日本人は「自虐」を、フランス人は「皮肉」を笑いにするワケ。フランス人が愛する“際どい笑い”の本質
オールアバウト / 2025年2月8日 21時5分
![日本人は「自虐」を、フランス人は「皮肉」を笑いにするワケ。フランス人が愛する“際どい笑い”の本質](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/allabout/allabout_121383_0-small.jpg)
その場を和ませ、コミュニケーションの助けにもなる笑い。しかし文化が異なれば、笑いのセンスも国ごとに異なります。フランスの笑いは日本とどう違うのか、在住者が解説します。(写真は筆者撮影、以下同)
その場を和ませ、コミュニケーションの助けにもなる笑い。しかし文化が異なれば、笑いのセンスも国ごとに異なります。フランスの笑いは日本とどう違うのか、在住者が解説します。
実は「ユーモア大国」のフランス。日本とは「笑いのツボ」が違う?
国によってまったく異なる「笑いのツボ」。たとえ言語を習得しても、その国のユーモアを理解し、完全に身につけるには長い時間がかかります。笑いのセンスは、世界で最も共有しにくいものの1つかもしれません。筆者が暮らすフランスでは、お笑いのことを「ユーモア」、コメディアンを「ユーモリスト」と呼びます。ユーモリストは昔から人気のある職業ですが、実はフランスでは日常生活にも笑いがあふれていることをご存じでしょうか。
例えば、筆者がフランスの国内線を利用したときのこと。空港で買ったお土産を荷棚に入れようとしましたが、手が届かず、客室乗務員にお願いしました。すると彼女はすかさず、「私にくれるの? ありがとう!」と、見事にボケてきたのです。周囲からもクスッと笑いが生まれたひとときでしたが、彼女はフライト中ずっとユーモアを交えながら接客していたため、乗客から人気者になっていました。
さらに、フランスではコメディー映画やユーモリストのトークショーが大人気。エモーショナルなイメージが強いフランス映画も、実はコメディータッチの作品の方が圧倒的に好まれています。こうした作品が日本であまり公開されないのは、やはり「笑いのツボ」が異なるからなのかもしれません。
そんなフランスのユーモアは、ビジネスシーンでも初対面の場でも、そして気心知れた仲でも大切にされています。笑いを取ることに年齢や性別は関係なく、学校、職場、飲食店など、あらゆる場所で「人間関係の潤滑油」として捉えられています。モテる条件として、「笑いのセンス」が上位に挙げられるほどです。
フランスの笑いはいつから始まっているのか
現在、「笑い」は周囲を笑顔にするポジティブなものと捉えられていますが、かつてのヨーロッパでは必ずしも肯定的に受け止められていたわけではないようです。イギリスから伝わった「ユーモア」という言葉は、フランスでは、1789年のフランス革命の際に広まったと言われています。この言葉は、「エスプリ(才気)」「風刺」「道化」などと並んで使われました。最もよく知られているのは、モリエールの作品のような鋭い社会批評や反宗教的な風刺です。フランスの「風刺画」はこの頃から広まり、国王や女王、聖職者は一般市民の嘲笑の対象となっていました。
時の権力者をからかうのは、フランスの古い伝統です。フランスのユーモアの根底には、このような抗議精神、ポレミック(論争)、社会批判の姿勢が根付いています。つまりフランス人はその歴史的背景から、政治的で反骨精神に満ちたユーモアという、独自のセンスを築き上げてきたのです。これは、イギリスのブラックジョークとはやや異なる特徴を持っています。
現代においても、フランスのユーモリストたちはその伝統を受け継いでいると感じます。彼らはフランス社会を鋭い視点で捉え、ユーモアを交えて面白おかしく語ります。中には、メディアやジャーナリストが伝えない(あるいは伝えられない)内容を代わりに発信することも。国民を笑わせながら、同時に気付きを与える存在だと言えるでしょうか。そういった意味では、ユーモリストたちが人気を集める理由にも納得できます。
自虐ネタはないが、皮肉が満載のフレンチジョーク
![フランスの薬局で見かけた「ダイエット」と書かれた踏み台。日本ではまず見ない光景](https://imgcp.aacdn.jp/img-a/550/auto/aa_news/article/2025/02/06/67a386807a24a.jpg)
皮肉が効いていて、風刺的で、かつシニカルなジョークは、フランスの人々が最も好むもの。一発ギャグやモノマネといった芸風はなく、会話のキャッチボールの中で機知に富んだ発言をすることが重視されます。
例えば、誰かが誰かに食事をごちそうするシーン。「今回は(お金を)出すね」と言われたら、「ありがとう」と返すのが一般的だと思います。しかし、あるフランス人の知り合いは「全然優しくないわ、この人!」と、実際の気持ちとは正反対のことを口にしました。もちろん、周りの人もそれが冗談だと分かっています。このようにあえて正反対のことを言うのも、フレンチジョークの「お約束」の1つです。
映画やドラマで笑うポイントも、日本人とは異なると言えるでしょう。一例として、かつて大ヒットしたフランス映画『最強のふたり』の中に、首から下がまひして動かない相手の脚に「熱湯をかける」というシーンがあります。なかなかに際どい場面ですが、あるフランス人はここで大爆笑していました。日本人なら「えっ」と戸惑うようなシーンでも、フランス人にはがぜん面白く映るようです。
ユーモアのある人は男女ともに人気者
こうしたユーモアセンスは、年齢を問わず「人気者」の条件だったりします。先述したように、フランスでモテる人と言えばやっぱり面白い人。学校ではそれがスクールカーストに影響するといいますし、大人になってからもオン・オフ問わず、さまざまな場面で重宝されます。フランスのユーモアが必ずしも日本人に理解されるとは限りませんが、その逆もまた然りです。特に、日本の「漫才」や「コント」のようなスタイルはフランスには存在せず、コンビ芸人という概念もありません。1人のユーモリストが舞台で語り続けるのが、フランス流のお笑いです。日本の大衆的なお笑いとは違い、「皮肉」や「風刺」が際立っているのもフランスの特徴だと言えるでしょう。
この記事の筆者:大内 聖子 プロフィール
フランス在住のライター。日本で約10年間美容業界に携わり、インポートランジェリーブティックのバイヤーへ転身。パリ・コレクションへの出張を繰り返し、2018年5月にフランスへ移住。2019年からはフランス語、英語を生かした取材記事を多く手掛け、「パケトラ」「ELEMINIST」「キレイノート」など複数メディアで執筆を行う。
(文:大内 聖子)
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