性的にゾワリとする場面も…注目作家が描く『最高の任務』に感動!
ananweb / 2020年2月26日 21時0分
小説『最高の任務』について、著者・乗代雄介さんに話を聞きました。
■ 叔母との記憶、家族との小旅行。注目作家が描く、優しい“任務”。
芥川賞ノミネート作を表題作に置く乗代雄介さんの『最高の任務』。収録の2作とも、語り手が書いている文章、という体裁だ。
「主人公がなぜ語っているのか、ということに必然性を持たせたいので、自然とそういう形式になります」
「最高の任務」の語り手は、大好きな叔母を亡くし休学するほどダメージを受けた阿佐美景子。大学の卒業式の後、家族に誘われ北関東への列車の旅に出るのだが、どうも家族には生前の叔母に託された“任務”がある様子…。景子はデビュー作『十七八より』や中編「未熟な同感者」(『本物の読書家』収録)と同じ語り手だが、今回の作品は、
「北関東に出かけては自然描写の練習をしていた頃、アーティストのミヤギフトシさんからグループ展に誘われ、その小旅行のことを短文で書いたんです。それと、その頃モームやランサムなどスパイ活動をしていた作家の本を読んでいたので、その影響も反映されていますね」
旅の道中、景子の過去の日記もひもとかれ、叔母との北関東への小旅行の思い出も重なっていく構造だ。
「同じ場所に向かう時、はじめて行く時と2回目に行く時とはまた違う。そういう記憶を連動させたかった」
作中、実在の本の題名も多数登場。
「その時考えていることを全部入れこむ枠組みを考えるので、実際に読んで影響を受けたものは書きます」
景子はもちろん、教養あふれる叔母や言動が可愛い弟が魅力的。
「周囲の人物はエピソードの集合で作りあげている感覚ですが、主人公は登場人物というより、自分と影響を与え合う存在というか。書いていると日頃自分が考えている言葉が出てきたり、逆に自分には思いもよらない言葉が出てきたりするので」
心がざわつくのは列車の中で景子が痴漢に遭遇する場面。前2作でも性的にゾワリとする場面があるが、
「毎回、書き手の自分と語り手が影響し合うなかで、そうした部分が出てくる。いつも(景子の大きな話の流れの中の)一部分を区切って書いている感覚なので、今回もそこを無視するわけにはいきませんでした」
そして最後に明かされる、叔母を含めた家族の思いに目頭が熱くなる。併録の「生き方の問題」は、ある男から従姉に宛てた手紙という形式で、こちらも最後にぐっとくる。ぜひ。
乗代雄介『最高の任務』 大学卒業式の後で両親、弟に連れられて北関東への日帰り旅行に出た阿佐美景子。亡き叔母の記憶も重なり、やがてある事実が明かされて…。講談社 1550円
のりしろ・ゆうすけ 1986年、北海道生まれ。2015年、「十七八より」で群像新人文学賞を受賞しデビュー。‘18年、『本物の読書家』で野間文芸新人賞を受賞。今年本作の表題作「最高の任務」が芥川賞の候補に。
※『anan』2020年3月4日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・瀧井朝世
(by anan編集部)
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