過労死やいじめ…日本は“人権”に対する意識が薄い!?
ananweb / 2020年2月13日 19時30分
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「基本的人権」です。
■ 当然の権利なのにないがしろにしていませんか?
昨年11月、トランプ大統領は「香港人権・民主主義法案」に署名しました。これは、香港の自治を認める「一国二制度」が守られているか、米国務省が毎年検証。もしも、香港で人権が侵害されたら、関与した政府関係者には制裁を科すというものです。中国政府はこの法案に反発していますが、その後、香港のデモ隊に対する非道な行為は少し抑えられるようになりました。
人権とは、与えられるものではなく、誰もが等しく、生まれたときから持っている権利です。「世界人権宣言」は第二次世界大戦終了後、1948年に国連総会にて採択されました。皮膚の色や性別、宗教、社会的出身、財産などにより、差別を受けることはない。奴隷にされたり苦役に服したり、非人道的な扱いを受けることもない。住む場所も移動も、どのような発言をしようと基本的には自由とされています。誰もが尊厳を持って、自分らしくいられる環境を皆で守ろうという姿勢です。しかし、国によっては、秩序を守るためにルールとして、表現や移動が制限されているところもあります。人権が侵害される独裁国家に対しては「人道に対する罪」として、国際刑事裁判所で裁くことができます。
日本は、憲法で基本的人権が守られています。すべての国民は法の下に平等で、「自由権(身体の自由、精神の自由、経済活動の自由)」を持っているのです。しかし、会社のために社員が過労死に追い込まれたり、職場内で過度ないじめが起こるなど、人権を脅かされる事件は絶えません。18世紀にフランス革命で人民主権を勝ち取ったフランスや、1800年代に奴隷制度を廃止したアメリカに比べて、日本の民主主義の歴史はまだ70余年。長年「お上の国」として、個人よりも集団の秩序を優先してきたので、人権に対する意識がまだ薄いのです。
先日、日本弁護士連合会は、人権をわかりやすく伝えるオリジナル動画を募った「憲法動画コンテスト」を開催しました。高校生から社会人まで多くの応募があり、入賞作品は日弁連のHPにアップされています。あたりまえの権利である人権について、いまこそ皆で考えたいですね。
ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。映画『わたしは分断を許さない』(監督・撮影・編集・ナレーション)が3月7日公開。
※『anan』2020年2月19日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)
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