家入レオ、月9主題歌は「自分の魂と身を削って完成した」新曲
ananweb / 2020年1月19日 21時0分
音楽をこよなく愛する、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。【音楽通信】第25回目に登場するのは、25歳になり、さらに表現の幅を広げて歩み続けるアーティストの家入レオさん!
写真・大内香織
■ 25歳でやっと魂の土台ができあがった
【音楽通信】vol.25
2012年2月、17歳のときにシングル「サブリナ」でメジャーデビューした家入レオさん。同年10月にリリースした1stアルバム『LEO』はオリコン2週連続2位を記録し、第54回日本レコード大賞最優秀新人賞ほか数多くの新人賞を受賞、以降も数多くのドラマ主題歌やCMソングなども担当されています。
そんな家入さんが、2018年以来2度目となる月9ドラマ『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』(フジテレビ系 毎週月曜午後9時)の主題歌「未完成」を2020年1月29日にリリースされるということで、お話をうかがいました。
ーー2019年の12月13日に25歳のお誕生日を迎えられましたね。心境の変化はありましたか。
「女性は25歳でターニングポイントがくるよ」と先輩方に言われていたのですが、確かにそうだと思いました。
ーー先輩方というのは、まわりの年上の方から?
はい。もちろん業界の方からも、そうじゃない方からも言われました。あと同世代の友人たちも、25歳は自分の人生を決める年という印象があります。例えば、結婚を決めることだったり、就職して大変だった新入社員のときから2、3年経って社会に慣れてきて、「じゃあここから自分は何がしたいんだろう」と己と向き合う時間をみんな持っていたりする気がしますね。
私自身、24歳は苦しかったし、楽しかったんです。人生には仕方のないこともあるという“負け”を知ることもありましたし、やっと魂の土台ができあがって、より人間くさくなった1年だったと思います。
ーー24歳から25歳と歳を重ねるにつれて、ご自身の中に余裕ができてきたのでしょうか。
そうですね。自分の置かれている環境をあらためて客観視できるようになっていったのかもしれません。以前は、光の中にいるのに、自分でサングラスをかけて、ずっと「真っ暗だ、真っ暗だ」と言っていた気がします。物事は見方次第、心の持ち方次第で、変えていける。そう考えるようになってから毎日が楽しいです。24歳は、いままで自分のことしか考えずに生きてきたんだなと、自分の弱さを感じた1年でしたね。そして、実は愛にも包まれていたんだと気づきました。
ーーそれに気づける人もそんなに多くはないと思います。
気づくことが遅いか早いかは、ひとりひとりタイミングが違うと思うので、それぞれの人生の中で神さまなのか、目に見えないものに導かれているように感じるときがあるはず。私よりもっと早くに気づきを得ていた人もいると思いますし、少し後になって、「あれはこういうことだったのか」とわかる人もいると思うのですが、私はいまのタイミングだったのかなと。そのおかげで、ひとりでがんばらなくなって、肩の力が抜けました。
■ いまの自分らしさが表れている「未完成」
ーー2020年の1枚目となる、16枚目のニューシングル「未完成」が1月29日にリリースされますね。この曲に込めた思いを教えてください。
今回、ドラマ『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』の主題歌のお話をいただいて、書き下ろしをさせていただきました。思い入れのある前作に引き続き、関わらせていただけることがすごくうれしいです。
以前からご一緒させていただいている作曲と編曲ご担当の(Jazzin’park)久保田真悟さんとは、信頼関係がすでにできあがっているので、そこからまた作品を生み出すときに、どういうものを世の中の人に届けたら驚いてくれるんだろうなと考えました。昨年の夏頃からずっと曲を作っていて、出し切ったと思います。
ーーお時間をかけて作っていらっしゃったんですね。
ドラマ主題歌のお話をいただいて曲を作っても、実はそう簡単には決まらないんですよね。そのディスカッションを含めて楽しんでいます。タイトルの「未完成」というワードは、すごくいまの自分らしさが表れていると感じています。この曲は、初めて、伝えたいことがわからないまま制作に入ったので。
試行錯誤をしながら、いろいろな角度から提案をさせていただいて、主題歌を作りながら自分の人生も平行して展開していくわけです。そこで「このいまの気持ちがなんなのかハッキリとはわからないけれど作品にしたい」「伝えたいのに何を伝えればいいのかわからない」という状態で、制作に入りました。
ーーこれまでは最初に楽曲のテーマを明確にしてから制作されていたのですか。
いままではテーマが明確でしたし、それほどはっきりしていないときでも、作りながら、終わった後に「自分はこういうことが言いたかったんだ」とピントが合っていました。でも今回は、ミュージックビデオの撮影も終わって、本番のレコーディングも終わって、マスタリングまでいった後でも、気持ちをひとことで言い表すのがすごく難しいんです。
