主役は難病の子5人! 映画『子どもが教えてくれたこと』に学ぶ人生の愛し方
ananweb / 2018年7月12日 19時0分
どんな人でも経験するものといえば、子ども時代。とはいえ、そんなかけがえのない時期に得た感情も、大人になると忘れがち。そこで、初心に返らせてくれるオススメのドキュメンタリー映画『子どもが教えてくれたこと』をご紹介します。今回はこちらの方にその舞台裏を教えてもらいました。それは……。
■ アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン監督!
【映画、ときどき私】 vol. 177
自身も2人のお子さんを病気で亡くされた経験のある監督が密着したのは、病と闘いながらも精一杯楽しく生きる5~9歳までの5人の子どもたちです。
■ まずは誰もが愛さずにはいられない子どもたちを紹介!
肺動脈性肺高血圧症のアンブル(写真・左上)は、お芝居が大好きで、明るく活発な少女。肺動脈と肺、心臓の機能に問題があるため、少しの運動でも息切れしてしまう。薬剤を定期的に注入するポンプの入ったリュックをつねに携帯中。
神経芽種のカミーユ(写真・左下)は、サッカーが大好きで、あふれる笑顔が印象的な最年少の5歳児。神経芽種とは小児がんのひとつで、神経の細胞にできるがんのことを指しているという。
腎不全のイマド(写真・右上)は、独特なジェスチャーと話し方をするちょっと大人びた男の子。慢性腎臓病から腎不全になり、腹膜透析をしている。オシッコすることが禁止されているため、水を飲むことができない。
表皮水疱症のシャルル(写真・真ん中下)は、肌がとても弱いため身体を包帯で覆っている。平日は病院で過ごし、週末は自宅で過ごす日々。病院では、親友のジェゾンといつも楽しく遊んでいる。
胸腔内の交感神経節から発症した神経芽腫を患うテュデュアル(写真・右下)。3歳のときの腫瘍摘出手術が原因でグリーンとブラウンという左右で異なる眼の色を持っている。学校に行くことが何よりの目標。
とにかく個性豊かな子どもたちはみんな魅力満載で、観ているこちらも思わず笑顔になってしまうほど。そこで今回は、監督に子どもたちとの感動エピソードなどをお話いただきました。
■ 撮影の主導権を握っていたのは子どもたち
―病気に苦しむ子どもたちが主人公ではあるものの、お涙頂戴映画になることなく、勇気と希望をたくさんもらえる作品でしたが、撮影する際に意識したことは何ですか?
監督
まずは「子ども目線である」ということは気をつけたわ。だから、精神的にも肉体的にも彼らに伴走するような感じで撮影していったのよ。それから、前もって「ああしようこうしよう」と考えずにすべて受け身で密着するようにしていたわ。
―とはいえ、撮影中に躊躇したり、難しかったりしたことはありませんでしたか?
監督
具合が悪いときの子どもたちは撮れなかったし、もちろん難しいこともあったわ。でも、たとえば表皮水疱症のシャルルなんかは、私たちが躊躇して撮るつもりがなかった入浴シーンも、自ら招き入れてくれたの。つまり「そこから逃げるべきではない」ということを伝えてくれたのよ。
だから、今回の撮影で私たちが無理強いしたことは一切なくて、どちらかというと舵をとっていたのは子どもたち。なぜなら、「ここは撮っていいよ」とか「具合が悪いから出ていって欲しい」ということをちゃんと言える子たちだったからよ。
私のほうがストレスや不安に襲われるんじゃないかと撮影前は思っていたけれど、そういうものは、彼らの私への信頼感がすべて取り去ってくれたわ。
―ご自身の経験上、病気の子どもたちや家族と向き合うことがつらいと感じる瞬間もあったのではないかと思いますが、それでもこの作品を完成まで支えた原動力は何ですか?
監督
まず私はこの子たちと接しているときに、「病気の子どもたち」という意識はなかったわ。なぜなら、私にとっては「子どもにただ接している」という意味合いのほうが強かったから。
それに、もし私が病気のほうに神経を集中させていたらつらくて、撮れなかったかもしれないわね。でも、「病気の」という形容詞句を外したとしても、この子どもたちの素晴らしさというのは変わらず伝わっていたと思うわ。
■ 子どもだちが初対面で起きた感動の瞬間とは?
―今回、撮影中に彼らの交流はなく、子どもたちが実際に顔を合わせたのは、撮影後の試写会だったとのことですが、その時の様子を教えてください。
監督
それはすばらしい瞬間だったわ! ただ、実は私はすごくストレスを感じていたの。というのも、その日は彼らに初めて見せるときだったから、「どう思うんだろう?」というプレッシャーがあったのよ。でも、子どもたちはすごく感動してくれて、ゲラゲラ笑ってもくれたわ。そして、男の子はみんな「アンブルがすっごくかわいい!」とも言ってたわね(笑)。
あと、何といってもイマドが本当におもしろかったわ。というのも、試写を観終わったあとに立ち上がると、シャルルのところに歩いていったの。そして、「君がシャルルくん? こんにちは、ぼくの友だち! いままで会ったことはなかったけど、この映画を通して僕たちは同じものをシェアしているよね」と言って強くハグしたのよ!
