

では「治安が良い国だと1人旅ができるのか?」と聞くと、実はそんなこともないようです。あるフランス人は、「旅は絶対に誰かと行きたい。今はパートナーがいないから、こないだのバカンスは家族と行った」と語りました。

確かにフランスの夏季休暇は数週間と長いですから、その間たった1人では退屈するのかもしれません。こちらからすればわざわざスケジュールを合わせて休みを取ることの方が大変そうに見えますが、フランス社会では「旅行=誰かと行くもの」という方程式が根付いているようです。

身内から受ける「シングル」への圧にうんざりする人も

若い世代のフランス人が嫌っていることがあります。それは、帰省のたびに家族から「いい人できた?」と尋ねられること。フランスの年配層には「おひとりさま」の習慣がやはりありませんので、こうした質問を毎度受けるのだそうです。

首都パリでは外食も、映画館や美術館に行くことも1人で問題ありません。デジタル化した現代社会が「おひとりさま」に寛容になりつつあるのは、今や世界の大都市で共通する特徴でしょう。ただし、地方に行けば行くほど、保守的な考え方が根強く残っているのも世界共通だと言えます。

そうした状況もあってか、フランスでも近年では「独身であることの喜び」や「パリで1人で食事ができるお気に入りの場所」と題したネット記事をたくさん見かけるようになりました。シングルであろうとパートナーがいようと、自分で選択できる生き方こそが素晴らしいとするテーマです。

その内容も大変興味深く、文面には「現実を直視しよう!」「カップルの圧はもうたくさんだ!」「自分の皿が唯一の相手だ!」といった強めの言葉が並んでいました。ここからも、どれだけ現代フランス人が「カップル文化」に疲弊しているかが分かります。

ということで今回は、フランスの「おひとりさま」は時と場合によって賛否を分けることが明らかになりました。日本の先進的な「おひとりさま」文化を知るフランス人は少ないかもしれませんが、現状を知れば多くの人が密かな羨望(せんぼう)を抱くのではないでしょうか。

この記事の筆者:大内 聖子 プロフィール
フランス在住のライター。日本で約10年間美容業界に携わり、インポートランジェリーブティックのバイヤーへ転身。パリ・コレクションへの出張を繰り返し、2018年5月にフランスへ移住。2019年からはフランス語、英語を生かした取材記事を多く手掛け、「パケトラ」「ELEMINIST」「キレイノート」など複数メディアで執筆を行う。
(文:大内 聖子)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください