「香港大規模デモ」の裏側 中国本土で一切報道されずSNS規制も…
ananweb / 2019年7月30日 20時20分
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「香港大規模デモ」です。
■ 自由か経済発展か。香港内でも分かれる意見。
6月より、香港では「逃亡犯条例」の改正案に抗議を唱え、若者らを中心に大規模なデモが続いています。香港で身柄を拘束した犯罪容疑者を、中国本土へ引き渡すことができるという内容に対して、強く反発しているのです。
香港は150年にわたり、イギリスの植民地でした。1997年に中国本土に返還されますが、返還後も台湾やマカオと同様に、香港は「特別行政区」として、資本主義制度のもと、言論や報道の自由が認められてきました。当時の香港は、世界レベルにまで経済が成長していました。経済発展を目指したかった中国にとって、大事なエンジンだったのです。しかし、この20年の間に中国は急成長をし、深セン(※)や上海などの都市が発展。香港は経済的に失速していきました。中国は一つの国のなかに、社会主義と資本主義が共存する「一国二制度」をとっていますが、ゆくゆくは一本化して国を強固なものにしたい。2014年には、香港の行政長官を選ぶ選挙の候補者を、中国本土の共産党が選んだ人から出す仕組みがとられました。それは民主的な選挙ではないと、香港の若者たちが傘をさして繁華街を占拠する抗議デモを行った。それが「雨傘運動」でした。
中国と香港の司法制度は違いますから、改正した逃亡犯条例の乱用により、香港の民主化運動のリーダーたちが、本土に引き渡されたのち、どういう目に遭うかわかりません。自由を奪われることを恐れて、香港ではデモが行われているのです。これを受け、香港政府は改正を延期することにしましたが、市民は「完全撤回」を求め、デモは続いています。この模様は、中国本土では一切報道されず、SNSも規制がかけられています。香港ではいま起きていることを世界に向けて発信し民主主義を守ろうとしています。その行動から私たちは目を背けてはならないと思います。しかし、その一方で香港のなかでも実業家などデモに対して冷ややかな目で見ている人もいます。商売をしたい人にとっては、中国本土は大事な市場だからです。すべての情報を国に管理されても経済的利益を優先させたいか、自由に発言できる民主的な社会を求めるか。香港は揺れています。
ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN
※センは土へんに川
※『anan』2019年8月7日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)
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