「台湾総統選挙」の結果がもたらしたものは? 堀潤がわかりやすく解説
ananweb / 2020年2月19日 21時0分
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「台湾総統選挙」です。
■ 香港の運動が追い風となり、蔡総統が続投。
1月に開かれた、台湾の総統選挙。与党・民主進歩党の蔡英文(ツァイ・インウェン)さんが再選しました。意外に思われるかもしれませんが、日本政府は台湾を国と認めていません。よくオリンピックなどで耳にする「○○の国と地域が参加」という言葉の「地域」に含まれます。日本は1972年に大陸側の中国と国交を結んだため、外交では台湾とは断絶しました。しかし、それぞれに窓口機関を設け、貿易も文化交流も重要なパートナーとして親密な関係を続けてきています。太平洋戦争までの50年間は日本が統治していた時期もあり、とても縁が深い地域。東日本大震災のときには、合計200億円以上の多額の義援金が台湾から送られました。
蔡英文さんは、独立までは求めていませんが、中国政府の謳う「一国二制度」には強く反発しています。蔡政権の前の総統の馬英九さんは親中国派で、中国との貿易を積極的に進めようとしていました。そうすると中国の企業や資本家が台湾になだれ込み、台湾人の仕事が奪われてしまう。台湾の民主主義を守るために学生たちが行ったのが、6年前の「ひまわり学生運動」です。中国の脅威が台湾人に共有され、2016年、中国に強硬な態度を示す蔡英文さんが総統に。以来、中台は緊張関係を続けてきました。しかし、ビジネスにおいては、台湾は中国と深く結びついているので、経済人にとっては、関係悪化は歓迎できません。経済政策の不調により、蔡総統の支持率は2018年の12月には20%台に下がっていました。ところが、香港民主派の政府抗議デモが追い風となり、支持率は再上昇。選挙は圧勝しました。
アメリカは中国を牽制し、台湾と良好関係を築いていますが、台湾を「国」と認めているのは現在、世界で15か国のみ。その多くは中南米の国々と太平洋の島国で、中国の圧力により、その数も減ってきています。日本はいま中国と協調体制に入ろうとしており、4月には習近平氏を国賓として日本に招く予定。いつかは、中国か台湾か、厳しい選択を迫られるでしょう。台湾の問題は、中国の国内事情なので、見守るしかありませんが、人権や民主主義は支持できたらと思います。
堀 潤 ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。映画『わたしは分断を許さない』(監督・撮影・編集・ナレーション)が3月7日公開。
※『anan』2020年2月26日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)
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