俳優が揃って出演拒否!?『天命の城』監督が語る完成までの苦労とは?
ananweb / 2018年6月20日 19時0分
先日行われた史上初の米朝首脳会談によって、これからの歴史がどう動いていくのかに世界中の注目が集まっていますが、アラサー女子たるもの、いまこそさらなる知識と教養を身に着けておきたいところ。そこで、まるで現代の社会を反映するかのような出来事を遡ること約380年前の朝鮮から学んでいきたいと思います。今回ご紹介する映画とは……。
■ 国の存亡をかけた戦いを描いた歴史大作『天命の城』!
【映画、ときどき私】 vol. 171
1636年、中国全土を支配していた明が衰退したことにより、清が朝鮮の侵略を開始し、丙子の役(へいしのえき)が勃発。王と朝廷は南漢山城(ナムハンサンソン)に身を隠すが、敵兵に囲まれ、孤立してしまうのだった。
そんななか、人事を担当する吏曹(イジョ)大臣のチェ・ミンギョルは清との和平交渉を求めていたが、儀礼と外交をつかさどる礼曹(イエジョ)大臣のキム・サンホンは清に徹底抗戦すべきだと訴え、朝廷内は親和派と主戦派のふたつにわかれていた。激しく対立する大臣たちの間で苦悩する16代王の仁祖(インジョ)が出した答えとは……。
朝鮮王朝史上、もっとも激しい戦争といわれている丙子の役において、最後の47日間が描かれている本作ですが、私たち日本人にとっては、まだまだ知らないことのほうが多いはず。そこで今回は、作品の見どころや制作秘話などについて、この方にお話を聞いてきました。それは……。
■ 韓国でも人気の高いファン・ドンヒョク監督!
これまでに『トガニ 幼き瞳の告発』や『怪しい彼女』といったヒット作を手掛け、社会派からコメディまで幅広くこなしている監督にとって、今回は初めて時代劇に挑戦した意欲作。
■ まず、私たちにとって丙子の役はなじみのない事件ですが、韓国では誰もが知る歴史上の出来事ですか?
監督
実は私も学校の授業では、簡単なことしか習いませんでした。というのも、これは敗北の歴史であり屈辱的な出来事でもあったので、ほとんどの人は朝鮮が清に攻められて、国王が逃げて、降伏したという程度の知識だと思います。なので、その裏でこの作品に描かれているようなことが起きていたということは多くの人が知らなかったはずです。
今回は2007年のベストセラー小説をもとに映画化した作品ですが、原作を読んでいくなかで、現在の韓国が置かれている情勢と非常に似ているなとも感じました。
■ 特にどのあたりが似ていると思いましたか?
監督
これまでに丙子の役と同じようなことは、歴史的に見ても何度も繰り返されてきていること。たとえばここ数年の韓国はアメリカと中国の間に挟まれていたり、北朝鮮とのことがあったりと、困難な状況に置かれていますよね。
そういう意味でも、この話を映画にして見せることで、過去の失敗を繰り返さないためにはどうしたらいいのか、そしていま何をすべきなのかということについて、みんなで一緒に考えるきっかけになって欲しいという気持ちがありました。これは決して昔の話ではなく、いまでも起きていることなんだというのをこの映画を通して伝えたいと思っています。
■ では、日本の観客に感じて欲しいことは何ですか?
監督
これは韓国に限った話ではなく、どこの国でも、さらには組織のなかで個人が冷遇されたりするときにも起こりうる話。最近、韓国では「自己尊重心」という言葉が流行っていますが、それを守って自分の信念を貫いたほうがいいのか、それとも屈辱的でも未来のために受け入れたほうがいいのか、という選択に迫られるのは、誰にでもあることだと思います。
観ていくうちにリアルに感じられる迫力を生み出しているのは、実力派俳優たちによる熱演があってこそ。監督自身も「こんな素晴らしい俳優を一同に集めて映画を撮る機会はこの先もなかなかない」と話しているほど、とにかく豪華キャストが勢ぞろいしているのも本作では大きな見どころとなっています。
■ これだけのキャスティングをどのようにして実現できたのかを教えてください。
監督
こういう作品には膨大な予算が必要ですし、商業的な映画でもないので、制作するのが難しいということは最初からわかっていました。だからこそ、この映画を作るにはネームバリューのあるスターで、なおかつ演技力のある俳優が必要だったんです。
それもあって、イ・ビョンホンさん、キム・ユンソクさん、パク・ヘイルさんの3人のことは最初から頭にあり、シナリオを書き終えたらすぐに渡して、「ぜひお願いしたい!」と伝えました。ところが、足並みをそろえたように3人とも「この役をやるのは難しい」というお返事だったんです……。
■ そこからどうやって説得したのでしょうか?
