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宮沢りえ「どんどん好きになっていく…」心奪われた体験を告白

ananweb / 2020年2月18日 19時30分

宮沢りえ「どんどん好きになっていく…」心奪われた体験を告白

現在、東京都美術館で『ハマスホイとデンマーク絵画』が開催中です。この展覧会では、女優の宮沢りえさんが音声ガイドナビゲーターを担当。今回、美術鑑賞が大好きという宮沢さんに直撃取材を敢行。展覧会の楽しみ方について、お聞きしてきました!
■ 宮沢りえさんがガイド!『ハマスホイとデンマーク絵画』


【女子的アートナビ】vol. 172

『ハマスホイとデンマーク絵画』では、画家ヴィルヘルム・ハマスホイ(1864-1916)の作品約40点と、19世紀のデンマーク絵画を一堂に紹介。これまで日本であまり見る機会のなかったデンマーク美術の世界にたっぷりとひたることができます。

この展覧会の音声ガイドナビゲーターを務めるのは、女優の宮沢りえさん。のちほど、宮沢さんのインタビューをたっぷりご紹介します!

■ デンマークのハマスホイって?

そもそもデンマークってどんな国?ハマスホイって誰?と思われる人も多いはず。

デンマークは、国連の「世界幸福度ランキング」で何度も首位に入る“幸福の国”であり、またおしゃれな家具やインテリアなども多く、デザインの聖地としても知られています。

そんな国で活動したハマスホイは、近年世界的に評価が高まっている画家のひとり。彼は身近な家族の肖像や風景画、古い自宅アパートの室内などをモチーフに、グレーを基調とした色彩を使って美しい世界を描き出しました。

ただ、ハマスホイの絵画は静謐かつ詩的であり、当時デンマークで主流だった室内画とは雰囲気が異なっていたため、国内では評価されるのに時間がかかりました。それでも独自の絵を描き続け、51歳で死去。没後急速に忘れられましたが、1990年代以降、再び評価されはじめ、今ではさまざまな国で展覧会が開かれる注目の画家となっています。

■ 宮沢りえさんにインタビュー!

今回、音声ガイドナビゲーターを担当された宮沢りえさんにインタビューを実施。ハマスホイの魅力やアートについて、語っていただきました。

――まず、お仕事を依頼されたときのお気持ちをお聞かせください。


宮沢さん
 今一番行ってみたい国が北欧で、デンマークもそのなかにあり、文化の高さに触れてみたいと思っていました。でも、行く機会に恵まれなくて……。そんなとき、この音声ガイドのお話が届いて、封筒から展覧会のパンフレットや絵の資料を見たときに、とっても心を突き動かされました。

――実際に、会場でハマスホイの作品をご覧になってみて、いかがでしたか?


宮沢さん
 今の時代、たくさんのものや情報があふれているなかで生活している自分が、なぜ彼の絵にこんなに魅力を感じるのだろうと思ったとき、すごく研ぎ澄まされているからだと気づきました。

過剰なものは何もなく、日常の断片を切り取っただけ。でも、その時間を見つめて画家が描いている作品に本当に感動したし、今の自分にすごく必要なものだと直感的に感じました。

人間にとって本来必要なシンプルな時間がここに流れていると思いました。


宮沢さん
 ハマスホイが描こうとしたその目線の先がとても素敵です。何もない部屋、何気ない奥さんの後ろ姿……。日常のささやかな時間を描き続けています。室内の絵がとても多いですけど、農場を描いた絵でも余計なものが何もない。そのことに対して魅力を感じます。

音声ガイドを担当し、ハマスホイという人が、その時代に異端とされていたけれど、自分のスタイルを変えずに描き続けたことによって認められた、ということを知りました。彼のアーティストとしての存在も、私にとってあこがれる、かっこいい存在です。

■ どんどん好きになっていく…

――この展覧会の中では、どの作品がお好きですか?


宮沢さん
 一番好きなのは、《室内―開いた扉、ストランゲーゼ30番地》。家具も何もない白い扉。すごく好きです。


宮沢さん
 あと、《室内―陽光習作、ストランゲーゼ30番地》もいいですね。窓から差し込む光の位置で、このくらいの時間だろうな、とか想像できます。


宮沢さん
 《聖ペテロ聖堂》も好き。どんどん好きになっていく。ヨーロッパに旅行したとき、都市から離れて電車で地方に行ったりするのですが、ふと歩いていて入ったカフェから見えた景色とか、そういうことが自分の記憶の中にとどまっていて、この絵を見ていると、その時間を思い出します。

決して天気がいいわけではないけれど、その曇天の中での冷たい空気とか、体はコートで暖かいけれど、ほっぺたにさわる空気が冷たかったなとか、そういうことまでも思い出したりできます。


宮沢さん
 ハマスホイの作品ではありませんが、《きよしこの夜》もいいですね。日常の静かな時間のなか、クリスマスのイベントで高揚している子どもたちと大人たち。今の時代はイベントがいっぱいありますけど、そうじゃなかった時代のささやかな幸せだったり、賑やかさだったりがいいなと思います。

■ すごく気合が入って…

――今回、音声ガイドの収録をされてみて、いかがでしたか?


宮沢さん
 自分にとって絵画鑑賞や、美術館に行って音声ガイドを聞くというのは、大事な趣味の、自分だけのいい時間。ですから、すごく気合が入りましたし、ほかのお仕事には申し訳ないくらい気負いがあって(笑)。

自分の、こういうことをしたい、という思いが強すぎて、リズムをつかむまでに時間がかかりました。それくらいうれしい仕事でしたし、うれしい反面プレッシャーがありました。

――こういうこと、とは?


