岸井ゆきの、眞島秀和を制し「あー! それ以上はダメです」 そのワケは?
ananweb / 2019年12月17日 20時30分
第一次世界大戦中にオスマン帝国(現在のトルコ周辺)で起きたアルメニア人への迫害。それを題材に書かれた『月の獣』は、家族を失いアメリカへと亡命したアルメニア人の青年・アラムが、同じ境遇の孤児の少女・セタを写真1枚で選び、妻に迎える物語。アラムを眞島秀和さん、セタを岸井ゆきのさんが演じる。
■ 心に同じ傷を抱えた他人同士は、本当の夫婦になれるのか。
眞島:ゆきのちゃんって、一見華奢に見えて実は芯が強い印象なんだよね。だから、少女から大人になっていくセタ役がぴったりだと思って。
岸井:アラムとセタのふたりで担うものが多い作品だから、以前ドラマで共演した眞島さんがアラムで安心しました。そのときたくさん力を貸していただきました。今回もいっぱい頼ろうと思っています(笑)。
眞島:最初に台本を読んだときは、壮大で重たい話という印象を持っていたんですよ。でも実際に稽古が進んでいくと、過去の虐殺事件が背景にありながらも、日常の夫婦の話を描いているんだなって感じてる。
岸井:壮絶な過去を背負っているふたりだけど、軸にあるのは、育った環境の違う人同士がいかに家族になっていくかなんですよね。
眞島:アルメニア人同士で、他に生きていく場所がない境遇は似ているけれど、育った環境が全然違う。
岸井:同じ宗教を信仰しているけれど、セタは、お母さんはキッチンで歌を歌うし、お父さんはベッドで聖書を読みながら寝るような家で育っているんです。でも、アラムは厳粛な家で育っていて。
眞島:彼は“こうあるべき”を強く持っている人で、それをセタに押し付けようとする。そのうち、手に負えなくなってきた彼女に反論されるようになるんですけど、そうなって動揺するアラムが面白くて。
岸井:セタが諦めずにぶつかっていくんですよね。でも時どき力尽きちゃうことがあって、そうなって初めてアラムがハッとするんです。こっちからすると遅い! って(笑)。
眞島:アラムとしては、僕の考えをきっと彼女もわかってくれるはず…だからね。でもそういう部分、男性としてわかるなっていう部分も多いんだよね。外国が舞台だけど、日本人にも共感してもらえると思う。僕がこの戯曲の好きなところは、久保(酎吉)さんのセリフの…。
岸井:あー! それ以上はダメです。私がお客さんだったら、劇場でハッとなりたい!(笑)
眞島:(笑)。では僕は、ハードルが高い芝居じゃないからということだけ申し上げておこうかな。
岸井:私自身、舞台を観るのが好きなんですけど、編集がなく、話が進んでいくその過程ごとお客さんと共有できるところが面白い。映像とは違う空間が広がっているので、ぜひ体験しに来ていただきたいです。
『月の獣』 少女・セタ(岸井)と結婚したアラム(眞島)は理想の家族像を彼女に押し付けようとするが、幼い妻には理解できない。やがて月日が経ち、彼らの前に孤児の少年が現れ…。上演中~12月23日(月) 新宿・紀伊國屋ホール 作/リチャード・カリノスキー 演出/栗山民也 出演/眞島秀和、岸井ゆきの、久保酎吉、升水柚希 全席指定8800円(税込み) サンライズプロモーション東京 TEL:0570・00・3337(月~金曜12:00~18:00) 新潟、兵庫公演あり。
ましま・ひでかず 1976年11月13日生まれ、山形県出身。映画『青chong』でデビュー。近作に映画『愚行録』など。来年の大河ドラマ『麒麟がくる』に出演。
きしい・ゆきの 1992年2月11日生まれ、神奈川県出身。主演映画『愛がなんだ』で注目を集める。来年は映画『前田建設ファンタジー営業部』が公開。
※『anan』2019年12月18日号より。写真・小笠原真紀 取材、文・望月リサ
(by anan編集部)
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