心のザワザワが穏やかに…食べるだけで精神が安定する「お助けフード」
ananweb / 2020年4月1日 19時20分
感染拡大の一途を辿っている新型コロナウイルス。正確な情報を取捨選択し、「正しく恐れる」ことが大切ですが、情報過多の現代において、さまざまなニュースに心が必要以上に揺らいでいる人も多いことでしょう。そこで、漢方薬剤師の大久保愛先生が、精神安定につながる食べ物をご紹介します。好きな音楽でも聴きながら、おうちでぜひ作ってみてください。
文・大久保愛
【カラダとメンタル整えます 愛先生の今週食べるとよい食材!】vol. 51
■ 予測できない環境のときこそ冷静に
4月に入り新年度が始まりましたね。もともと4月は、環境だけではなく気候的にも変化が大きいため心落ち着かない時期です。それに加え、世界的に異例の出来事が続いています。いつまで続くかわからず、対応の方法も不確かで、今後の生活にも多大なる影響を与えることが明らかになる毎日のなか、何の不安もなく過ごすことのほうが珍しいと思います。
ただ、どんな時でも不変的なものは存在せず、前に進まなければなりません。冷静に考えることができれば、目の前にあることをひとつずつ淡々とこなしていくことができると思いますが、不安や焦りが生じると眠れなくなったり、食欲がなくなったり、お腹の調子が悪くなったりと体にまで影響してきてしまいます。そうすると、ますます冷静でいることが難しくなり判断ミスなども起こしやすくなってしまいます。
そこで今週は、心を安定させるために必要な食薬習慣を紹介したいと思います。
■ 自然の変化が体調に影響している
漢方医学で人は自然の一部であり、自然の変化は体調に影響を与えると考えられています。気温や湿度、気圧の変化だけではなく、太陽や月の動きまでもが体に影響を与えています。学生の頃、太陽暦や太陰暦を学んだことを覚えていませんか? 1か月の日数や季節などは太陽や月の動きから決められていたことはご存知のかたは多いと思います。
月や太陽は、地球との位置により引力が変わり、地球では潮の満ち引きが起こります。地球の約七割が水分と言われていますが、同様に人の体も約七割が水分と言われています。そう考えると、人間も月や太陽の影響を受けることは想像しやすいことだと思います。中国最古の医学書である皇帝内経(こうていだいけい)にも、月が体調に影響を与えることは記されています。
つまり、気温、湿度、気圧、太陽、月の変化と様々なものを指標にすることにより、より正確に体調管理をすることができます。この体調管理に食事内容を役立てることを『食薬』と呼びます。
■ 今週は、冷静を保つための食薬習慣
新年度が始まりましたが、新しい生活のスタートを切ったとは思えない、ゴールの見えない毎日から抜け出せない印象のほうが大きいのではないでしょうか。しかし、季節の移り方は例年通り進み、この季節特有の催花雨(さいかう)が訪れていますね。この時期の雨は、桜をはじめとした春の花を催す雨といわれています。桜が入り混ざった景色を窓から眺めると、日々のストレスがほんの少し和みますよね。
ただ、この気温差、湿度、気圧の変化などにより自律神経が乱され精神的に安定しづらくなります。漢方医学では、春は『肝(かん)』が弱りやすい時期と言われています。そして、このような精神状態を気の巡りが悪い『肝気鬱結(かんきうっけつ)』であると考えます。そこに、栄養状態が悪い『肝血虚(かんけっきょ)』が加わるとさらに動揺しやすくなります。特に鉄の不足がある場合が多いので、重点的に補うことが大切です。
自分の意志だけで好転することが難しい問題も多いですが、少しでも体の中から気持ちを支えるための食薬習慣をとりいれ体をいたわることはできます。そこで今週食べるとよい食材は、【鉄分を含むお肉×鉄の吸収を促すビタミンCを含む野菜パプリカ】です。
■ 今週食べるとよい食材:ひき肉×パプリカ
まず、『肝血』を補うのに役立つ栄養素が鉄分、そして鉄の吸収を促すビタミンCです。そして、『気』の巡りを促し『肝気鬱結』を解消するのが柑橘系やアブラナ科の野菜など香りの高い食材です。デザートにミカンやグレープフルーツを食べるのもおすすめです。
今回はヘム鉄を含むひき肉と、カラフルでビタミンCを含むパプリカを使ったメニューをご紹介します。
■ ひき肉
どんな料理にでも合わせやすい、ひき肉をおすすめします。スープ、炒め物、肉詰め、餃子、カレーなど応用がききますよね。鶏、牛、豚どのひき肉でも大丈夫です。いつもの料理に意識してプラスしてみると、スープや炒め物などは味に深みが出て美味しく調理できるだけでなく、タンパク質とヘム鉄もしっかりとることができます。さらに、ビタミンCと一緒に取り入れることで鉄分の吸収率が上がるため、パプリカやピーマンとの相性も抜群です。
■ パプリカ
パプリカやピーマンには、抗酸化作用を持つビタミンである、ビタミンC、A、Eが含まれています。さらに過熱処理しても栄養価が下がらないため、安心して調理しやすい食材です。とくに、赤色のパプリカやピーマンにはビタミンCが多く含まれています。また、パプリカもピーマンと同様の栄養素が含まれるため、お好きなほうを選んで大丈夫です。
そして、パプリカやピーマンに含まれるファイトケミカルであるスルフォラファンにも、肝臓の働きを改善したり、酸化を抑えたりする働きがあります。食卓にいろどりをプラスしたいときには、トマトやカボチャだけでなくパプリカやピーマンも活用してみてくださいね。
■ 調理方法
通常のピーマンの肉詰めのように縦にカットするのではなく、輪切りにすると見た目にかわいらしくつくることができます。パプリカの中にひき肉と玉ねぎなど好きな具材で作った餡を詰めて両面焼いたら完成です。赤、オレンジ、緑などカラフルな肉詰めを作ってみて下さいね。
じっと我慢のときこそ、少しでも気持ちが明るく華やぐことを取り入れていきましょう。見た目にも体にも嬉しいメニューで穏やかな時間を過ごしていきたいですね。
■ information
大久保 愛 先生
アイカ製薬株式会社代表取締役・漢方薬剤師。
昭和大学薬学部生薬学研究室で漢方を学び薬剤師免許を取得。その後、中国で漢方・薬膳・東洋の美容などを学び資格を取得。漢方相談、調剤薬局、エステなどの経営を経て商品開発・ライティング・企業コンサルティングなどに携わる。
著書『1週間に一つずつ 心がバテない食薬習慣』(ディスカヴァー)。
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