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「美しいのに怖さがある…」学芸員が震えた一枚の絵

ananweb / 2020年4月2日 18時40分

「美しいのに怖さがある…」学芸員が震えた一枚の絵

ちょっとミステリアスな風景画を描く画家の日本初個展『ピーター・ドイグ展』のプレス内見会が2月下旬に行われました。現在、美術館は臨時休館中ですが、取材時に見た作品はどれもすばらしいものばかり。この記事で一部の作品をご紹介しますので、こちらから、ぜひご覧になってみてください。
写真・田代わこ

■ 幻想的!『ピーター・ドイグ展』


【女子的アートナビ】vol. 174

この展覧会では、スコットランド生まれの画家、ピーター・ドイグ(1959-)の初期作から最新作までを一堂に展示。

世界で最も注目されるアーティストのひとりといわれるドイグさんは、ロンドンで美術を学び、2002年より、幼少期を過ごしたカリブ海の島国トリニダード・トバゴに拠点を移して制作を続けています。

彼の作品は欧米の名だたる美術館に収蔵され、美術オークションでも高額で取り引きされるほど大人気。今回は油彩画を中心に、幅3メートルを超える大型作品も展示されています。

ゴッホやマティスなどの近代画家の作品や映画のワンシーン、さらにドイグさんが暮らした場所のイメージなどを組み合わせて制作された絵画は、どこかミステリアスで魅力的。

プレス内見会では、ドイグさんと学芸員さんが作品の見どころやポイントについて、語ってくれました。

■ 美しいのに怖い…学芸員も感動!

同展を企画された東京国立近代美術館 主任研究員の桝田倫広さんによると、ドイグ作品には「どこかで見たことがあると誰もが感じるような不思議な魅力がある」とのこと。

例えば、《のまれる》という作品は、桝田さんが以前、福島県の五色沼で見た景色にとてもよく似ていると感じたそうで、次のように語りました。


桝田さん
 息をのむほど美しいのにちょっと怖い、そんな五色沼の雰囲気そのものがドイグ作品の性質と似ているのです。ドイグさんは、具体的な場所やパーソナルな経験を描いているのではなく、私たちの記憶と関わる“感覚そのもの”を描いています。だから、見る人は彼の絵に懐かしさを感じるのです。

■ 原点となった作品は…画家がナマ解説!

プレス内見会では、ドイグさんが自身の作品や画業について語りました。そのなかから3点をご紹介します。


ドイグさん
 《天の川》は私が学生だったときの出発点となった重要な作品です。それまで風景画を手がけたことはありませんでした。一回限りのものと思って描き始めたのですが、これが出発点となるとは思いませんでした。

1989年から90年代の前半は、アートにとっておもしろい時代でした。当時人気だったジャンルはコンセプチュアル・アート(前衛芸術運動)で、“絵画はおもしろくない、すでに死んだ昔のもの”と考えられていました。

自分の作品を展示してもらうには難しい時代でしたが、私のように好奇心にあふれた画家にとっては、実験できる大切な時代でした。

■ 日本に縁のある作品も!

次は、日本に関連した作品についての解説です。


ドイグさん
 《スキージャケット》は、トロントの新聞に掲載されていた広告記事の写真をもとに描きました。その写真は、日本のスキーリゾートを撮ったもので、見出しには「法外な価格で、日本のサラリーマンはレジャーでもストレスをため込みすぎている」と書いてありました(笑)。

はじめは日本の掛け軸のように、風景を縦長のパネルに描いていました。でも数か月経ったあとに絵を見たとき、あまりにも動きがないと思い、左に拡張させ、結果的に左右が合わせ鏡のようになりました。

■ ライオンの後ろに描かれているものは…?

最後は、ある建物とライオンが描かれたカラフルな作品についての解説です。


ドイグさん
 《ポート・オブ・スペインの雨(ホワイトオーク)》に描かれている建物は牢屋で、トリニダードの首都、ポート・オブ・スペインの中心部にあります。もとはイギリス植民地時代に建てられた拘置所で、今でも使われています。

この牢屋から20分ほど行ったところに動物園があり、そこに行ったときにライオンが檻の中に入れられている様子を見て、牢屋と似ていると思って描いてみることにしました。

ライオンは、トリニダードの人たちにとって多くのことを象徴しています。例えば、ユダの獅子は宗教的運動のシンボルにもなっていますし、街中のグラフィティやTシャツなどにも描かれています。イギリスとトリニダードの社会では、ライオンに対する感じ方が異なっているのです。


■ 公式サイトをチェック!

ドイグさんの作品、いかがでしたか? ほかにも、映画『13日の金曜日』などからインスピレーションを得た作品や、日本の映画から影響を受けた作品などもあり、色彩もさまざまで見ごたえ抜群です。

また、展覧会の音声ガイドナビゲーターは、のんさんが担当されています。作品のストーリーなど優しい語り口で案内されています。

まずは公式サイトをチェックして、ドイグさんのさまざまな作品や解説などご覧になってみてください。臨時休館情報も載っています。

■ Information

会期:現在臨時休館中。会期は6月14日(日)まで。
時間:10:00-17:00 (金曜・土曜は10:00-20:00) *入館は閉館30分前まで
会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
料金:一般 ¥1,700/大学生 ¥1,100/高校生 ¥600

※本記事の写真は、プレス内見会で主催者の許可を得て撮影しています。

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