“異常気象”で私たちができることは? 堀潤に聞いてみた!
ananweb / 2020年1月3日 19時30分
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回はスペシャル版として、堀潤さんが“異常気象”についてイラストレーター・五月女ケイ子さんにレクチャー!
■ 想定外の異常気象は今後も起こるでしょう。10年後の気象変動を抑える行動を。
五月女:2019年は台風15号や19号があり、大きな被害も出て怖かったです。台風の進路が昔と変わったんですか?
堀:そうなんです。気温や海水温の上昇で、最近の台風は勢いを失わないまま本州を直撃するようになりました。千葉など、被害を受けた地域の停電があれほど長引くとは想像していませんでしたよね。
五月女:今後、住むところも考えないといけないなと思いました。あの時期、たまたま小学生の娘の学校の授業の一環で、1970年代に起きた多摩川の狛江水害のことを調べていたんです。また、私は2005年の集中豪雨で事務所のマンションの1階が浸水した経験もしていたので、少し覚悟ができていたのかな? と思います。
堀:知識や経験を持っていると対処しやすいというのはありますね。どの災害現場に行っても、みなさん「まさか自分が被災者になるとは」とおっしゃいます。避難指示が出ていても、なかなか避難所に行こうとしない。それは災害を経験していないからなんです。正常性バイアスがかかり、大丈夫だと思い込んでしまう。強度のストレスから脳が情報をシャットダウンして、サイレンの音が聞こえなくなってしまうこともあるそうです。
五月女:それは怖い…。
堀:渦中にいると、正しい判断ができなくなる可能性があることは知っておいたほうがいいですね。
五月女:警報も、あまり頻繁に鳴ると、慣れてしまいそうです。
堀:今年は「数十年に一度」といわれる大雨警報が毎日のように出ました。気象庁にとっても想定外の出来事。今後も未体験の異常気象が起き得るでしょうから、お役所の言うことに従っていれば大丈夫、とは限らないと思います。
五月女:100年単位くらい、長い目で対策を考えることもきっと必要なんでしょうね?
堀:はい。都市に人が集中しすぎなのも問題だと思います。都市に人が集まるほど、地方が犠牲になってしまう。2019年の台風も、多摩川は氾濫しましたが、利根川や荒川はギリギリのところで止まりました。それだけ自治体が東京23区を守ろうと事前に投資していたからです。ところが、インフラ投資がなされていない東北や北関東は毎回水害被害が出てしまう。
■ 消費者の価値観が変われば、企業も環境対策を積極的に。
堀:気候変動は、10~20年前といまを比較すると実感できます。異常気象の原因は諸説ありますが、地球温暖化も大きな要因の一つ。しかし、グレタ・トゥーンベリさんが国連で泣きながら温暖化対策を訴えても、トランプ大統領は冷ややかなコメントをするなど、産業の敵のように捉えています。でも、放置していたら、本当に手遅れになってしまいます。
五月女:私たちはどうしたらいいんですか?
堀:環境を破壊しているのは圧倒的に企業活動。ビジネスの世界では、環境や人権を脅かす企業には出資しないというESG投資が出てきています。個人では、フェアトレード商品や、生産から消費までの物流の流通経路が追跡できるものを選ぶといいでしょう。
五月女:「◯◯さんが作った××」と顔写真入りで売られているお米や野菜みたいなものですか?
堀:はい。すると自然と近くで生産されているものになり、配送にかかるCO2排出も減らせるかもしれません。いままでは環境よりも安さが優先されていました。でも、私たち消費者が、環境を考えた生産者のものを積極的に選ぶようになれば、企業も環境を考えざるを得なくなります。それと脱プラスチックですね。マイバッグやマイタンブラー、マイストローを持ち歩くとか。
五月女:マイストロー?
堀:シリコン製でハサミで切れるので、好きな長さに調節できます。洗うのが面倒くさいという意見はありますが、そもそも「面倒」という思いが、効率・合理主義を加速させるすべての元凶でしょう?
五月女:そうだ! その通りです。
堀:これからは「手間のかかることにこそ価値がある」と思えるようになるといいですね。その価値観が多数派になれば社会は一気に変わると思います。
堀 潤さん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」主宰。シリア、朝鮮半島、香港、沖縄などを取材した映画『わたしは分断を許さない』が3月7日に全国公開。
五月女ケイ子さん イラストレーター。オンラインストア「五月女百貨店」では、新年にふさわしいおめでたいアイテムを多数とりそろえ。作品集『五月女ケイ子 ランド』が好評発売中。
※『anan』2020年1月1日‐8日合併号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 取材、文・黒瀬朋子
(by anan編集部)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
BOOK 台風予測の番人、実測値で真の姿観測 小型機で「眼」に貫入飛行 気象学者・坪木和久さん『激甚気象はなぜ起こる』
zakzak by夕刊フジ / 2024年11月23日 10時0分
-
台風襲来が続くフィリピン ユニセフ、子どもたちへの支援を急ぐ 【プレスリリース】
PR TIMES / 2024年11月16日 18時45分
-
この20年で自然災害による影響はどう変化? 気候変動リスクで考えるべき「未来」
ウェザーニュース / 2024年11月10日 5時11分
-
避難所ではコンセントが大人気? 子どもに“非常時の電気なし生活”を教えるには
PHPオンライン衆知 / 2024年11月5日 0時0分
-
豪雨×地震×豪雪で被害が拡大した新潟県中越地震から20年「来たるべき複合災害に備える10のポイント」を公開
PR TIMES / 2024年10月24日 12時45分
ランキング
-
1とんでもない通帳残高に妻、絶句。家族のために生きてきた65歳元会社員が老後破産まっしぐら…遅くに授かった「ひとり娘」溺愛の果て
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月21日 8時45分
-
2紅白「旧ジャニ出演なし」に騒ぐ人の"大きな誤解" 出演しない理由についての報道の多くがピント外れ
東洋経済オンライン / 2024年11月22日 13時30分
-
3「洗濯離婚」や「エアコン離婚」が起きる納得の理由 熟年離婚の引き金となるのは「ささいなこと」
東洋経済オンライン / 2024年11月22日 16時0分
-
4小泉孝太郎がやっている「納豆の最高においしい食べ方」 タレ半分、“あるもの”をたっぷり
Sirabee / 2024年11月22日 16時15分
-
5余命1年で入院「病院食」のレベルの高さに驚いた 限られた予算で豊富なメニューをそろえる創意工夫
東洋経済オンライン / 2024年11月23日 9時40分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください