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「愛にレシピはない」フランツ・ロゴフスキが語る最新作『希望の灯り』

ananweb / 2019年4月3日 18時40分

「愛にレシピはない」フランツ・ロゴフスキが語る最新作『希望の灯り』

4月に入り、新たな職場で新生活をスタートさせたという人も多いのでは? そんななか、ご紹介するオススメの映画は、夜間のスーパーマーケットで働き始めたばかりの青年が主人公の話題作『希望の灯り』です。そこで、主演を務めたこちらの方にお話を聞いてきました。それは……。
写真・黒川ひろみ(フランツ・ロゴフスキ)

■ 俳優、ダンサーとして活躍中フランツ・ロゴフスキさん!


【映画、ときどき私】 vol. 222

2018年のベルリン国際映画祭では「シューティングスター賞」、そして本作で第68回ドイツアカデミー賞主演男優賞を受賞したフランツさん。いまドイツ映画界でもっとも注目されている俳優のひとりと言われており、日本でも今年は主演作が2本公開となっています。そこで今回は、撮影秘話から自身の恋愛観まで語っていただきました。

―本作はドイツの歴史的な背景を描きつつ、ラブストーリーとしても人間ドラマしても楽しめる作品ですが、出演を決めた理由から教えてください。


フランツさん
 それは、原作者でもあるクレメンス・マイヤーとトーマス・ステューバー監督の2人による脚本に惹かれたから。というのも、これまでに野望的すぎたり、空虚的すぎたりする脚本を数多く読んできたけど、今回はとてもシンプルな言葉で人間の奥深い感情を描いていると感じたんだ。

つまりそれは、父と子や愛、そしてドイツの歴史といったどのテーマもシンプルに表現しているということ。だからこそ、それぞれの細部が見えてくるんだけれど、そういうところが素晴らしいなと感じて、ぜひこの作品に出演したいと思ったんだ。

―決してセリフの多い役ではないですが、フランツさんの佇まいから多くのものを感じることができました。役作りのためにどのような準備をしましたか?


フランツさん
 普段は山登りやヨガが好きで体を動かしているのだけど、役作りのために体を鍛える必要があったから、撮影の前から、日頃はあまり行かないジムに通うようにしていたんだ。腕や首の後ろにタトゥーをしている青年という設定もあって、今回は首がすごく太い人やタトゥーが入っているような人がたくさんいるようなジムに行ったよ(笑)。

あと、タバコを吸うシーンが多かったから、つねにタバコを吸うようにもしていたかな。普段はまったく吸わないんだけど、撮影中に吸っていた本数は1日40本! もちろん、いまはもう吸っていないけどね。

―クリスティアンの話すときの間も独特に感じましたが、どのようなことを意識されていましたか?


フランツさん
 まずはセリフを覚えて、そのストーリーについて多く語るようにしたよ。そのうえで、リハーサルを重ねてセリフを調整したり、監督と話し合ったりしながら撮影前までに人物像を作り上げていくようにしたんだ。

■ フィクションだけどドキュメンタリーのようだった

―物語の大半はスーパーマーケットが舞台ということで、撮影中に印象に残っていることはありますか?


フランツさん
 今回はあまり予算がなくて、スーパーを新しく作ることができなかったから、本物のスーパーを閉店後に借りて、開店するまでの間で撮影していだんだ。

夜通し寝ずに日光も浴びずに撮影していたから、実際に深夜働いている人と同じような環境。だから、作品はフィクションだけれど、どこかドキュメンタリーのようなところもあったんじゃないかな。

―フォークリフトの運転も実際にご自身でされているそうですが、いかがでしたか?


フランツさん
 撮影の前にフォークリフトの免許を取ったんだけど、車とはメカニズムが違って左に行きたいときに右に行ってしまったりするから、それに慣れないといけないのは大変だったよ。

でも、スーパーの店長がすごくいい人で、「店内で好きに練習していいよ」と言ってくれたんだけど、初めて乗ったときに思いっきり棚に突っ込んでしまって……。高さ10メートル、長さ20メートルの棚が大きく揺れて、危うく倒れてきそうになったこともあったけどね。

―クリスティアンが年上の女性に恋してしまう場面では、不器用だけど一生懸命女性を喜ばせようとする感じがステキだなと思いました。ご自分と似ているところもありましたか? 


