JUJU「ジワッと溢れてくるもの」幼少期に感じた官能とは?
ananweb / 2018年3月8日 16時0分
知的な大人は知っている。官能の扉が開く瞬間。歌手・JUJUさんに“官能の本質”をお聞きしました。
■ うっとりする時間を失うと大人はつまらない。
人として生まれたのに、官能に対するセンサーがなかったら、まったく楽しくない人生になると思う。官能とは人間にとって、水とか空気、食べ物と同じぐらい大切なものだと思います。じゃあ、何が官能かといえば、言葉尻だけ見てしまうと、官能小説とか官能映画とか、エロティックな方向に想像が行きがちだけど、実は官能って、イコール≪うっとり≫だと思う。うっとりできる甘美なものが官能とすれば、それはおいしいものを食べたとき口の中に広がる多幸感も官能だし、いい音楽を聴いたときに心の底からジワッと溢れてくるものも官能だと思う。
私にとって、いちばん官能を感じるのは、やっぱりいい音楽に出合ったとき。最高の瞬間です。生まれてはじめて音楽にうっとりしたときのことは、いまだに憶えています。幼稚園児が聴くようなものではない、大人の女性歌手がしっとりと歌うラブソングでした。その歌を何度でも聴きたくて、母にせがんでCDを買ってもらったほど。いま思えば、私のうっとりセンサーは、生まれながらに身についていて、いまもそのメーターの振れ方は少しも変わっていないようにも感じます。
うっとりすることのない大人の生活は、まったく楽しくないと言い切れます。だけど大人になればなるほど、知っているものが増えてくる。はじめて見るものはどんどん少なくなるし、はじめて経験することは減る一方。例えば、美しく完璧なフォルムのシューズを見たとき、子どものころだったら、うわぁと思って、何時間でも眺めていられるほどうっとりできたけれど、いまは、ああ、この靴キレイと思っても、そこまで陶酔できなくなっていることに気づく。昔は手に届かないものだったから、余計にうっとりできたのでしょう。でもうっとりすることに、心を砕いて生活しているほうが、毎日がはるかに楽しいはず。日常的な官能は日常生活の中にあるべきだと思うので、大人として日々官能とともに生きていけたら、なんと素晴らしいことだろう。
官能を語るとき、しばしば「官能の扉が開く」という表現が使われますよね。それは、すごく言いえて妙で、やっぱり心や体の感覚の扉を開けてあげないと、官能は解放できない気がします。その扉がひとつ開き、またひとつ、そして、3つ、と開くごとに、人生を楽しむ術が増えていくのでは。逆に言えば、うっとりすることを躊躇するほどの愚行はないと思う。常に官能に対して臆さずにいること。いま自分がうっとりしている、ということは他の誰かとシェアする必要は、まったくない。そうやって自分だけが感じる官能のスイッチを、こっそりと、どんどん増やしていけばいいと思うんです。
もちろん性的な官能も大事だし、いちばんわかりやすい官能かもしれないけど、単純に官能=エロ、っていう図式をとっぱらったほうが、より官能に素直に生きていける気がします。
最近よく聞く「他人と接触することが気持ち悪い」とか「キスが気持ち悪い」という人々の話には、驚かされるけど、そんなことでは寂しい人生になってしまう。そういう人たちこそ、素直にうっとりする時間を増やしてほしい。
もしお酒が飲めるなら、酔うほどに官能のスイッチが入りやすくなると思う。そういった、きっかけも探してみてほしい。特別なことでなくていい、自分が好きなことを見極め、たくさんのうっとりを持ち、幸せを感じることに、もっと貪欲になるべきだと思っています。
ジュジュ 最新アルバム『I』発売中。小田和正や平井堅など楽曲提供するのが稀なアーティストが、彼女のために書いた曲を収録。「うっとりする要素が満載のアルバムです」
※『anan』2018年3月14日号より。文・北條尚子 (C)valentinrussanov
(by anan編集部)
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