“ザツダン”に“上司をあだ名”で呼ぶ企業も チームワークのつくり方
ananweb / 2020年1月25日 20時0分
最近、日本のチーム作りでも重視されてきている“心理的安全性”。一人ひとりが恐怖や不安を感じず、安心して発言や行動できる状態を指し、チーム力を高めるために最も重要なファクターとされる。
Googleの日本支社で人材育成や組織開発を行っていたピョートル・フェリクス・グジバチさんと、チームワークのコンサルティングを行っているなかむらアサミさんにお話を聞き、企業による実践例を教えてもらいました。
コミュニケーションが活発で、誰もが自由で、やりがいを感じながら働ける職場作りの効果を紹介。チームや会社で制度化するのが難しい人でも、気軽に試せるアイデアも提案!
■ 企業はどうしてる? 実践例に学ぶ心理的安全性の高め方。
■ 【サイボウズ】心理的負担を取り除く週1回30分の1on1
ソフトウェア開発会社のサイボウズでは、離職率を28%から4%まで下げる施策のひとつとして、週1回30分、上司と部下が1対1で対話する時間を設けた。
「そのシステムを弊社では『ザツダン』と呼んでいますが、その名の通り、その時間は何でも話してOK。目的は評価ではなく、人間関係を深めることにあります。たとえば『子供がケガしたので在宅勤務が増えそう』と言っておけば、チームから急に在宅を始めたとは思われませんし、言った本人も状況を理解されている安心感があります。メールなど文章だと素っ気なく伝わることもあるので、心理的な負荷を取り除くには、温度感が伝わる対面での会話が理想的です」(なかむらアサミさん)
ワンポイント
立ち話でも上司や同僚の興味のあることを入り口に雑談を心がける。関係性ができてきたら、ランチに誘うのもいい。
■ 【資生堂】上司にも話しかけやすい! フリーアドレス
横浜・みなとみらいに、コスメカウンターやカフェを併設した研究複合施設「S/PARK」をオープンした資生堂。オフィスエリアではフリーアドレスを採用。
「以前は上司は部屋の一番奥にいて、話しかけづらかったのですが、今はチームリーダーも部長も自席を持たず、自然と新人の隣に座ることもあります。上司との距離が縮まって、心理的ハードルもかなり低くなり、緊張せず話せるようになりました。初めて話した隣の席の人からヒントを得たり、部署を超えたコラボも増えつつあります。また、お客様が化粧品を試せるコーナーを通りかかるとリアルな声が聞こえてきて、研究員の刺激になっています」(S/PARKコミュニケーショングループ・圷真理子さん)
ワンポイント
おやつを置いて、人が集まるコーナーを作ってみる。可能なら上司のデスクは、話しかけやすい通路側にしてもらう。
■ 【ロート製薬】カジュアルな呼び名で心理的距離が近づく!
ロート製薬では‘06年から、入社時に自分でニックネームを決めるルールを実施。
「仕事上では、年次や役職に関係なく対等であることを大切にするのが目的です。会長の山田邦雄も『邦雄さん』という社内での呼び名“ロートネーム”があり、『○○っち』といったカジュアルな呼び名にする社員もいます。導入後は、各自が実現したいことや気持ちを表現することへのハードルが下がりました。その結果、新しいアイデアが出やすくなり、それを認め、どんどん進めていくオープンな雰囲気に。初めて仕事を共にする相手でも、“ロートネーム”の由来を聞いたり、円滑なコミュニケーションのきっかけになっています」(広報・CSV推進部・岡田真由香さん)
ワンポイント
部長、主任など、堅苦しい雰囲気が出る役職名で呼ぶのをやめてみる。許可を取った上で、「さん付け」に。
■ 【アッカ・インターナショナル】認められるのが嬉しいピアボーナス
従業員同士が、いい行動などに対して報酬を贈り合い、給与と一緒に支給されるピアボーナス。通販業務代行サービスを提供するアッカ・インターナショナルのカスタマーサポートチームでは、1ポイント=5円で制度を導入した。
「主婦のメンバーが家庭の事情で欠勤や早退すること自体はまったく問題ないのですが、代わりを頼む際に気が引け、頼まれる側も目に見えるメリットを実感できていませんでした。制度導入後は、頼む人は気持ちよく休め、代わる人は同僚からの感謝が目に見える形で表れてやる気もアップ。担当が違う人も自分の働きを見てくれている実感がわいて嬉しいと、評判も上々です」(カスタマーサポートチーム・阿保妙子さん)
ワンポイント
助けられたり、メンバーが頑張った時には、感謝やねぎらいの言葉をかけて。ちょっとした差し入れを渡すのも◎。
■ 【フェリシモ】好きなことを通じて関係性を深める部活
小鳥との豊かな暮らしを広める「小鳥部」やヲタ活や推し活を応援する「オタ活部」などユニークな部活が活発な通販会社フェリシモ。
「配属先は選べないけれど、情熱を持って事業に取り組んでほしいという思いから、『心から情熱を感じられることをしよう』と発案されたのが部活です。ノルマはありませんが、将来の事業化を目指すこと、テーマに賛同する人が5名以上集まることが条件。『好き』をきっかけに、部員同士が繋がりを持ち、互いに関心を抱き、会話も増えます。さらに普段から関心のあることなので、アイデアもどんどん出て、自然と仕事のパフォーマンスが上がり、楽しく働けるようになるいいサイクルが生まれています」(広報部・市川美幸さん)
ワンポイント
雑談でメンバーたちの関心事を聞いてみる。好きな食べ物や動画などから共通点が見つかれば、急速に距離が縮まる。
■ 【プロノイア・グループ】「ミーティングは対立する場」と宣言!
コンサルティング会社のプロノイア・グループでは、会議を「誰もがストレートに意見を言う時間」と決めている。
「ミーティングでの対立は、とても有意義な価値観の交換。対立から、相手が仕事上で大事にしていることが見えてきて、議論が深まります。逆にまったく意見を戦わせなければ、相手の本音はわからず、チームで信頼関係を築けません。その都度、ぶつかり合ったほうがよほど生産的です」。意見交換後は、その相手に尊敬の念を示すフォローも欠かさない。「特に強く意見した人に対しては、休憩時間や会議後に、あなたを否定したのではなく、もっと考えを知りたいという気持ちを伝えようと心がけています」(Chief Culture Officer・世羅侑未さん)
ワンポイント
反対意見を言うのが難しければ、賛同やちょっとした意見からでもいいので、必ず一回は発言することを習慣に。
ピョートル・フェリクス・グジバチさん プロノイア・グループ代表取締役。Google Japan時代、アジアパシフィック地域の人材開発に携わる。著書に『世界最高のチーム』(朝日新聞出版)。
なかむらアサミさん ‘06年サイボウズ入社。サイボウズチームワーク総研シニアコンサルタントとして、チームワークを中高生から社会人まで幅広い層に教える活動を行う。
※『anan』2020年1月29日号より。イラスト・加納徳博 取材、文・小泉咲子
(by anan編集部)
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