フランツさん
 役を演じるときは、自分と似ているところをつねに探すようにしているよ。僕自身は、女性に積極的にアプローチするときもあれば、急にシャイになってしまうときもあるので、両方の側面を持っていると言えるかな。だから、クリスティアンの不器用でぎこちない感じというのもすごく理解できるよ。

実は、僕は気に入った女性と出会ったとき、頭の中でいろいろと考えすぎて想像を膨らませてしまうと、ものすごくシャイになって動けなくなってしまうんだ。だから、好きになった人がいたら即行動に移すようにしているよ。そうしないと、結局ひとりで家にいることになってしまうからね(笑)。

■ 人の愛し方を学ぶ姿が描かれている

―そういった共通点を感じながら演じていらっしゃったんですね。


フランツさん
 ただ、演じるうえで意識していたのは、彼を理解してから自分との間にスペースを設けること。そして、そこからクリスティアンという人物を成長させていくことが必要だったんだ。ちなみに、僕もクリスティアンのようにプレゼントを贈ったりするのが好きだから、劇中で彼が彼女にケーキをあげるシーンはとても印象に残っているよ。

―そこは女性にとっても、思わずキュンとしてしまうシーンのひとつだと思います。


フランツさん
 この作品は青春を描いているとも思うんだけど、いままで愛を知らなかったクリスティアンが、初めて愛を知り、そこから彼自身が成長していくんだ。これは赤ちゃんが歩き方を学ぶようなものであって、彼も初めて人の愛し方を学んだんじゃないかな。

―フランツさんもクリスティアンのように一目惚れした経験や恋愛で頭がいっぱいになって仕事がおろそかになったことはありますか?


フランツさん
 もちろんあるよ(笑)。ただ、愛にはレシピがないから、準備しておくことができないんだよね。突然やってくるもので、それがいつかはわからないから、僕もどう備えていいかはわからないんだ。

僕は自分の心のなかに“花”をたくさん咲かせていて、好きな女性と出会ったときにそれをあげたいと思うんだけど、いざというときに「花はどこにいったんだろう?」と見失ってしまう。準備をしているつもりでも、素敵な人と出会うとなかなか行動に移せないんだよね。本当に不思議だなと思うよ。

■ 日本では驚くことがたくさんある

―まさにその通りだと私も思います……。では、日本についてもお伺いしたいのですが、今回初めて来日されて驚いたことはありますか?


フランツさん
 驚くことばかりだよ! ドイツもそれなりにきれいだけど、日本はすごく美意識が高いし、整理整頓されているのがすごいよね。たとえば、ドイツなら地下鉄で5人降りて、5人乗るだけで混乱が起きるけど、日本では100人降りて100人乗っても問題なくスムーズに動けているくらいだから(笑)。

あと、今回うれしかったのは、大好きな浮世絵を買うことができたこと、それからクライミングジムで友達ができたことかな。それから、ベルリンにもお寿司屋さんはたくさんあるけれど、「あれはお寿司ではない」と気がつくことができたよ! 日本で食べたお寿司は、涙が出るほどのおいしさだよね。

このあともステューバー監督とお寿司を食べに行くんだけど、きっと2人して泣くことになると思うよ(笑)。

―それでは最後に、ananweb読者に向けてひと言お願いします!


フランツさん
 今回日本に来ることができて本当にうれしく思っているんだ。だから、日本のみなさんにもこの映画を観て欲しいし、気に入ってくれることを願っているよ。そして、また来年戻ってくる予定なので、そのときはぜひみんなでお寿司を食べに行きましょう(笑)!

■ インタビューを終えてみて……。

映画ではミステリアスな印象が強いですが、実際は冗談が好きでとても気さくなフランツさん。ダンサーでもあるだけに、鍛え上げられたスラリとした佇まいが素敵でした。意外にも、「子連れ狼」シリーズがお気に入りというほどの日本好きでもあるようなので、また次回の来日もお待ちしたいと思います。

■ かけがえのない喜びで世界は溢れている!

小さな幸せや人との繋がりで感じられる温もりが、心の中を優しく照らしてくれる本作。人生ではときに絶望に陥ることがあっても、その先にはきっと希望の光があるのだと感じさせてくれるはずです。

■ ストーリー

旧東ドイツにあるスーパーマーケットで、在庫管理担当として働き始めた内気なクリスティアン。そこでは、父親のような存在のブルーノから仕事のいろはやフォークリフトの操縦を教えてもらっていた。

そんなある日、クリスティアンはお菓子担当として働く年上のワケあり女性マリオンと出会い、謎めいた魅力に一瞬で惹かれてしまう。いつしか、2人は親密になっていくのだった……。

■ 温かさを感じる予告編はこちら!



■ 作品情報

『希望の灯り』
4月5日(金)より、Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開
配給:彩プロ
© 2018 Sommerhaus Filmproduktion GmbH

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