「もしかして僕、嫌われてる?」 赤ちゃんが目をあわせてくれないワケ【脳科学者が解説】
オールアバウト / 2025年1月29日 20時45分
【脳科学者が解説】赤ちゃんをあやしたとき、「何だか視線が定まらない」「目をそらされる」と感じることがあるかもしれません。これは赤ちゃんの視力と見え方によるものです。分かりやすく解説します。
Q. 赤ちゃんに笑いかけたら目をそらされます。嫌われているのでしょうか?
Q. 「妻が出産し、初めての子育て中です。私も娘をあやそうと、笑いかけたり話しかけたりしてみるのですが、よく目線をそらされます。最初は偶然かと思ったのですが、あまりに続くので、育児に自信を失ってしまいそうです。娘から嫌われているのでしょうか?」A. 心配ありません。実は反対で、赤ちゃんが興味を示している証拠です
結論からいえば、まったく心配はありません。むしろ、あなたを認識し、興味を示してくれている証拠です。「視覚」がどう発達していくのかを知れば、理解できると思います。赤ちゃんの視力は低く、生後数週間ははっきりと物を見ることができません。しかし、動きのある物にはよく反応します。特に目の前に接近してくる物に対しては、素早く回避しようとする反応を示します。
自分に接近してくる物を感知することは、危険を回避するために必要不可欠なしくみで、生まれつき備わっているのでしょう。いわゆる「無意識の視覚」というものです。
私たちが物を見るときに使う「視覚」には、「意識的な視覚」と「無意識な視覚」の2種類があります。
「意識的な視覚」は、私たちが日常的に用いているしくみで、物があることをしっかり知覚し、さらにそれが何かを認知するような見方です。目に入った光情報は、電気信号として「視神経」を伝わります。
少し専門的になりますが、「外側膝状体(がいそくしつじょうたい)」というところを経由し、最終的に大脳の後頭葉にある「一次視覚野」に到達した時点で、「見えた!」と知覚されます。
「意識的な視覚」では、しっかりと物を見る必要があるので、目の中心に光が入るように対象物にしっかりと顔を向けて注視する「中心視」が行われます。
一方で、「無意識な視覚」の場合は、少し異なります。視神経を伝わってきた信号は、外側膝状体に届く前に逸れて、別の「上丘」という部分に伝わるのです。視覚野には伝えられていないので、「見えた!」という自覚はありません。しかし、目から入ってきた情報が脳内で処理されているという点では、視覚の1つです。
「無意識な視覚」では、対象物が何かは分かりません。「どこにあってどう動いているか」といった限られた情報だけが処理されます。しっかりと物を見るというより、ぼんやりと全体を見渡す、いわゆる「周辺視」です。
「無意識な視覚」は、もともと原始的な動物が獲得した神経系のしくみで、反射的です。例えば、カエルは視力が弱く、静止している周囲の景色はほとんど見えません。しかし、ハエなどの虫が近くに飛んでくると、「無意識な視覚」で素早く反応し、舌で捕まえて食べます。
生まれたばかりの人間の赤ちゃんは、視力が弱く物をはっきり捉えられません。その代わりに「無意識な視覚」を使って、自分にとって危険が及ぶかもしれない「動く物」を見つけることが得意なのです。成長していくにつれ「意識的な視覚」が発達し、大人になると「無意識な視覚」はあまり使わなくなります。
幼い赤ちゃんに語りかけたり微笑みかけたりしたときに、赤ちゃんが目をそらす反応を示すのは、よくあることです。これは、嫌だからではありません。弱い視力でもあなたの存在に気付き、「周辺視」による「無意識な視覚」で反応しているということ。つまり、興味を示してくれている証拠です。
脳の神経の発達に伴って、「周辺視」から「中心視」へと移行すれば、すぐにあなたの顔をじっと見つめ返してくれるようになるでしょう。安心してください。
阿部 和穂プロフィール
薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。(文:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者))
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