監督
確かにこの話は勝利する話でもなければ、主人公たちが英雄でもない。しかも、滅びる国を助けることもできないというストーリーなので、「この映画に出たい!」と惹かれるところがないというのも、私にはわかっていました。
でも、どうして自分がこの映画を作りたいと思っているのか、そしてこの映画が持つ意味や意義を説明したうえで、もう一度シナリオを書き直して渡したんです。そんな困難な過程を経て、出演してもらえることになりましたが、実はパク・ヘイルさんには2回も断られてしまいました(笑)。最終的には、3回説得して、3度目の正直でようやく出演を決めてもらうことができたんです。
■ そのお三方をはじめ、今回は男性の俳優ばかりの現場でしたが、雰囲気はいかがでしたか?
監督
実は私もその点に関しては、すごく気がかりでした。というのも、今回は女優さんがひとりもいないし、寒い平昌のなか、40代以上の男たちだけで撮影をしなければいけなかったので、堅苦しい雰囲気にならないかなと心配していたんです。
ところが実際は、中年の男たちが集まるとこんなにもみんなおしゃべりになるんだと驚いたくらい。それは女性以上でしたね(笑)。カメラが回ってないときでも、みんなでいろいろな話ができたので、ほかの現場よりも楽しい撮影となりました。
■ とはいえ、真冬に5か月間のロケは大変だったのではないでしょうか?
監督
外での撮影が多かったので、つねに寒さは苦労のもとでした。ただ、あまりにも寒すぎたので、寒さには慣れてしまい、「寒くて大変だった」という思いも最初の頃だけ。
それよりも、実は寒くないことで大変な出来事のほうが多かったんですよ。というのも、寒い時期ではあったものの、すこし暖かくなってしまったせいで、本来ならあるべき場所に雪がなく、人工雪を降らせなければいけなくなってしまったんです。背景をしっかりと雪景色にするという作業は本当にひと苦労でした。
あと、湖のシーンでも、氷が20センチ以上張っていないと上に乗ることができないのですが、撮影しようとした途端に暖かくなってしまい、氷が薄くて撮影ができなくなったこともありました。そのときは凍るまで1か月も待たなければいけなかったので、撮影できなくなったらどうしようかとそのほうが心配でしたね。
■ これまでとは違うタイプの作品ではありましたが、映画を撮るうえで大切にしていることを教えてください。
監督
信念といえるかどうかはわかりませんが、私の場合、ジャンルがさまざまであっても、自分なりの共通点は、やはりキャラクターだと思います。なかでも、人に対する愛情を持った人物が必ず出てきているということです。
今回でいえば、ナルという少女をはじめ、民を心から愛したサンホンやミンギョルは、決して他人を見捨てることがないですよね。だから、そういうキャラクターを描くというのが、私の作品においては共通していることかなと思っています。
■ 真実の物語だからこその重みを感じる!
歴史が動き出す瞬間を力強く、臨場感にあふれた圧巻の映像とともに描かれた本作は、まるでその時代にタイムスリップしたかのような感覚を味わわせてくれるはず。いまこそ、負の歴史から“未来の糧”を学んでみては?
■ 激しくぶつかる予告編はこちら!
■ 作品情報
『天命の城』
6月 22日(金)、TOHO シネマズ シャンテほか全国ロードショー
配給:ツイン
提供:ツイン、Hulu
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