あなたが本当に好きなことは?…本音がわかる「ひとりデート」のススメ #14
ananweb / 2019年12月14日 21時30分
「認められることをこなしているうちに、本音がわからなくなった」。「周りに合わせすぎてしまって、しんどい」。「自分を愛するって、一体どういうこと?」。「毎日苦しい…」。それは全部、”あなた自身を最大級に愛する”ための大チャンスが来ているというサインです! そこで今回はあなたの「こうしたい」を取り戻して、自分を幸せにしてみましょう。
取材、文・土居彩 看板写真・Yumiko Sushitani
【マック・マインドフルネス時代の瞑想探し。「魂ナビ」が欲しい!】vol. 14
幸福の度合いは、自分がどれだけ幸福になりたいかで決まる。 エイブラハム・リンカーン(アメリカ第16代大統領)。
とはいえ「幸せを選択せよ」といわれても、そもそも本当にしたいことや自分の本音がわからない。でも「今のままじゃ、毎日しんどい…」。
■ 本音を知るには、特別なトレーニングがあるんです。
その気持ち、すっごくわかります。本音を知るには、自転車や水泳と同じように特殊な筋力のようなものが必要なのでトレーニングが必要なんです。だから、すぐにできなくて当然。大丈夫です。私たちは親や社会が望むことを小さい頃からずっとやってきたので、「なんでも自分で選んで、好きにしたらいい」と言われても慣れていないし、戸惑うんです。
また、アドラー心理学の“嫌われる勇気”やマインドフルネス瞑想の“ありのままの自分を受け入れる”とはこのところ盛んに言われる言葉ですが、それはわざわざ嫌われ者や変わった人間になることを勧めているわけではないので安心してくださいね。
そもそも本音がわからないというのは、あなたの優しさの表れです。親の期待、学校、会社や世間で要求されるものに応えようと一心になって頑張ってきたから、周りの価値観とあなたがガッチリと合体してどっちがどっちかわからなくなっているのです。だから、まず自分のことを後回しにして「周りの期待に応えたい」と頑張ってきたあなたを褒めてあげてください。
かくいう私も「本音を知る」ために、めちゃくちゃ回り道してきた張本人です。私の場合には「これはしんどい」「嫌だ」という体験をした結果、「私、これ辛いんだ…」「私は怒っているんだ」と認められてようやく「こうしたい」という自分の望みが見え始めました。例えばアメリカで暮らしていたときに白昼堂々強盗に遭ったり、歩道で車に轢かれたり、居留地で死にかけたりと、「頑張って乗り切ることができる」というレベルを超えてやっと、「何を感じている?」「今必要なことは?」「どうしたいの?」と本当に必要なことを自分に確認できるようになったんです。
それは「大切にされたい」「自分はそんな雑に扱われていいわけじゃない」という本音を発動させるための訓練にもなりました。さらに言えば今まで深い心の奥で、いかに自分のことを嫌っていたかを知るきっかけにもなりました。まさに心理学でいう鏡の法則です。
■ 嫌なことは、人生のギアチェンジのチャンス。
悲しい思いやみじめな思いをしたときにしっかりと噛み締めると、求めるものはその逆なんだと本音が見えやすくなります。だからもし今あなたの人生がうまくいっていないように感じるなら「私はどうしたいんだろう?」と本当の気持ちを知るための大事な機会だと捉えてみてくださいね。
いつも同じようなパターンで苦しんでいるならそれはあなた自身がハッキリと「やりたくない」と決意するまで続きます。「これで本当にいいんですか?」「ギアチェンジしませんか?」というインビテーションが来ているのです。
とはいえ、わざわざサバイバル状況に身を置いて本音を探る必要はありません。今回は普段の生活のなかで本音をつかむためのトレーニングをご紹介します。
■ 「これがやりたい!」を始めてみよう。
1. 「私は」と一人称を使って話す。
私はカリフォルニア州ビッグサーにあるエサレン研究所というところに暮らしていたことがあります。そこは1964年に「ゲシュタルト療法」という心理カウンセリングの創設者で精神分析家であるフリッツ・パールズが訪ねて以来、「ゲシュタルト療法」の震源地とされ、当時毎週水曜日に私たち学生向けにグループカウンセリングが持たれていました。そのカウンセリングの手法のひとつに考えや感情を「私は」と一人称で言い換えて話すことで、自分の抱える問題とその対処法を自覚しやすくするというものがありました。