例えば、絵の具の色だったら、赤、青、緑、黄、黒、白と、もう色をどんと出してそれをぐちゃぐちゃに混ぜるような感じです。
でもそれが“未完成”ですし、「美しくなくていいんだ」と思って、今回は曲を出せたから。そんな自分も受け入れて、ちゃんと自分らしく生きていこうと思って作った曲です。確実に自分の魂と身を削って完成しました。
ーーさまざまな感情を受け入れて、そのまま出せるようになったのは、24歳から25歳になっていくにつれて、楽曲制作にも余裕を持ったスタンスで携われているということでしょうか。
そうですね。ドラマの脚本を読ませていただいても、過去にトラウマがあったり心の傷を受けたりした人が、いまこの時を生きているのに後ろ髪を引かれる思いでいて、いまを生きていないんです。過去を消化するために、いまを生きている。
私もそういう気持ちになったこともあったのですが、次第にいろいろな自分を認められるようになりました。「そういうところで傷ついちゃうよね」って俯瞰で見られるようになったといいますか。「いいよもう、これが自分なんだもん」って、いまは思えるんです。
ーー前とは違うステージにいるんですね。
はい。これからもっといろいろな人に関わって、もっと削られて、もっと自分として生きていきたいなと思います。
■ 24歳への思いはミュージックビデオの現場に置いてきた
ーー「未完成」はドラマ主題歌ということで、制作側からのリクエストは何かありましたか。
ありましたね。制約があるからこそ、自分が曲で何を伝えたいのかがわかるところもありますし、その環境の中でどうメッセージを発信していくか、ひとつひとつがとてもいいハードルになりました。
トラックダウンの現場に、ドラマのプロデューサーさんにも来ていただいたのですが、あらためてお会いしたことで発見がありました。当たり前のことなのですが、電話やメールだけで話しているよりも、会うことで相手の生活や人柄がより見えてきて、より愛を持って接することができたのです。
結果、いいところに着地しましたね。相手とひとりの人間同士で関わることって、大事だと思いました。
ーー「未完成」のミュージックビデオでは、家入さんの顔がアップになるシーンがあって印象的でした。どのようなコンセプトで撮影されたのでしょうか。
昨年アルバム『DUO』のツアーで全国をまわらせていただいて、その映像作品「DUO ~7th Live Tour~」を12月にリリースさせていただいたのですが、映像作品と同じ監督に今回のミュージックビデオもお願いしました。
「未完成」は本当に音楽があってよかったと思った作品で、ミュージックビデオでも自分のありのままをむきだそうと考えて撮影に挑んでいます。衣装を着ているシーンもあるのですが、メイクもほとんどせずにアップになるシーンも撮影しました。
あのシーンは、楽曲への気持ちがあふれでてしまったのですが、そのくらい気持ちの入ったいいミュージックビデオになったと思います。誕生日の前日から撮影していて、そのまま現場で誕生日を迎え、24歳への思いを全部現場に置いてこれたので、とてもいい25歳を迎えられました。
■ カップリングの2曲に込めた思い
ーー2曲目に収録された「Unchain」はメランコリックな印象ですね。
24歳、25歳という、同世代でも自分のアイデンティティを探しているような迷いの時期に完成した曲です。前からずっと大事にしていた曲で、今回「未完成」とともに世に出しました。
ツアーのサポートメンバーでベースを弾いてくれている須藤優さんと、数年前からトラックのやりとりをしているなかで、「曲を作ったんだけど聴いてみてくれる?」と言われてできた曲です。
“クオーターライフクライシス”という、20代後半から30代に訪れる幸福の低迷期をさす造語があるんですが、それに関する記事をネットニュースで読んだのがきっかけとなって歌詞を書きました。
ーー3曲目の「Every Single Day」は以前からライブでも演奏されていますね。
ファンクラブイベントで、チェロとアコースティックギターとパーカッションという編成にして、リアレンジしたライブが好評だったんです。今回はあらためて、作品としてもお届けしました。
「Every Single Day」は、2016年に発売した『WE』というアルバムに入っているんです。そのときもさまざまな思いがあって書いた楽曲だったのですが、歌っていていまのほうがしっくりくるというか。過去の自分から未来へ向けて、「あなたこれからこういう気持ちにまたなっていくよ」という予感に満ちた曲なんです。音源として、今回この曲をセレクトしました。
ーーもしかしたら何年か後に、さらにこの歌がしっくりくるときがあるのかもしれませんね。
そうかもしれないですね。曲を作ったときは作ったときで、歌詞にあるような状況がちゃんとあったんですが、いまのほうがよりわかるといいますか。今後歌っていくにつれて、また何か感じることがあると思います。
■ カバー曲には最大限のリスペクトをはらって歌う
ーー誕生日企画では、ファンの方に、家入さんに歌ってほしいカバー曲のリクエストを受け付けていますね。過去にはシンディ・ローパーさんや中森明菜さんなどのカバー曲を歌っています。
