「ありがとう」を伝えたい…パニック障害を患って思うこと
ananweb / 2018年1月18日 11時30分
あるとき突然苦しくなって、倒れてしまうことがありました。救急車で運ばれ、パニック障害だと診断されました。それからは、発作が起きるかもしれないという恐怖感との戦いです。さまざまな病気があるなかで、どのように理解が深まれば当事者の不安が軽減されるのか、悩ましくもあります。
文・七海
■ 何が原因かわからないのに、苦しい。
パニック発作の症状
パニック障害は、人によってさまざまな症状が現れます。心臓がドキドキしたり、体が震えたり、しびれを感じたりといった具合です。「このまま死んでしまうのではないか」という不安感が伴うとよくいわれています。こういった症状は、パニック発作といわれます。発作は一過性のもので、病院で検査を受けても体に異常がないと診断されます。ときには「気のせい」と言われてしまうこともあるのですが、脳内物質が影響しているとされる病気です。
私の主な症状は、強いめまいと吐き気です。同時に ”酸素がない” ような感覚になり、呼吸が苦しくなります。自分の体なのに思うように動かせず、倒れてしまうことがしばしばあります。最初にパニック発作が起きたときは、一緒にいた人が驚いて救急車を呼びました。救急車で運ばれる間はとても苦しかったのですが、病院に着いた頃には治まっていました。もともと他の精神疾患を持っていたこともあり、精神科に行くよう言われ、最終的にパニック障害だと診断されました。
それからは、どんなときにパニック発作が起こるかわからず外に出るのが怖くなっていきました。私のパニック発作のきっかけは、いまだにわかっていません。
■ 突然起こるパニック発作への恐怖。
周囲への説明の難しさ
パニック発作は、時間も場所も問わず、突然やってきます。不安感が強く作用するのか、一度起きた状況と似ている場面に遭遇すると、再び起きてしまうことがよくあります。また、エレベーターや電車といった閉鎖空間は「逃げ場がない」と思ってしまうためか、パニック発作が起こることが多いです。パニック発作を恐れて、行動範囲が狭くなってしまったと感じることは多々あります。発作自体は当然苦しいですし、周囲に迷惑をかけてしまっていることも自覚しているからです。
しかし、パニック発作が怖いからといって全く外出しないわけにはいきません。発作が起こってしまいそうな状況はなるべく避けるようにしています。どうしても電車に乗らなければならないときは、イヤホンで音楽を聞き、ずっと携帯電話か本を見るようにします。外界をシャットダウンするようにすると、私の場合は落ち着くことが多いです。しかし、それでも症状が出てしまうことがあります。そういったときは、周囲の方がとても親切にしてくれることも。
電車で席を譲ってくれたり、道端で声をかけてくれたり。ときには安全な場所まで肩を貸してくれることも、救急車を呼んでくれることもあります。非常にありがたく、優しさが身に沁みます。しかし、平衡感覚を失い強い吐き気に襲われている最中なので、私の場合は無理に移動しようとすると症状が酷くなってしまうことも。胃の中のものが込み上げてきて、呼吸もしんどくなります。こうなると、余計に心配をかけてしまうことになるのです。
■ 心優しい人に「ありがとう」と伝えられなくて。
不甲斐なさと感謝と
心配してくれて、手を差し伸べてくれた優しい人たち。パニック発作が起きてからでは、しゃべることはおろか頷くこともままなりません。私がどういった病気を持っていて、たった今どういった状況なのかを伝えることが難しいのです。助けてくれた人は、症状が悪化している様子を見てとても心配したのではないかと思います。それを思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになります。
パニック障害は、見た目ではわかりにくい病気です。無理に動くとしんどくなってしまうということは、正直伝わらないのではないかと思います。さまざまな病気があるし、同じパニック発作でも治まり方は人によるので、ゆっくり休めるところに移動させたほうが良いと考えるのも自然な流れだと思います。だからこそ、どのように理解が深まればいろんな人が安心できるのかが悩ましいのです。そこに今、答えを見出せないでいます。
だけど、手を差し伸べてくれた人に「ありがとう」と伝えたい気持ちだけは確かです。彼らが「お大事にね」と声をかけて去っていくそのときに、私はしゃべることすらできないことが多いです。「ありがとう」と言えなかったことが、悔しくてなりません。私と同じように、「ありがとう」を言えないような症状が出てしまう人もいるかと思います。でもきっと、その人も私と同じように「ありがとう」と思っているはずです。
治療を受けていても、予防をしても、突然起こってしまうパニック発作。迷惑をかけたくない気持ちはずっとありますが、ひとりで外出しない生活はあまり現実的でないのが事実。認識を広めるためにどのようにしたら良いかを悩みつつ、私はとても感謝しています。苦しいときに触れる人の優しさは、ずっとずっと、温かいものです。そういった温もりが、快方の助けになっているのではないかと、そう思うのです。手を差し伸べてくれた人がいるということが、恐怖心に打ち勝つ勇気を与えてくれているのだと感じます。直接言えなかったけれど、心から伝えたい。「ありがとう」と。
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