不安、不眠がラクに!…「話題のマインドフルネス」簡単丸わかり! #29
ananweb / 2020年3月18日 19時0分
カッとしたり、クヨクヨしたり。誰でもそんな気持ちになるものだけど、やっぱりしんどいですよね。瞑想は不安やあせり、恐怖を和らげて、気持ちをスーッと落ち着かせてくれます。さらに巷で人気のマインドフルネス瞑想は免疫力を高めたり、アンチエイジングにも効果的とか。今こそトライするベストタイミングです! でも難しそう? そこで今回は禅センターやエサレン研究所などに住み込み、日米仏韓20箇所以上のスピリチュアルセンターでいろいろ瞑想してみた元anan編集者が、わかりやすくマインドフルネス瞑想を解説します。
文・土居彩
【マック・マインドフルネス時代の瞑想探し。「魂ナビ」が欲しい!】vol. 29
■ マインドフルネスってなに?
マインドフルネスのマインドフルとは「心を配る」とか「気に留める」という意味の英語で、仏教の念(サティ)という言葉が元になっています。では何に心を配るのかというと、それはいまの瞬間に自分が何を感じているのかということ。
自分が今感じていることぐらいわかっているよ。当たり前でしょう。と思われるかもしれません。私もマインドフルネス瞑想を始めるまではそうでした。でも瞑想をやっていくうちに気づきますが、感じていることと、考えていることはまた別物。マインドフルネス瞑想で今感じている現実と、頭の中で考えていることを切り離せるようになるにつれて、腹が立ちにくくなったり、悩みが長引かなくなったりします。
■ 体は眠たいのに、頭は起きたいと言う板挟み。
ところで私が瞑想を始めたきっかけはシンプルで、ぐっすり眠れるようになりたかったからです。当時は女性誌の編集者でしたが、深夜まで入稿して体はクタクタでも、さぁ寝るぞーと帰宅したら眠れない。「明日の撮影の買い出しは……」とか「さっきの原稿、やっぱり見出しが悪かったかなぁ」とか「隣の物音がウルサイ」とか。次から次へ頭にいろんなツッコミが入るんです。
眠っちゃダメよと頭がささやくようで、これには困りました。でも瞑想していくうちに、「いま体は寝たいと言っています」「撮影の買い出しは、明日1時間前に起きてやることだ」「週末に部屋の模様替えをしてみよう」と割り切れるようになり、不眠症が少しずつ解消されていきました。だからプレッシャーなどに心が奪われて寝つきが悪いという人は、就寝前に瞑想するのもオススメです。今私は毎晩爆睡ですし、たとえ眠れない日があってもそれがあまり気にならなくなりました。
■ ウィルス抗体が上がり、アンチエイジング効果も。
さてこのマインドフルネス瞑想、科学研究でも心や体をヘルシーにすると言われます。例えば6週間のマインドフルネス瞑想プログラムでインフルエンザウィルスへの抗体が上がり、さらに4か月行うと前向き脳が活性化される(1)。瞑想歴の長いエキスパートにもなればアンチエイジング効果まであるのだとか(2)! これは瞑想で目の前の出来事への捉え方が変わるからだろうと実感します。マインドフルネス瞑想で、過去に後悔しすぎたり、未来に不安を抱きすぎたりしにくくなるからです。さて、前置きが長くなりました。実際に行ってみましょう!
1. 基本の座り方
■ 姿勢はまっすぐ、ラクに座る。
無理がない姿勢で座ってください。心地よく座るために外せないポイントは2点です。上半身はリラックスさせ、下半身をどっしりと安定させること。背筋をスッと伸ばすこと。そのため坐骨と両膝の4点をしっかり地面につけます。坐骨、背骨、首と積み木を重ねるように乗せていき、自然にまっすぐ立つ場所を見つけます。
■ 両手でガチョウの卵を作る。
手のひらを上向きに、左手を右手に乗せて、4本の指を重ねます。親指同士の先端を優しくつけて、大きなガチョウの卵を作りましょう。場所は下腹のあたりに。
■ 無駄な力を抜く。
とにかく気持ち良いのが大事。肩、顎、首、腹部の力を抜いて、リラックスします。お腹の力みは、人差し指で前から胃のあたりを優しく押して1cmぐらい体を後ろに引くと抜けやすいです。
■ 目は閉じるか、半眼で。
私は大抵目を閉じますが、そのほうがいろいろ考えてしまいそうなときや寝てしまいそうなときは、1mぐらい先に視線をぼんやりと落とします。
2. 呼吸に集中し、心を静かに。(心落ち着き瞑想)
呼吸は全て鼻で行います。息を吐くたびに肩の力を抜きます。10回ほど深呼吸したら、普通の呼吸に戻します。「吸う」「吐く」の息に集中します。そのとき鼻の下と上唇の上の場所だけに意識を向けます。ここが意識が帰るためのホームになります。
■ ホームの場所。
鼻の下と上唇の上のホームにかかる息の流れを感じてみましょう。「今で何分かな?」など注意がそれたら、必ずここに意識を戻します。息の流れを感じにくいときは、少し強めに息を吐いてみて。息を感じられるまで何度も辛抱強く呼吸します。感じられたら元の強さに息を戻します。意識がそれたら、ホームに戻ります。2〜5分ほど心が落ち着くまで繰り返します。
私は、これを「心落ち着き瞑想」と呼んでいます。詳しく心落ち着き瞑想について知りたい方は、まずこちらを読んでみることをオススメします。マインドフルネス瞑想を行う前に、心落ち着き瞑想だけを4日間ほど練習すると、よりマインドフルネス瞑想がやりやすくなります。
心が落ち着いてきたら、いよいよ5分間のマインドフルネス瞑想です!