宮沢さん
 邪魔をしない、過剰なニュアンスをつくらない、フラットだけれど、ちゃんと聞いている人に届くような言い方とか、そういうイメージをもっていました。

今の時代、入らなくていい情報も世の中にあふれていると思いますが、その人の人生を豊かにするために知ったほうがいいことっていっぱいあると思うんです。

きらびやかなことにどうしても目が奪われがちだけど、そうじゃないところに本当の本物があるんだよ、ということをこの展覧会で知ることができると思います。

特にうちの娘は、11歳になるのですけど、彼女にとっては、もしかしたら最初は退屈に思えるかもしれない。けれど、この絵を見た記憶は刻まれると思うし、刻みたいと思います。

――お嬢さまとも美術館に行かれるのですか? 絵の楽しみ方について説明はされますか?


宮沢さん
 行けるときは連れていきます。娘には、何がおもしろいかは説明しませんけれど、単純にその絵の前で素通りするのではなく、じっくり眺めている自分の姿を見せるしかない。何を母はそんなに見ているのだろうと、そこから感じてもらうしかない。

言葉で説明したものはあっという間になくなっていくけど、彼女がなぜと思うことが一番大事なこと。そこは自分で考えるのが大事だと思います。

■ 家族で育てているものは…

――デンマークには“ヒュゲ”(デンマーク語で「心地よい雰囲気」の意味)という価値観があり、画家たちは日常のささやかな幸福をテーマに作品を描いています。宮沢さんにとって、日常の幸福とは?


宮沢さん
 すごくいっぱいあります(笑)。植物を育てているのですが、本当に、植木屋さんがびっくりするぐらい大事に大事に育てています。それは家族で分担しているのですが、植物は、今の時期は水も欲しないし葉も落ちている。もう少しすると新芽が出てきたりする。私は新芽フェチで、新芽を見つけるとすごくうれしいのです。

植物がどういう風に一年を過ごすかということで、自分の生きている季節をすごく感じられる。そのことが私はとても楽しいし、今日はこれに花が咲いたと思うだけで、いい一日だなと思えるのです。


宮沢さん
 あと、私の家はキッチンから日が昇るのが見えるのですが、いつも朝は暗いのです。娘のお弁当や朝食を作っている間に朝焼けがはじまって、真っ暗だったのがだんだん白くなってきて、それが朝焼けに変わる……。

朝焼けの時間が一番好きです。花が咲く前のつぼみと一緒で、これからはじまる時間がすごく好きです。

そんな楽しみでもなければ朝6時に毎日起きたくない(笑)。でもそれも、早起きしたことのごほうびだなと思うと、日常のよろこびになります。

■ メッセージを受け取りに来て!

――最後に、読者の方にメッセージをお願いします。


宮沢さん
 本格的にハマスホイとデンマーク絵画を日本でやるのははじめてで、私も正直ハマスホイの作品をハマスホイと認識しながら見たことはありませんでした。今回、その存在を知れたことが自分の人生にとって本当に豊かなことだった、とお仕事させていただいて感じました。

自分が、作り手側ではなく観客として感動したことだから、それを広げたいという気持ちしかないです。これらの絵は今の時代にとても強いメッセージを持っていると思うので、ぜひそのメッセージを受け取りに来てみてください。


■ インタビューを終えて…

東京都美術館の、ほの暗い展示室で実施された今回のインタビュー。絵の前に座る宮沢さんは、ハマスホイの作品世界と一体化したような静謐なたたずまいで、声のトーンも言葉のリズムも美しく、お話を聞きながらそのお姿に見とれてしまいました。

本当に美術がお好きで、だからこそ音声ガイドへの強い意気込みがあったようで、収録への思いを熱く語ってくださいました。

そんな宮沢さんが担当された音声ガイドは、¥560(税込み)で借りられます。私も会場で聴いてみましたが、ハマスホイの絵画と宮沢さんの声の雰囲気がぴったりで、とても聞き心地がよく、美しいアートの旅へと導いてくれました。

ぜひ会場で、宮沢さんのガイドをおともにデンマーク美術を味わってみてください。

■ Information

会期:~3月26日(木) ※休室日は月曜日、2月25日(火)※ただし2月24日(月・休)、3月23日(月)は開室
時間:午前9時30分~午後5時30分 (金曜日、2月19日(水)、3月18日(水)は午後8時まで)※入室は閉室の30分前まで
会場:東京都美術館
料金:一般 ¥1,600/大学生・専門学校生 ¥1,300/高校生 ¥800/65歳以上¥1,000/中学生以下無料
※2月19日(水)、3月18日(水)はシルバーデーにより65歳以上の方は無料(要証明)。そのため混雑が予想されます。
※3月20日(金・祝)~26日(木)は18歳以下(2001年4月2日以降生まれ)の方は無料(要証明)
※本記事の作品写真は、プレス内覧会で主催者の許可を得て撮影しています。
※宮沢りえさん写真©読売新聞
衣装 トップス¥92,000 スカート¥72,000 ベルト208,000 すべて(マルニ/マルニ 表参道 03-3403-8660)、ピアス¥804,000 リング¥407,000 共に(フレッド/フレッド カスタマーサービス 03-6679-2011)

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