話題の藤田貴大さん「昔から、観察の対象が女子だった」
ananweb / 2017年6月28日 12時30分
anan誌上で連載していた藤田貴大さんのエッセイ『おんなのこはもりのなか』の書籍化に合わせ、下北沢の『本屋B&B』にてトークイベントが開催。偶然にも、NHK BSプレミアム『ネクストブレーカー』で又吉直樹さん推薦のネクストブレイカーとして藤田さんが取り上げられた翌日という絶妙なタイミングで、大盛況となりました。
文・望月リサ
参加者の方々には事前に、藤田さんへの質問や書籍の感想の紙への記入をお願い。集まった回答は、どれも紙に小さく丁寧な文字でびっしりと書き込まれ、熱意の伝わるものばかり。そのなかから、いくつかピックアップした質問を藤田さんに投げ、答えていただくという形式で進行してゆくことに。
たくさんの拍手に迎えられ現れた藤田さんは、なぜか少し恐縮気味(その理由は、後々わかってくるのですが…)。簡単に紹介を済ませると、導入代わりに、下北沢との浅からぬ縁について語り始めます。下北沢といえば、言わずと知れた演劇の街ではあるけれど、藤田さん率いるマームとジプシーは、下北沢の劇場とは縁がありません。しかし、北海道伊達市で、幼い頃から演劇に触れて育った藤田青年にとって、上京したての頃の下北沢は当然憧れの街だったそうで、書店でバイトをしていたこともあったとか。
しかし、そんな藤田さんがいまや「下北沢にはトラウマがいっぱいある(笑)」と答えるのには、ユニークな理由があったのでした。というのも、俳優として最後に立った舞台が下北沢の駅前劇場。当時の俳優としてのエピソードをずっと照れながら語っている姿が印象的でした。
そんななか、お待ちかねの質問コーナーへ突入。1問目は「これまでに一番影響された本や映画はなんですか?」というもの。好きな作品はたくさんあり過ぎて選ぶのが難しいと前置きしつつ、「バイト時代に出会った作家さんたちに、マームで出会いなおせているのが楽しい」と語ります。「そういう意味で言えば、穂村弘さんの本は、読むと無条件に泣いてしまいます」。いっぽうの映画は『トレインスポッティング』。「内容はそれほど好きなわけではないけれど、あのテンポにすごく刺激を受けて、こういうものを演劇でできたらと思った」作品なのだとか。
また、ananでの連載当時についての質問もちらほら。「当時は、どうやって書いていたんですか?」との問いに対しては、「締切日のデッドラインギリギリで、せかされて慌てて書き出すような状況だった」、「とにかく街中の女の子をしょっちゅう観察していた」と、週刊誌ならではの大変さをぽろり。ただ、「ポッと思わぬことが書ける時があり、それは、戯曲や小説を書くのとは違う刺激があった」とも。「女の子を〝そういう目〟で見てしまうことへの罪悪感はありますか?」という、鋭い質問には、「ないですね。女子を見る職業なので、そこは開き直っています」とさらり。
連載のエッセイのみならず、マームの題材としても〝女子〟を描き続けている藤田さん。そもそも「昔から、観察の対象が女子だった」そうで、「劇作家になろうとした時、自然と思い浮かぶのは〝女子〟についてのことばかり」だったとか。「ほかの人が描いた女の子で、これはと思ったものはありますか?」という質問には、「内容どうこうよりも色彩や描き方、選んでいるものが好きで、あれはいつかやってみたいと思わせる」として高校生の時に観た『ヴァージン・スーサイズ』(ソフィア・コッポラ監督・99年公開)を挙げてくれました。
そんな流れから、連載のなかにも登場する八千草薫さんの話題へ。もともとあまりテレビを観る習慣がなく、イマドキの女優さんを知らないこともあり、好きな女優と聞かれると「正解がわからない」と吐露。そうして、困りながらも、いつも出すのは八千草さんの名前。その魅力を「本当に配置してかわいい俳優さんだと思う」と独特の表現で語ると、「ここ(自身のすぐ後ろ)にいちゃダメなんです。ここ(少し離れた自身の右斜め前)に配置すると素敵なんです」と、舞台の演出家ならでは(!?)のこだわりも見せます。
質問はほかにも「初恋の記憶は?」(小学生の時の担任のカキザキ先生だそう)や、「最近の初体験は?」(初めて、チューブ入りの顔パックをしたとか)など、藤田さんのプライベートに迫るものが。「今日のお客さんにどういう印象をもちましたか?」という質問には、「直視できていない」と語り、「本当に恥ずかしい」を連発。「今日は罰ゲームだと思って引き受けた」とも。
というのも、連載が終了してからすぐに書籍化の話が立ち上がったものの、多忙な藤田さん自身がなかなか手をつけることができず、企画が持ち上がってから1年以上の歳月を要しての刊行となったことから。そのせいか、恐縮したり、恥ずかしがったりしながらも、読み上げられた質問に対してきちんと答えてくれた藤田さん。言葉を操る人らしく丁寧に丁寧に言葉を重ね語る姿に、最後には参加者から大きな拍手がおくられます。トーク終了後のサイン会でも、藤田さんはひとりひとりに丁寧に受け答え。そして、何度も「ありがとうございます」の言葉を返していたのが印象的でした。
■ Infomation
「おんなのこはもりのなか」
マガジンハウス刊 定価1,403円(税込)
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B&B
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