デザイナー・吉田ユニ「唯一無二の“かわいい”の作り方」
ananweb / 2019年11月25日 18時0分
色使いやモチーフはとてもキュート。もう一歩踏み込んでディテールに寄って見てみると、かわいいに収まらない毒やアイロニー、エキセントリックさ、そしてユーモアが詰まっていて、もっともっとその奥が見たくなる。吉田ユニさんの名前を知らなくても、彼女の作品にハッとさせられたことのある人はきっと多いはず。そんな吉田さんの作品が一堂に会する個展「Dinalog」が開催されることに。その唯一無二の“かわいい”の源はどこにあるのか、根掘り葉掘りお話を伺いました。
――吉田さんのご職業は“アートディレクター”であり、“デザイナー”だと思うのですが、例えば画家のような作品で自己表現をするアーティストとは、ちょっとスタンスが違いますか?
そうですね。たぶん私の作品を見て、“自由に作っている”と思う方は多いかもしれませんが、私は企業やブランドの広告、ミュージシャンのCDジャケットなどの仕事が多く、そういうジャンルのビジュアル作りの場合、必ず“言うべき、伝えるべきこと”があります。つまり、お題というか、制約あっての作品なんですね。
――その“言うべき、伝えるべきこと”というのは、広告主や、ミュージシャンの意見であって、吉田さんのお仕事は、それをビジュアルに落とし込み、伝えやすくすること、なわけですね。
そうですね。私自身は、その制約の中で作品を作るのがとても楽しいし、お題があるというのも、クイズを解いているみたいな感じでとても楽しいし、好きなんですよね。制約という枠の中で、どれだけ伝えられるか、いかにギリギリを攻めるか、みたいな感じといいますか。
――つまり、“吉田ユニらしさ”は、謎解きの方法で表現する、と。
はい、そうですね。
――その、謎解きをする快楽に目覚めたのは、この仕事を始められてからですか?
大学のときです。中学から美大の付属に通っていたので授業で油絵とデザインを学んではいたんですが、中学や高校の頃は、それほど具体的な内容ではなくて。大学3年生で初めて広告デザインの授業を受けたときに、それまで自分にとって漠然としたものだった“デザイン”の輪郭が見えて、その“答えを導き出す”感じが、広告デザインはとてもおもしろいと思いました。また、広告ビジュアルって基本的には、たった一枚の絵でどれだけ強く言いたいことを伝えられるか、それが大事なんですが、そこに込める潔い感じにもとても惹かれました。
――吉田さんの“謎解きの解法”はとても個性的だと思うのですが、どんなふうにその解法を導き出すんでしょうか?
なんですかね…、自分も楽しいし、クライアントにとっても、それを見る人にとっても楽しい、そのベストなポイントを探すことを大事にしています。例えば、これかわいいな、おもしろいなと思っても、それが“私だけが楽しい”ものだったら、広告としては成立しないと思うんです。ちょうどいい塩梅を探すというか…。具体的に言えば、ブランドのカラーやそれまでのヒストリー、今の時代の流れ、あとはそのクライアントのファンの人たちがどう思うか…。そんなことを想像しながら、一生懸命とにかく考えるんです。例えばその広告が貼られる場所などが決まっていたら、そこに実際に行って、その前を歩いてみたりもします。それをすると、「こういう感じだったら誰も見ないだろうな」とか、「見るけど気に留められないだろうな」とか、Macの画面と向き合っているときには得られない感覚を得られるので、そういう感覚も大事にしてますね。あと最近だと、CDジャケットの仕事の場合は“アイコンになったらどう見えるか”とかも考えます。ウェブ上だと小さくなったりもするので、小さくても目を引くものや、大きくしたときにまた違った発見ができるアイデアを考えたり。
よしだ・ゆに 1980年生まれ、東京都出身。女子美術大学を卒業後、大貫デザインなどを経て独立。パルコやルミネなどのファッションビルや、ワコール、資生堂などブランドの広告イメージビジュアルを中心に、木村カエラ、CharaなどのCDジャケットも数多く手掛ける。
12月1日まで、ラフォーレミュージアム原宿にて「吉田ユニ展『Dinalog』」が開催中。これまでに仕事で手掛けた作品に加え、撮り下ろしの新作や、また制作の裏側を垣間見られるラフスケッチや撮影に使ったプロップ、さらにはメイキング動画も公開。作品集も刊行される。
※『anan』2019年11月27日号より。写真・小笠原真紀
(by anan編集部)
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