BiSH生みの親・渡辺淳之介 “過激なプロデュース”の裏側とは?
ananweb / 2020年1月12日 18時30分
話題のコンテンツや作品の裏には、自由な発想と旺盛な意欲でモノ創りに打ち込むキーパーソンの存在あり。
観る人に胸のザワつきや違和感を与え、強烈に心を惹き付ける。いまハマる人が続出している超人気グループ・BiSHをはじめ、ただキラキラしているだけじゃない新感覚のアイドルを数多く手がけているのが、プロデューサーの渡辺淳之介さんだ。
■ “過激なプロデュースは、売りたい一心で生まれたもの”
渡辺さんは学校が嫌いで高校を中退、自分には音楽しかないという思いからレコード会社に入社。社長の鞄持ちを1年半した後、「好きなことをやっていいよ」と言われて創ったのがBiSだった。
「コンセプト的なものは、特にありませんでした。ただ、僕はセックス・ピストルズが昔から大好きなのですが、その陰にマネージャーでありプロデューサーであるマルコム・マクラーレンという人がいて、彼のおかげでバンドがあの形で成立していたことをすごくカッコいいと思っていて。その関係性に着想を得ました。最初はバンドがやりたかったけど、メンバーの女の子たちは作詞作曲ができないので、バンドよりアイドルのほうが、自分のプロデュースを色濃く反映できるとも思いました。というのも、一緒にやっている松隈ケンタという音楽プロデューサーがいるのですが、僕は彼の音楽が好きで、それをどうカッコよく伝えるかということを大事にしています。言い方は悪いですが、アイドルの子たちは、そのための装置のようなもの。でも、逆に言えば、彼女たちにとっての僕たちも、後に羽ばたくために使う装置ですから。お互いに利用し合っている関係だと思います」
また、「いまのアイドルは自由度が高いですよね」と渡辺さん。
「ゴリゴリのパンクバンドが急にラブソングを歌うと引かれるけど、アイドルは何をやっても許される。自由度の高さは魅力」と話す。しかし、そんな時代の中でも、渡辺さんがとる戦略には過激なものが多い。特に、BiSのファーストシングルである「My lxxx」のPVは、全裸のメンバーが樹海を走り抜けるという衝撃的なもので、話題をさらった。
「当時、BiSはインディーズだし、お客さんが100人くらいしかいなかった。“とにかく知ってもらいたい”という一心しかなかったし、必死で創りました。100kmマラソンなども行いましたが、攻めたことをしたいとは一切思っていません。名前や曲が売れるなら、王道の曲や売り方でいいと思っています。過激なことをしていても、みんながついてくるのは、彼女たち自身が面白がっているからじゃないですか。普段からほとんど制限を設けず、言いたいことは言ってもらうようにしているから、“やらされている感”がなく、“みんなで創っている感”が大きいのかもしれません」
いまや、数えきれないほどのグループが存在するアイドル界。今後の展望を尋ねてみると。
「いま、アイドルブーム自体は薄くなっていると思います。ものすごく売れているグループはいるけど、それを下から追い上げていく層がいない。売れていないグループとの間に大きな開きがあります。その中間層となる人が出てくると、盛り上がるのではないでしょうか。やっぱり、シーンというものは、1か所だけでは創れないですから。以前、でんぱ組.incとBiSが“サブカルチャー最大手アイドル”といわれ、一緒にライブをしたりと盛り上げていたけど、そんなふうに、別軸で変なやつらが同時に存在しないとダメなのかもしれない。僕と一緒にシーンを盛り上げてくれるような、ヒーローの台頭を待っています」
わたなべ・じゅんのすけ WACK代表・プロデューサー 1984年10月23日生まれ、東京都出身。BiS、BiSH、EMPiREをはじめとする、アイドルグループのプロデュースを担当。つばさレコーズに入社した後、2014年に独立してWACKを立ち上げる。’18年には自身のブランドである『ネグレクトアダルトペイシェンツ』を立ち上げたことでも話題となった。
※『anan』2020年1月15日号より。写真・内山めぐみ 取材、文・重信 綾
(by anan編集部)
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