かけがえのない女性同士の関係にほろり 『違国日記』に共感
ananweb / 2018年6月23日 16時0分
『違国日記』を描くにあたって、マンガ家・ヤマシタトモコさんがイメージしたのは、ポール・フェイグ監督による女たちの『ゴーストバスターズ』。「どこが? って言われそうだけど、ただただハッピーでポジティブになれるこの映画が大好きなんです」
■ 女同士の面倒くささと心地よさ。わかってくれる人がいる幸せ。
物語としてのとっつきやすさを大事にしつつ、その先に残るものを描いてみたかったというヤマシタトモコさん。少女小説家の高代槙生(こうだいまきお)が、まったく反りが合わなかった姉の遺児である中学生の田汲朝(たくみあさ)を勢いで引き取ることに。人見知りが激しくて不器用な槙生は、朝にとって大人の枠から外れている不思議な女性であり、オープンマインドで素直な朝を槙生は子犬のようだと思う。
「大人って子どもに対して、実は大人ぶっているだけだったりしますよね。一方で自分は変わっていないつもりでも年とともに忘れてしまい、ふとしたきっかけで生々しく思い出すことも。両方の視点からそういったことを描いていきたいんです」
大人になったらわがままを言ったり、バカ笑いをしたり、些細なことでケンカをしないかというと、当然そんなことはない。子どもじみた自分を見せる相手を選ぶことができるのが、大人のずるさなのだろうか。槙生と朝、さらにそれぞれの友人との関係性は、第三者との理想的な距離感について考えさせられる。
「たとえば女の人に、自分の服とか行いなんかを褒めてもらったときのほうが、男の人に同じことを褒められるよりも嬉しかったりするじゃないですか。恋愛的な意味ではなく、この人に好かれたいと素直に思える女性がいることや、女性同士で気持ちを交換できることって、かけがえがないと思うのです」
いまだ反抗期が終わっていないような大人と、反抗するチャンスがなかったものわかりのいい子ども。“違国”の人だからこそ感じるカルチャーギャップや憧れから、さまざまな感情がかき立てられる作品だ。
人と暮らすことが不向きな少女小説家と、両親を事故で失った素直な姪っ子。ギクシャクしているけれども思いやりが垣間見える日常を著者独特の感性で描く。祥伝社 680円 ©ヤマシタトモコ/祥伝社フィールコミックス
マンガ家。2005年デビュー。『HER 』『ドントクライ、ガール』で「このマンガがすごい!2011」オンナ編1位、2位を独占して話題に。近作に『WHITENOTE PAD』(全2巻)など。
※『anan』2018年6月27日号より。写真・大嶋千尋 インタビュー、文・兵藤育子
(by anan編集部)
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