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恋愛映画の巨匠が説く「人はどんな年齢でも愛し合うことができる」

ananweb / 2020年1月30日 21時30分

恋愛映画の巨匠が説く「人はどんな年齢でも愛し合うことができる」

いつの時代も、いくつになっても、頭を悩ませるのは“男と女の問題”。それだけに映画からヒントを得ることもありますが、今回ご紹介するのは、「まさに恋愛映画の真骨頂!」ともいえる注目作です。それは……。
■ 珠玉のラブストーリー『男と女 人生最良の日々』!


【映画、ときどき私】 vol. 290

記憶を失いかけている元レーシング・ドライバーのジャン・ルイ。過去と現在の狭間で混乱していたが、そんな状況でも思い出すのは、かつて愛した女性アンヌのことだった。症状が悪化する父親を心配した息子は、アンヌを探し出し、2人を再会させることを決意する。

長い空白を埋めるように、新たな愛の物語を始めるジャン・ルイとアンヌ。そして、2人はあの思い出の地へと車を走らせることに……。

1966年に世界中を魅了し、いまなお恋愛映画の金字塔として語り継がれている『男と女』。そんな傑作が50年以上の時を経て、同じキャストとスタッフによって蘇ります。今回は、その奇跡を生み出したこちらの方にお話をうかがってきました。

■ フランスの巨匠クロード・ルルーシュ監督!

これまで数々の恋愛映画を手掛け、“愛の伝道師”とも呼ばれているルルーシュ監督。80歳を過ぎたいまなお、進化し続ける監督に、人生や恋愛の真髄について教えていただきました。

―1作目からかなりの年月が経っていることもあり、劇中でも登場人物たちがこれまでの過去を振り返るシーンがありましたが、監督はこの50年をどのようにとらえていますか?


監督
 まず大きく変わったと思うのは、男女間の関係。つまり、50年前に比べると、男女間において、かなりの不信感が芽生えるようになったということです。実際、男性は前よりも女性を恐れるようになりましたし、女性は前よりも男性に対して信頼感を持たなくなりましたよね。

ただ、私が映画で描いた2人について言うならば、50年前の誘惑しあう関係からより本質的な関係に変化はしているものの、彼らの間では何も変わっていません。なぜなら、2人には偉大なラブストーリーの記憶があり、それが永遠に存在するものだから。そして、それこそがこの物語にロマンチックな香りを付け加えているものでもあるのです。

■ 愛が人を美しくし、そして賢くする

―なるほど。監督は『男と女』シリーズのみならず、これまでも男と女の愛に長年向き合い続けていると思いますが、なぜ男と女の関係に惹かれるのでしょうか? 監督の人生において、愛が与えてくれた影響を教えてください。


監督
 私が愛に興味があるのは、それは人類にとって一番重要なテーマであるから。つまり、人々がもっとも興味を持つテーマが「愛」なのではないでしょうか。だから、私に言わせれば、愛以外すべては、“残念賞”のようなものなんですよ(笑)。

愛には、政治もサスペンスも、裏切りや忠実さも、人生のテーマがすべて含まれているので、ラブストーリーのなかでもそれらを扱うことができるのです。私自身は、「なぜ相手と同じベッドに行くためにこれほど苦労して、もう同じベッドで寝ないためにこれほど苦労しなければいけないのか」とずいぶん考えましたけどね(笑)。

―確かに、愛は難しいものですね(笑)。


監督
 愛とは、素晴らしいと同時に儚いものですが、私はその部分にも興味を持っています。人が本当に恋をしているときこそ、幸福と言えるのではないでしょうか。私はこの映画のなかでも言葉として入れましたが、「人は愛すると美しくなる。愛が人を美しくする。そして、愛が人を賢くする」と考えています。ですから、愛こそが人類にとって本質的なテーマだと思っているのです。

愛がなければ、お金や政治など、そのほかのことに興味を持つかもしれませんが、それは人生においてはスペアタイヤのようなもの。決して本質的なものではありません。自分以上に誰かを愛することができたとき、人はもっとも重要なことをしていると感じられるはずです。

■ 嫌なことがあっても、人生には生きる価値がある

―劇中の2人は年齢を重ねたことによって、恋愛への向かい方にも変化が起きていると思いますが、そのあたりはご自身の思いも反映されているのでしょうか?


監督
 たとえば、1作目の若い2人にとって、人生は自分たちの前にあるものでしたが、本作の2人にとって人生はすでに後ろにあるもの。そういった立場の違いによっても、物事の見方はずいぶんと変わってしまいますよね。私自身も人生のゴールラインが近づいていることを感じているので、あと数本しか映画を撮ることができないこともわかっています。

だからこそ、最後の作品は自分のキャリアのなかで一番面白いものにしたいと思っているのです。つまり、自分の人生で役に立ったことは何なのか、人生がどんなものであったのかを示せるような作品にしたいので、なるべく前向きな思いを描きたいと考えています。

―そんなふうに、モチベーションを維持し続けられる秘訣を教えてください。


監督
 もちろん、嫌なことも悲惨なこともたくさんありましたが、人生はマイナスよりもプラスのほうが多く、生きるだけの価値があるものだと思っています。私自身が一番幸せに思うのは、自分の人生に降りかかってくる不運を自らの力で克服したとき。だから、私の人生は、まるで不思議の国のなかで障害物競走をしているようなものなんですよ(笑)。

よく「いまの世界は腐っている」と言う人がいますが、私はそれを聞くことに飽き飽きしています。確かに改善すべきところはありますが、現代の世界は本当に美しいし、素晴らしいものですから。私は母から昔の話をたくさん聞いたことがあるので、原爆を落とされたり、100万人以上のユダヤ人が殺されたりした過去に比べて、今日の世界で生きられることはなんて幸運なんだろうと私は感じているほどです。

■ 恋愛と同じで、人生とも相互関係でいることが大事

―いまでこそ映画監督として世界的な成功を手にしていますが、『男と女』がヒットする前は、破産直前まで追い込まれたこともあったとうかがいました。長年にわたって監督を突き動かしているものは、何でしょうか?