そうなんですよ。誕生日に、LINE LIVEをやらせていただいて、そこでデビュー日の2月15日を締め切りにさせていただいて、家入レオに歌ってほしい曲を大募集しています。リクエストしていただいた曲は、2020年中に何らかのかたちにできたらなと思っているので、どしどしご応募いただけたらなと(笑)。
ーーカバー曲を歌うときは、原曲を意識されますか。
原曲には、最大限のリスペクトをはらいながら歌っています。カバーって、私ひとり分の解釈をみなさんに広げることだと思うんです。曲には人それぞれの解釈があると思いますが、私はこの歌詞とこのメロディをこう感じて歌っています、って。
■ いい本も読みながら、いい音楽を届けたい
ーー話は変わりますが、家入さんのインスタグラムを拝見すると、読まれた本がアップされていることもありますが、読書がお好きなのですか。
本がすごく好きで、人からおすすめされたものも読みますし、本屋さんの空間が大好きなんですよ。並んでいる本のタイトルを読んでいくだけで、心が踊ってしまいます。このタイトルどういう発想から生まれたのかな?、自分にはないアイデアだなとか。常に言葉と遊んでいるんです。「未完成」ができたときも、この曲にぴったりくる小説のタイトルどんなのがあるだろう? と、休日に本屋さんに行きました。
すると、本屋でパッとみたタイトルに印象的なものがあったんです。それは好きな作家でもある村上春樹さんが翻訳をしている、グレイス・ペイリーというアメリカの作家が書いた「最後の瞬間のすごく大きな変化」(文春文庫)という、短編を集めた小説。そのタイトルを見たときに「わかる、この感じだ、未完成って!」とビビビときました。
そうやって自分がもやもやしている気持ちにぴったりな本のタイトルから、その本を借りたり買ったりすることが多いです。
ーー本は特別な存在なんですね。
そうですね。活字を読んでいると、落ち着きますし、安心します。それで紙の書籍を買っちゃいますね。これからもいい本を読んだりしつつ、いい音楽を届けていければと思います。
■ 取材後記
クールビューティな印象のある家入レオさん。取材現場では、力強い瞳がきらきらと輝き、すてきな笑顔も見せてくださいました。25歳になって、これからさらに表現者としての幅が広がっていっている家入さんのニューシングルをまずはチェックしてみてくださいね。
■ 家入レオ PROFILE
1994年12月13日、福岡出身。13歳で音楽塾ヴォイスの門を叩き、青春期ならではの叫びや葛藤を爆発させた曲「サブリナ」を完成させた15歳のとき、音楽の道で生きていくことを決意。翌年、単身上京し、都内の高校へ通いながら、2012年2月に「サブリナ」でメジャーデビュー。10月、1stアルバム『LEO』をリリースし、オリコン2週連続2位を記録する。第54回日本レコード大賞最優秀新人賞他数多くの新人賞を受賞。初ワンマンツアーは全公演即日完売。
2013年春、高校を卒業。以降、数多くのドラマ主題歌やCMソングなどを担当。2017年2月、初のベストアルバム『5th Anniversary Best』を発売。4月、初の日本武道館公演は即時完売、大成功。2018年8月、月9ドラマ『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』(フジテレビ系)の主題歌「もし君を許せたら」がロングヒットを記録するなか、12月にはライブ映像作品「TIME ~6th Live Tour~」を発売。
2019年1月、映画『コードギアス 復活のルルーシュ』のオープニング主題歌「この世界で」をリリース。2月24日は7周年記念の大阪城ホール公演を開催。4月、アルバム『DUO』リリース。5月から“家入レオ 7th Live Tour 2019 ~DUO~”(全20公演)を開催し、ファイナルを初のワンマンとなる幕張メッセ国際展示場9.10ホールにて大成功を収める。2020年1月29日、月9ドラマ『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』(フジテレビ系 毎週月曜午後9時)の2度目となる主題歌「未完成」をリリース。
■ Information
New Release
「未完成」
(通常盤)
01.未完成
02.Unchain
03.Every Single Day(Acoustic Version)
04.未完成(Instrumental)
05.Unchain(Instrumental)
2020年1月29日発売
(通常盤)VICL-37518 ¥1,200(税別)
※CDのみ。
(初回限定盤A)はCD+DVD。
VIZL-1719 ¥1,800(税別)
※CD収録曲はすべて共通。
※DVDはAcoustic Sessions Movie5曲収録。
(初回限定盤 B)はCD+DVD。
VIZL-1720 ¥1,800(税別)
※CD収録曲はすべて共通。
※「未完成」のMusic Video、Music Video Makingの2曲収録。
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