■ 3. お腹の息を感じてみる。
手をそっと下腹部に重ねてみます。息を吸うとお腹が膨らみ、吐くと凹んでいるのが感じられます。息を吐くたび肩の力をゆるめます。なにも力む必要はないし、うまくやる必要もありません。ただ膨らんだりしぼんだりするお腹の動きを感じます。お腹のあたりが少し温かくなってきましたか? ちなみにそれが元気のもと、気です。お腹の動きを感じながら10回ほど深呼吸をしたら、手をゆっくりもとのガチョウの卵の形に戻します。
4. 全身をくまなくライブ中継する。
「今の私はどんな状態なんだろう?」。ライブ中継中のアナウンサーのように興味を持って、頭のてっぺんから足の先まで体をくまなく調べてみましょう。
頭のてっぺんからスタートします。なにかジワジワするな。では「ジワジワ、ジワジワ…」と中継します。おでこはどうでしょう?「かゆみ、かゆみ」。このように足先まで中継していきます。集中しても感じられない場所があってもかまいません。私がやっている目安としては、2㎝ぐらいの範囲ごとに4、5呼吸、辛抱強く観察します。すると突然どこかが「痛い!」ですか? 瞑想ライブ中には、必ずこういう思わぬ邪魔が入ります。でも体は動かせない。人生でも起こる、こういった一見厄介な状況をライブで楽しんでみようというのがマインドフルネス瞑想なのです。
痛みが「気づいてー!」と呼びかけているので、「いえ私は瞑想中で、ただいまおでこを中継中なもので…」とムシをするほど「聞こえとるかー?」と、音量2倍増しで凄んできます。そこで、「よしよし、気づいていますよ」といったん迎え入れてください。
例えば足が痛くなってきたとします。痛む部分に意識を集中させます。このとき、「痛い」ではなく、「痛み、痛み、痛み…」と客観的に観察するように実況中継します。場所は?「その中心は、外くるぶし。外くるぶし、外くるぶし…」。痛みの質は?「ヒリヒリ、熱…熱…」。
逃げない。無視しない。批評しない。感じていることを考えるのではなく、注意を向けるだけです。自分で実況中継しながらうるさく感じるなら、ただ感じるだけでもいいですよ。重要なのは、意識を向けること。ただ感じたままにすると痛みはピークを迎えて、やがて過ぎ去っていきます。
「明日の企画書、どうしよう…」と今度は全然関係のない考えが浮かんできたら、また鼻下・唇上のホームに戻って呼吸に集中。「考え」から「感覚」にバトンタッチできたら、ライブを中断した場所から実況中継し直します。足先までいったら、また頭のてっぺんへ。シンプルに、この繰り返しです。
こんな単純作業にいったい何の意味が? と思いますよね。マインドフルネスでは呼吸と感覚に注意を向けて体全体に気づくことで、今この瞬間を体験していきます。イライラ、クヨクヨの原因である考えに注目するのをいったん休止するため、いま体が感じている感覚のほうに意識を移すという手法をとっているんです。
というのも考えることと感じることは同時に行えないから。また考えとは違って、感覚はずっと続かないことにも気づくことができます。たとえ嫌な感覚でも。それに気づいたとき、私はとてつもない安心感を持ちました。そして、このマインドフル瞑想のあとは、いつもいっぱいの考えぶん、頭の中の重さが軽くなったような気分がしますよ。
瞑想は、苦行修行ではありません。心を一休みさせるご褒美タイムです。私はだいたい毎日20分〜40分ほど瞑想しています。長く感じる? だから、自分の好きな時間で行ってください。難しいとか、しんどいとか、うまくやらなきゃと思ったら当然やる気も失せます。リラックスして、あくまでも気分良く。お気に入りのアロマスプレーをシュッとしたり、お香を焚いても楽しいですよ。眉間にシワが寄ってきたら、まずはスマイルを自分に贈ってくださいね。
■ 土居彩
編集者。東京の薪割り暮らしを綴るブログ『東京マキワリ日記、ときどき山伏つき。』。株式会社マガジンハウスに14年間勤め、anan編集部、Hanako編集部にて編集者として、広告部ではファッション誌Ginzaのマーケティング&広告営業を務める。’15年8月〜’17年5月、カリフォルニア大学バークレー校心理学部にてダチャー・ケトナー博士の研究室で学ぶ。’18年9月〜’19年1月、7月、ニュー・メキシコ州サンタフェにあるウパヤ禅センターに暮らしながら、ジョアン・ハリファックス師に師事。現在は、書道家・平和活動家、禅研究家の棚橋一晃氏の著書『Painting Peace(平和を描く)』(シャンバラ社)、芸術家で社会活動家の小田まゆみ氏の『Sarasvati’s Gift』(シャンバラ社)を翻訳中。
参考
1. Davidson, R.et.al(2003). Alterations in Brain and Immune Function Produced by Mindfulness
Meditation.Psychosomatic Medicine 65:564–570. DOI: 10.1097/01.PSY.0000077505.67574.E3
2. Alda, M. et. al (2016). Zen meditation, Length of Telomeres, and the Role of Experiential Avoidance and Compassion. Mindfulness , 7, 651–659 DOI 10.1007/s12671-016-0500-5
『自分を変える気づきの瞑想法』A.スマナサーラ著(サンガ)
『親と子どものためのマインドフルネス』エリーン・スネル著/出村桂子訳(サンガ)
外部リンク
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