監督
 それは、「人生を愛している」という思いですね。人間同士の愛と同じで、相互関係でなければいけませんが、私が矛盾を含めて人生を愛しているからこそ、人生も私を愛してくれているのです。

これまでにいろいろと難しい時期もありましたが、たくさんの奇跡によって救われてきたので、私は奇跡を信じています。そんなふうに、人生から愛されるためには、まずこちらが人生を愛することが大事なのです。

とはいえ、私は人生に対して浮気をすることがありますが、その浮気相手は映画。ただし、映画に対して浮気をするときの相手は人生なんです(笑)。なので、私にとって、人生が妻で映画が愛人なのか、映画が妻で人生が愛人なのかわからなくなっていますが、私のなかには、人生と映画に対する2つの愛があると言えるでしょう。

そういう思いもあって、私は自分の人生をあまり好きではないという人たちが人生を愛することができるようになる映画を作ってきたつもりです。それくらい人生は本当に美しいものなんですよ。

■ 目こそがすべての真実を語っているもの

―その美しさは本作からも感じられますが、主演を務めたアヌーク・エーメさんとジャン=ルイ・トランティニャンさんの絶妙なやりとりからもそれを垣間見ることができました。演出する際に、意識していることはありますか?


監督
 人が言いたいと思っていることと、実際に口にする言葉とではズレが生じるものですが、それは映画でも同じこと。だからこそ、脚本としてきちんと書かれていても、私は現場で俳優たちが覚えてきたセリフを壊すようにしているのです。なぜなら、暗唱してきたものをただ言うのと、その場で生み出されるものには違いがあるから。

そして、人は口ではどんなことでも言えますが、目だけは嘘をつくことができません。私は俳優がセリフを言っているときに、頭の中では別のことを考えているかどうかは、目を見たらわかります。本当のことは目にしか出ないからこそ、目で訴えかける心理に言葉を近づけ、完全にシンクロするところまで持っていきたいのです。

私は俳優に対して演技指導をしているというよりも、目の演技指導をしているのではないかと思うほどですが、そうすることで、私の求めている真実の香りが漂うようになり、私の映画が持つ特殊性を出すことができるのだと思っています。ですから、人に対して「愛している」と告白をするときは目をきちんと見て言わなければいけないですし、目が言ってなければ意味がありません。それほど、目は心理を語っているもの。だからこそ、私は話を聞くよりも、人々の目を見るほうが好きなんです。

■ 愛という感情が年を取ることはない

―本作は1作目をリアルタイムで観た方からはじめて観る若い方まで、幅広い人に響く作品となっていると思うので、最後に観客へのメッセージをお願いします。


監督
 私がこの作品を作ったのは、1966年の『男と女』を観ていない人たちのためでもありますが、本作はすべての人々に属する物語であるとも考えています。誰もがいつかは年を取りますが、愛という感情は年を取ることはありません。つまり、愛はつねに“現在”なのです。

とはいえ、愛には時間制限があるので、ある程度の時間が経つと、情熱が安楽さへと変わってしまいます。もちろん、居心地の良さというのも、悪いものではありませんが、それはもはや情熱ではありませんし、愛が続いているという幻想になることもあるのです。

本作の主人公であるジャン・ルイとアンヌの場合は、まるでハーフタイムが2回あったかのように休憩時間が長く続いていたこともあり、新たに愛を始めることができたとも言えるでしょう。

私がこの作品で伝えたいのは、どんな年齢であったとしても、人は愛し合えるということ。実際、老人ホームのなかでも素晴らしいラブストーリーは起きているくらいですから。私はこれまでに49本の映画を撮りましたが、それらすべてのテーマが愛だったといっても過言ではないでしょう。

私自身も恋をしていないといい映画は撮ることができませんし、そのテーマに恋をしているからこそ、映画を作ることができるのです。つまり、愛がすべての原動力でもあるので、愛なくして作った映画は、当然のことながら失敗しています。

恋をする相手は、男性でも女性でも仕事でも車でも何でもいいのですが、成功の中心には必ず愛があります。愛がないところに、人は存在することができないですから。


■ 運命の恋が紡ぐ愛に心が震える!

映画でも自身の人生でも、愛を追求し続けてきたクロード・ルルーシュ監督だからこそ描けた極上のラブストーリー。誰もが愛の素晴らしさに触れ、心の奥底に眠る情熱を呼び起こされるはずです。喜び、痛み、苦しみ、そして幸せを与えてくれる“愛の奇跡”を感じてみては?

■ 輝きに満ちた予告編はこちら!



■ 作品情報

『男と女 人生最良の日々』
1月31日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー
配給:ツイン
© 2019 Les Films 13 - Davis Films - France 2 Cinéma

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