私たちは周りに拒絶されることを恐れて、言いにくいことや重大なことを話すときに、無意識のうちに自分とは関係のない「みんなは」「彼は」「会社は」「◯◯さんは」という三人称を使って責任を回避します。それを「私は」と一人称で話すように変えていくのです。
例えば「有能な人しか会議で発言しても聞いてもらえないだろうから、意見してもムダ」から「私は会議で発言するのが苦手だ。だって、私は拒絶されるのが怖いから」と言い換えます。責任を転嫁せずに「私は」と自分自身について話して、嫌なところも良いところもある自分を正直に受け入れていくことで、本音がつかみやすくなっていきます。
2. ひとりデートをする。
気持ちがやさぐれてきたり、疲れてきたなぁというときに私が行うのはひとりデートです。デート中はあなたは心のなかでひとり二役をします。あなた自身と、あなたに「何が食べたい?」「どうしたい?」と確認してくれて、あなたが思うことや言うことを「わかるよ」と受け止めてくれる理想の恋人です。
もしくは「あなたは〜と思っているのですね」「ではその次はどうしましょう?」と要点を確かめてくれる超有能な秘書かカウンセラーを雇ったと考えてもいいでしょう。理想のパートナー役をするにあたっては、臨床心理学者カール・ロジャーズが考えるカウンセラーに必要な3つの基本的態度が役立ちます。それは以下です。
自己一致(純粋性): (カウンセラー)自身の気持ちに嘘をつきません。また自分が今どんな気持ちでいるのかを常に把握します。
無条件の肯定的配慮: クライエント(患者)の考え方や捉え方を受け止めて尊重します。
共感的理解: クライエントが感じることを自分のことのように親身になって聞きます。でもそれにのめり込んでしまわないこと。
■ 自分の欲求は、まず自分で満たそう。
ロジャーズは誰もが自分の力で自分のことを理解できるので、カウンセラーは助言をするよりもその成長を促す環境を提供する存在だと考えています。私はこのひとりデート中は「自分がそれをしたい!」と思ったらすべて応じてあげるようにしています。例えばロゼのシャンパンをきれいなグラスに入れてお風呂で飲んでみたり、お気に入りのコーヒー豆を挽いて丁寧にコーヒーを淹れてみたり、鉄板で元気になる映画を観たり本を読んだり。クリスマスがひとりぼっちかもと焦っている? それは自分を最大級に愛するためのまたとない機会です! 今からワクワクするようなひとりデートのプランを練ってみましょう。
あなた自身を愛するとは、あなたのお気に入りを発見することです。自分を満たすとは、自分でお気に入りの世界を完成させていくことなのです。
ちなみに映画『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング』は、ぽっちゃり目でブスな自分にコンプレックスまみれだった主人公が頭を打ったことで絶世の美女だと自分のことを錯覚するようになって大暴走するというラブコメです。アメリカから帰国する機内で観たのですが「私、ありのまま、OK!」と勇気づけられて大号泣しましたよ。
一人称を使って話すことも、ひとりデートも自分の気持ちに腹をくくるということです。蓮の花はドロドロした泥を栄養にして美しく咲いています。ダメも良いも本音も含めたそのままのあなたに価値がある。そこで「私を認めて!」「私を愛して!」と誰か他の人を使って承認欲求を満たすのではなく、まずは自分でそれを満たしてあげましょう。そうやって少しずつ自分自身に戻っていくことで、今まであなたを縛ってきた壁もしだいに壊れていきますよ。
■ 土居彩
編集者、翻訳者。株式会社マガジンハウスに14年間勤め、anan編集部、Hanako編集部にて編集者として、広告部ではファッション誌Ginzaのマーケティング&広告営業を務める。’15年8月〜’17年5月、カリフォルニア大学バークレー校心理学部にて、畏怖の念について研究するダチャー・ケトナー博士の研究室で学ぶ。’18年9月〜’19年1月、7月、ニュー・メキシコ州サンタフェにあるウパヤ禅センターに暮らしながら、ジョアン・ハリファックス師に師事。現在は、書道家・平和活動家、13世紀の道元禅師を初めて英訳し欧米に伝えた禅研究家の棚橋一晃氏の著書『Painting Peace(平和を描く)』(シャンバラ社)を翻訳中。恩人たちに支えられ続けながら、会社を辞めて渡米奮闘したドタバタな当時の様子を綴ったananweb連載『会社を辞めて、こうなった』も。
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