―ステキなエピソードに、想像するだけで込み上げてくるものがありますが、映画のなかでも彼らにはさまざまな可能性を感じさせられ、心を揺さぶられました。
監督
本当に彼らはあの歳で、もうすでにこれだけの素晴らしいことをやっているのよね。だから、この先ものすごいキャリアを積まなかったとしても、彼らの人間的な素晴らしさには変わりないわ。でも、いつも周りを説得させるイマドは、将来大統領になるかもしれないわね(笑)。
―確かに、あのパーソナリティならあり得ると思います! もし、イマドが大統領になったらこの映像はすごく貴重なものになりそうですね。
監督
そうね。ただ、映画のなかで「ぼくはオシッコしないんだ!」って言ってるシーンが何度も流れちゃうんじゃないかしら(笑)。
でも、いまはお父さんからの腎臓移植が無事に終わって、オシッコもできるようになったのよ。だから、手術の数か月後にイマド会いに行ったとき、2人だけの会話のなかで「オシッコができるようになって気持ちいい?」って聞いたんだけど、今度は「面倒くさい」って言ってたわ(笑)。
■ 子どもでも一人前の人間として扱うのがフランス流!
―劇中で驚いたのは、子どもたちが自分の病状や治療法についてすべてをきちんと理解していることですが、フランスでは病気であるなしに関わらず、子どもとは同等な向き合い方をしているのですか?
監督
20年くらい前に、子どもを一人前の人間として扱うことを推奨した心理学者がいて、そのあたりから変わってきたので、どちらかというと最近の傾向といえるわね。つまり、病気の子どもでもひとりの人間として治療に参加させるということ。それは、ひとりの大人として扱うというのではなく、ちゃんと理解できるひとりの人間として扱うということね。
というのも、子どもというのは本能的に理解できることもたくさんあるし、学んでいくものなのよ。だから発展途上の人間というわけではなくて、学んでいる途中の人間。それに、子どもだからといって、彼らに真実は隠し通せないものなのよ。
ーでは、監督が子どもの頃とはだいぶ違うということですか?
監督
そうよ、私が子どものときはこんな感じじゃなかったわ。だって、私は4歳の時に頭を切ってしまったことがあったんだけれど、局所麻酔もしないで頭を縫われてしまったのよ! すごく痛かったし、いまでもよく覚えているくらい。お医者さんは、私が小さいからわからないと思って、「痛くない、痛くない」と言うんだけど、当然痛いわよね(笑)!
いまだったらそんなことはないし、未熟児くらい小さな子でも、具合が悪いサインがどういうものかきちんと見わける医療ケアの体制がちゃんと整っているくらいよ。
■ 力強い子どもたちの言葉に生き方を見直さずにいられない
―そして、何よりも印象的なのは彼らから出てくる名言の数々。大人のほうがドキッとさせられる瞬間が多かったですが、印象に残っている言葉を教えてください。
監督
ひとりずつに名言があったから選ぶのは難しいけど、彼らのような言葉を大人は言う勇気を持っていないものなのよ。というのも、子ども時代というのは人生をすごくシンプルにとらえることができるわよね。おそらく私たち大人も子どもの頃は同じように考えられていたと思うんだけど、大人になって忘れてしまっているのかもしれないわ。だから子どもたちの話を聞くと、「いまと違う生き方をしようかな」と私たちにも思わせてくれるのよ。
たとえば、テュデュアルの「幸せになることを遮るものは何もないんだよ」なんて言葉を大人は言えないわよね。あとは、アンブルの「うまくいかないときもあるけど、私を愛してくれる人は近くにいてくれる」というのも強い言葉だと思ったわ。
当然、私たち大人も生きていればつらいこともあるし、問題が立ちはだかるとどうしていいかわからなくなることもあるけれど、自分を愛してくれる人に会うだけで気持ちが安らぐということもあるわよね? だから、彼女が言っていることは正しいと思ったわ。
―日本語タイトルの『子どもが教えてくれたこと』の通り、私もいろんなことを学ばせてもらいましたが、監督が子どもたちから教えられたことは?
監督
私自身の子どもからも、彼らからも教えられたのは、とてもシンプルで「人生を愛すること」。学んだというか、もう一度思い出させてもらったという感じね。つまり、人生にはいっぱいつらいことがあって、それは避けられないけれど、そういう試練や苦しいときに自分がどう対応していくかという方法は自分で選べるんだということよ。
―最後に、ananweb読者へのメッセージをお願いします!
監督
みなさんも昔は子どもだったわけだし、この作品は誰が観ても何かを感じられる映画になっているので、ぜひ多くの方に観て欲しいと思うわ。
とにかく、伝えたいのは「自分の人生と瞬間瞬間を愛しましょう」ということね。あとは、悲しいときは泣けばいいし、うれしいときは笑えばいいのよ。
■ 子どもたちこそ “人生の先生”!
いまを生きることの大切さを頭ではわかっていても、大人になると、つい言い訳をしてなかなか実行できなかったりするもの。そんなときこそ、小さな体で一生懸命生きる子どもたちの生きざまを見れば、誰にとってもいまのこの瞬間がどれだけ大事で愛おしいものかを実感するはずです。
■ 心を奪われる予告編はこちら!
■ 作品情報
『子どもが教えてくれたこと』
7月14日(土)より、シネスイッチ銀座 ほか全国順次公開
配給:ドマ
ⓒIncognita Films-TF1 Droits Audiovisuels
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